【テクノロジー解説】ペニシリンってなに?実験の皿に生えた「青カビ」の偶然から生まれた最初の抗生物質。1945年ノーベル賞。発見者フレミングはすでに「量が足りないと耐性菌を育てる」と警告していた
1928年、フレミング博士は、細菌を育てていた皿にまぎれこんだカビのまわりだけ、細菌がとけていることに気づきました。これがペニシリンの始まりです。のちにチェイン博士とフローリー博士がペニシリンを濃縮して治療薬にし、3人は1945年のノーベル生理学・医学賞を受けました。フレミング博士は受賞講演で「足りない量を使うと、菌を薬に強くしてしまう」と警告しています。いまWHOは、薬剤耐性(AMR)が2021年に世界で470万人以上の死亡に関係したと推計しています。歴史と、いま私たちにできることを解説します。

プレ男ペニシリンって「カビから生まれた薬」って聞いたことがある。本当にカビなの?

メル美偶然の発見だったって話も聞いたよ。
こんにちは、Dr. Taro です。 「テクノロジー解説」、今回は、世界初の抗生物質ペニシリンです。1945年ノーベル生理学・医学賞の概要、発見者フレミング博士のノーベル講演(1945年12月)、WHO(世界保健機関)の薬剤耐性のファクトシートをもとにまとめました。
始まりは「まぎれこんだカビ」
フレミング博士の講演によると、
- ペニシリンの始まりは、ブドウ球菌を育てていた皿に、カビがまぎれこんだことでした(1928年)
- カビのまわりの、ある範囲だけ、ブドウ球菌のかたまりが透きとおって、とけていくように見えました
- このふしぎな様子を調べるため、カビを取りだして育てたところ、アオカビ(ペニシリウム)の仲間だとわかりました
- 博士は、「ペニシリンは偶然の観察から始まった。私の功績は、その観察を見のがさず、細菌学者として追いかけたことだけだ」と語っています
- ペニシリンは、私たちにふつうの感染症を起こす細菌の多くに強く効き、しかも動物や人の血液の細胞にはほとんど毒がないことがわかりました

プレ男失敗した実験の皿を捨てずに、「なんでだろう?」って調べたのがすごいんだね。
10年後、薬になった
- フレミング博士は1929年に結果を発表し、感染症の治療に役立つかもしれないと書きましたが、ほとんど注目されませんでした。ペニシリンは不安定で、濃縮もできなかったのです
- 約10年後、チェイン博士とフローリー博士が研究を始め、フレミング博士のカビをもとに、ペニシリンを濃縮することに成功しました
- 3人は、「ペニシリンの発見と、さまざまな感染症への治療効果」で、1945年のノーベル生理学・医学賞を受けました
発見者がすでに出していた「警告」
フレミング博士は、1945年の講演で、こう述べています。
- 研究室で、菌を殺しきれない濃度のペニシリンにさらすと、菌をペニシリンに強く(耐性に)するのはむずかしくない。同じことが体の中でも起こることがある
- いつかペニシリンが店でだれでも買えるようになったら、量が足りない使い方をして、菌を耐性にしてしまう危険がある
- 「ペニシリンを使うなら、十分な量を」
いま:薬剤耐性(AMR)は世界の脅威
WHO のファクトシートによると、
- 薬剤耐性(AMR)は、世界の健康にとって大きな脅威です。細菌の薬剤耐性は、2021年に世界で470万人以上の死亡に関係したと推計されています
- 抗菌薬の誤った使い方や使いすぎ(たとえば、必要ないのに飲む、種類がちがう薬を飲む)が、耐性菌がふえて広がる主な原因の一つです

ペニシリンは、皿にまぎれこんだカビの偶然から生まれた最初の抗生物質です。発見者のフレミング博士は、使い方をまちがえると菌が薬に強くなると、すでに警告していました。
私たちにできること
- かぜの多くはウイルスが原因で、抗菌薬(抗生物質)は効きません。必要ないのに飲むと、薬が効かない菌をふやすおそれがあります(「かぜには抗生物質が効く」は間違い)
- 抗菌薬を出されたら、医師の指示どおりの量と日数で飲みましょう
- 余った薬を自分の判断で飲んだり、人にあげたりしないようにしましょう

プレ男80年前の警告が、いまの世界の問題になってるのか。かぜで「抗生物質ください」って言うのはやめよう。

メル美AlphaFoldも、薬が効かない菌のしくみの研究に使われてるんだよね。
AI でたんぱく質の形を予測する AlphaFold は、抗菌薬が効かなくなるしくみの理解にも使われています。病原体の遺伝子を調べる PCR も、感染症の診断を支えています。
ペニシリンの構造を調べたホジキン博士が、のちに形を明らかにしたホルモンの物語は、インスリンの発見へ。
日本の土の微生物から生まれた薬は、日本の土から見つかった薬へ。
抗生物質がねらう細菌の「タンパク質工場」は、DNAの設計図からタンパク質をつくる工場「リボソーム」へ。
まとめ
- 1928年、皿にまぎれこんだアオカビのまわりで細菌がとけていたのが始まり
- 約10年後、チェイン博士・フローリー博士が濃縮して治療薬に。1945年ノーベル生理学・医学賞
- フレミング博士は「足りない量で使うと、菌を耐性にする」と警告していた
- WHO:細菌の薬剤耐性は2021年に470万人以上の死亡に関係
- かぜに抗菌薬は効かない。出されたら指示どおりに
参考文献
- NobelPrize.org. The Nobel Prize in Physiology or Medicine 1945 — Summary. https://www.nobelprize.org/prizes/medicine/1945/summary/ (閲覧日:2026年10月5日)
- Fleming A. Penicillin. Nobel Lecture, December 11, 1945. https://www.nobelprize.org/uploads/2018/06/fleming-lecture.pdf (閲覧日:2026年10月5日)
- World Health Organization. Antimicrobial resistance(Fact sheet). https://www.who.int/news-room/fact-sheets/detail/antimicrobial-resistance (閲覧日:2026年10月5日)
この記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の診断・治療に代わるものではありません。 気になる症状や不安がある場合は、医療機関にご相談ください。