【テクノロジー解説】電気を通す「プラスチック」:白川英樹博士の研究室で、触媒をまちがえて1000倍入れたら銀色の膜ができた。ヨウ素を加えると電気の通りやすさが1000万倍に。スマホの画面や帯電防止に(2000年ノーベル化学賞)
プラスチックは電気を通さない。だから電線のまわりを包む絶縁体に使われている。そんな常識をくつがえしたのが、2000年のノーベル化学賞です。1970年代はじめ、白川英樹博士の研究室で、まちがって1000倍の触媒を入れたところ、美しい銀色のポリアセチレンの膜ができました。アメリカのマクダイアミッド博士、ヒーガー博士と協力し、この膜をヨウ素の蒸気で処理すると、電気の通りやすさが1000万倍になりました(1977年発表)。電気を通すプラスチックは、写真フィルムの帯電防止、画面の電磁波シールド、そして発光ダイオードや太陽電池、携帯電話の画面などに広がっています。

プレ男プラスチックって電気を通さないから、電気コードのカバーに使われてるんだよね?

メル美それが、電気を通すプラスチックを日本人が見つけて、ノーベル賞をとったんだって。
こんにちは、Dr. Taro です。 「テクノロジー解説」、今回は電気を通すプラスチック(導電性高分子)です。2000年のノーベル化学賞の発表と一般向け解説をもとにまとめました。
プラスチックは電気を通さない…はずだった
- 学校では、プラスチックは金属とちがって電気を通さないと習います。実際、電気コードの銅線のまわりの絶縁体に使われています
- 2000年のノーベル化学賞は、プラスチックを、ある処理をすると電気を通すようにできるという革命的な発見に贈られました
- 受賞したのは、白川英樹博士(筑波大学、日本)、アラン・マクダイアミッド博士(ペンシルベニア大学)、アラン・ヒーガー博士(カリフォルニア大学サンタバーバラ校)の3人です
しくみ:「二重結合」と「ドーピング」
- プラスチックは「ポリマー(高分子)」という、同じ形がネックレスの真珠のように長くつながった分子です
- 電気を通すには、金属のように電子が自由に動ける必要があります。そのための条件は、
- 炭素原子のあいだに、単結合と二重結合が交互にならんでいること
- 「ドーピング」で、電子を取りのぞく(酸化)か、加える(還元)こと
- 電子が抜けた「穴」や、加わった電子が分子にそって動けるようになり、電気が流れます
白川博士の「まちがい」から
- 1970年代はじめ、白川博士は、ポリアセチレンという高分子を新しい方法でつくる研究をしていました。ふだんは、反応の容器の内側に黒い膜ができていました
- あるとき、まちがって、1000倍も多い触媒が入れられました。すると、白川博士がおどろいたことに、美しい銀色の膜ができたのです
- 温度を変えると銅色の膜もでき、温度と触媒の量を変えるこの方法が、のちの発展のかぎになりました

プレ男まちがいから、ノーベル賞の発見が生まれたのか!
1977年:電気の通りやすさが1000万倍に
- 銀色に光る有機の高分子の話を聞いたマクダイアミッド博士は、白川博士をアメリカのペンシルベニア大学に招きました
- 2人は、ポリアセチレンをヨウ素の蒸気で酸化する実験をはじめ、ヒーガー博士にも膜を見てもらいました
- ヒーガー博士の学生が、ヨウ素を加えた膜の電気の通りやすさを測ると、1000万倍になっていました
- 1977年夏、3人と仲間たちはこの発見を論文で発表し、大きな突破口とされました。ドーピングしたポリアセチレンは、銅や銀のようなよく電気を通す物質にくらべられるほどです
どこに使われている?
ノーベル賞の発表(2000年)によると、
- 写真フィルムの帯電防止
- コンピューター画面の電磁波を防ぐシールド
- 日光をさえぎる「スマートウィンドウ」
- 半導体の性質をもつ高分子は、発光ダイオード、太陽電池、携帯電話の画面や小さなテレビの画面にも開発されていました
- 将来は、分子1個でできたトランジスタなどで、コンピューターがもっと速く小さくなるかもしれない、としています

電気を通さないはずのプラスチックも、二重結合が交互にならび、ドーピングをすると電気を通します。白川英樹博士たちの発見は、画面や太陽電池などの技術に広がりました。
材料の技術つながり
- 光る半導体:青色LEDってなに?
- 小さな部品で社会を変えた:半導体チップとトランジスタ
- 新しい太陽電池:ペロブスカイト太陽電池ってなに?

プレ男失敗しても、「なんでだろう」って考えるのが大事なんだね。

メル美日本とアメリカの研究者の協力から生まれたのもすてき。
炭素どうしを正確につなぐ、日本人2人がノーベル賞を受けた化学反応は、クロスカップリングへ。
鉛筆の芯からセロハンテープではがした炭素のシートは、グラフェンへ。
まとめ
- プラスチックは電気を通さないのが常識だった
- 単結合と二重結合が交互+ドーピングで、電気を通すように
- 1970年代はじめ、白川博士の研究室で触媒を1000倍まちがえて、銀色のポリアセチレンの膜
- ヨウ素で処理すると、電気の通りやすさが1000万倍(1977年発表)
- 帯電防止、電磁波シールド、発光ダイオード・太陽電池・携帯電話の画面へ(2000年ノーベル化学賞)
参考文献
- The Royal Swedish Academy of Sciences. Press release: The Nobel Prize in Chemistry 2000. NobelPrize.org. https://www.nobelprize.org/prizes/chemistry/2000/press-release/ (閲覧日:2026年10月10日)
- NobelPrize.org. The Nobel Prize in Chemistry 2000 — Popular information. https://www.nobelprize.org/prizes/chemistry/2000/popular-information/ (閲覧日:2026年10月10日)
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