【テクノロジー解説】炭素と炭素を「パラジウム」の上でつなぐ:鈴木章博士、根岸英一博士のクロスカップリング。薬、農作物を守る薬剤、有機ELの青い光づくりまで(2010年ノーベル化学賞)
薬もプラスチックも、生き物の体も、炭素がつながった骨組みでできています。でも炭素どうしは安定していて、なかなかつながりません。2010年のノーベル化学賞は、金属のパラジウムを「待ち合わせ場所」にして、炭素どうしをおだやかな条件で正確につなぐ「パラジウム触媒クロスカップリング」を開発した、ヘック博士、根岸英一博士、鈴木章博士に贈られました。根岸博士は1977年に亜鉛を、鈴木博士は1979年にホウ素を使う方法を開発。鈴木博士の反応は、農作物をカビから守る物質の数千トン規模の生産にも使われ、有機ELの青い光の改良にも役立っています。

プレ男「鈴木カップリング」って、化学の授業で名前だけ聞いたことがある。何がすごいの?

メル美薬やスマホの画面づくりにも使われてるらしいよ。
こんにちは、Dr. Taro です。 「テクノロジー解説」、今回はクロスカップリングです。2010年のノーベル化学賞の発表と一般向け解説をもとにまとめました。
炭素は「つなぎにくい」
- 炭素をもとにした化学(有機化学)は、生命の基礎です。花の色、ヘビの毒、ペニシリンのような細菌をやっつける物質も、炭素の骨組みでできています
- 人は有機化学で、新しい薬や、プラスチックのような革命的な材料をつくってきました
- 複雑な物質をつくるには、炭素原子どうしをつなぐ必要があります。でも、炭素は安定していて、炭素どうしはなかなか反応しません
- 昔の方法は、炭素を反応しやすくするものでしたが、複雑な分子をつくろうとすると、いらない副産物がたくさんできてしまいました
パラジウムが「待ち合わせ場所」に
- パラジウム触媒クロスカップリングでは、金属のパラジウムの原子の上で、2つの炭素原子が出会います。近くにならぶことで、反応がはじまります
- パラジウムは触媒で、反応を助けますが、自分は消費されません
- この方法は、おだやかな条件で、とても正確に炭素どうしをつなげるのが特長です
3人の方法
- リチャード・ヘック博士(アメリカ):化学会社で働いていた1968年、パラジウムを使った反応を発表しました
- 根岸英一博士:1977年、亜鉛を使う方法を開発。炭素の反応しやすさをおさえつつ、亜鉛が炭素をパラジウムに渡します
- 鈴木章博士(北海道大学):その2年後(1979年)、ホウ素を使う方法を開発。いままででいちばんおだやかで、亜鉛より毒性が低いので、大量生産に向いています

プレ男日本人が2人も!亜鉛とホウ素で、炭素を「渡す」のか。
何に使われている?
ノーベル賞の発表と解説によると、
- 世界中の研究と、医薬品や電子産業で使う分子の商業生産に使われています
- 鈴木博士の反応は、農作物をカビから守る物質の数千トン規模の生産に使われています
- 有機EL(OLED)は、光る有機分子でできた、厚さ数ミリのとても薄い画面に使われています。クロスカップリングは、有機ELの青い光の改良に使われました
- カリブ海の海綿からとれる、がん細胞の増殖を試験管の中で止めた物質を、人工的につくるときにも、根岸博士の方法が中心的な役割をはたしました
- ハワイのサンゴからとれる、炭素が129個もある巨大な分子(パリトキシン)も、1994年に鈴木博士の反応の助けを借りて人工的につくられました

クロスカップリングは、パラジウムを使って炭素どうしをおだやかに正確につなぐ方法です。鈴木章博士と根岸英一博士の方法は、薬や農作物を守る物質、有機ELの画面づくりに使われています。
化学のつながり
- 電気を通すプラスチック:電気を通す「プラスチック」
- 右手型と左手型の分子:硤合(そあい)反応ってなに?
- 細菌をやっつける炭素の分子:ペニシリンってなに?

プレ男スマホの有機ELの画面にも、日本人の化学がかかわってるんだね。

メル美「待ち合わせ場所」っていうたとえ、わかりやすい!
まとめ
- 炭素は安定していて、炭素どうしをつなぐのがむずかしい
- パラジウムの上で炭素を出会わせるクロスカップリングで、おだやかに正確につなげるように
- ヘック博士(1968年)、根岸英一博士(1977年、亜鉛)、鈴木章博士(1979年、ホウ素)
- 医薬品、電子産業、農作物を守る物質(数千トン)、有機ELの青い光に
- 2010年ノーベル化学賞
参考文献
- The Royal Swedish Academy of Sciences. Press release: The Nobel Prize in Chemistry 2010. NobelPrize.org. https://www.nobelprize.org/prizes/chemistry/2010/press-release/ (閲覧日:2026年10月10日)
- NobelPrize.org. The Nobel Prize in Chemistry 2010 — Popular information. https://www.nobelprize.org/prizes/chemistry/2010/popular-information/ (閲覧日:2026年10月10日)
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