【テクノロジー解説】インスリンの発見:1922年、14歳の少年への注射で糖尿病は「死の宣告」ではなくなった。特許は1ドルで大学へ。タンパク質の構造をはじめて解いたのもインスリン(ノーベル賞1923・1958・1964)
かつて糖尿病(1型)は、治療法のない病気でした。1921年、トロント大学のバンティング博士らは、すい臓からインスリンを取りだすことに成功。1922年1月、14歳の少年レナード・トンプソンさんがはじめてインスリン注射を受けて回復し、1923年にノーベル生理学・医学賞が贈られました。発見者たちは「インスリンは世界のもの」として特許を1ドルで大学に売りました。その後、サンガー博士がタンパク質としてはじめてインスリンのアミノ酸の並びを解き(1958年ノーベル化学賞)、ホジキン博士が立体構造を明らかにして、いまの人工インスリンにつながりました。

プレ男糖尿病の人がインスリンを注射するって聞くけど、インスリンっていつごろ見つかったの?

メル美100年くらい前って聞いたことがあるよ。それまではどうしてたんだろう。
こんにちは、Dr. Taro です。 「テクノロジー解説」、今回はインスリンです。ノーベル財団の公式サイトの記事「糖尿病の死の宣告をくつがえした奇跡の発見」と、ノーベル賞の公式情報をもとにまとめました。
糖尿病は「死の宣告」だった
ノーベル財団の記事によると、
- 糖尿病は、血液の中の糖(血糖)が高くなりすぎる病気です
- インスリンが見つかる前、糖尿病は治らない病気で、「死の宣告」とまで言われていました
- 医師たちは、すい臓が糖の代謝をコントロールする物質を出していると考えていましたが、すい臓からとりだした液は不純物が多く、人に使うと強い副反応が出てしまいました
1921年:すい臓からインスリンを取りだす
- 若い外科医フレデリック・バンティングさんは、すい臓でつくられる別の物質(トリプシン)が、取りだす前にインスリンをこわしているのでは、と考えました
- 1921年、トロント大学のジョン・マクラウド教授の研究室で、バンティングさんと助手のチャールズ・ベストさんは、犬のすい臓がトリプシンをつくらないようにして、インスリンを取りだすことに成功しました
- 生化学者のジェームズ・コリップさんが加わり、人に使えるように純度を上げました
1922年:14歳の少年が回復
- 1922年1月11日、14歳の少年レナード・トンプソンさんが、糖尿病の治療としてはじめてインスリン注射を受けました
- 1回目はうまくいきませんでしたが、その後の注射で大きく回復し、数か月後には家に帰れるまでになりました
- 歴史上はじめて、糖尿病が「死の宣告」ではなくなった瞬間でした。レナードさんはインスリンで13年生きました
- 1923年10月には、インスリンの商用の出荷がはじまりました

プレ男14歳の少年が最初の1人だったんだ…。
「インスリンは世界のもの」
- バンティングさん、コリップさん、ベストさんは、インスリンとそのつくり方の特許をとりましたが、それを1ドルずつでトロント大学に売りました
- 「インスリンはわたしのものではない。世界のものだ」という言葉が伝えられています
- 1923年、バンティングさんとマクラウドさんにノーベル生理学・医学賞が贈られました。2人は、仲間の貢献が認められなかったことを残念に思い、賞金をベストさん、コリップさんと分けあいました
インスリンが科学を進めた
- フレデリック・サンガー博士は、インスリンのアミノ酸の並びを調べ、1955年に51個のアミノ酸の2本の鎖がどうつながっているかを明らかにしました。タンパク質の構造がはじめてわかった、大きな成果です(1958年ノーベル化学賞)
- ドロシー・ホジキン博士(1964年ノーベル化学賞)は、X線を使ってインスリンの立体の形を調べ、34年の研究のすえ、1969年にその形を明らかにしました。(とちゅうで、戦争中により急がれたペニシリンの研究にとりくんだことも:ペニシリンってなに?)
- こうした研究が、実験室で人工のインスリンをつくる道をひらき、いまでは何百万人もの糖尿病の人が使っています
- タンパク質の形を AI で予測する時代の話は、AlphaFoldってなに?へ

インスリンが見つかるまで、糖尿病は治らない病気でした。1922年、14歳の少年への注射で、はじめて糖尿病が「死の宣告」ではなくなりました。
いま
- 発見から100年以上たったいまも、インスリンは、世界で4億人以上いる糖尿病の人の一部を助けています
- いま糖尿病の人の95%以上は2型糖尿病で、食事や生活の変化による肥満とかかわり、ふえつづけています
いまの糖尿病については糖尿病は「症状が出たときには進んでいる」へ。

プレ男特許を1ドルで手ばなしたって、かっこよすぎる。

メル美賞金を仲間と分けたのもいいね。
まとめ
- インスリンの発見前、糖尿病は死の宣告だった
- 1921年、トロント大学でインスリンを取りだすことに成功
- 1922年1月、14歳の少年がはじめてインスリン注射を受けて回復。1923年ノーベル生理学・医学賞
- 特許は1ドルで大学へ。「インスリンは世界のもの」
- サンガー(1958年)、ホジキン(1964年)の研究で構造がわかり、人工インスリンへ
参考文献
- NobelPrize.org. The “miracle” discovery that reversed the diabetes death sentence. https://www.nobelprize.org/the-miracle-discovery-that-reversed-the-diabetes-death-sentence/ (閲覧日:2026年10月6日)
- NobelPrize.org. The Nobel Prize in Physiology or Medicine 1923 — Summary. https://www.nobelprize.org/prizes/medicine/1923/summary/ (閲覧日:2026年10月6日)
- NobelPrize.org. Frederick G. Banting — Facts. https://www.nobelprize.org/prizes/medicine/1923/banting/facts/ (閲覧日:2026年10月6日)
- NobelPrize.org. The Nobel Prize in Chemistry 1958 — Summary. https://www.nobelprize.org/prizes/chemistry/1958/summary/ (閲覧日:2026年10月6日)
この記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の診断・治療に代わるものではありません。 気になる症状や不安がある場合は、医療機関にご相談ください。