【テクノロジー解説】化学反応を「スローモーション」で見る世界最速のカメラ:1フェムト秒は1000兆分の1秒。1秒と3,200万年の比と同じ短さ。結合が切れてつながる瞬間をレーザーでとらえた(1999年ノーベル化学賞)
サッカーのゴールの瞬間をスローモーションで見るように、化学反応の瞬間を見ることはできるのでしょうか。1999年のノーベル化学賞は、ごく短いレーザーの光で、化学反応の最中に分子の中の原子がどう動くのかを見せたアーメド・ズウェイル博士に贈られました。使ったのは、反応と同じ時間の単位「フェムト秒」(1000兆分の1秒)の光の点滅。1フェムト秒と1秒の比は、1秒と3,200万年の比と同じです。反応の山を越える瞬間(遷移状態)まで観察でき、触媒や分子の電子部品、生命のしくみ、薬づくりの研究に使われています。

プレ男化学反応って一瞬で起きるよね。その「瞬間」を見ることなんてできるの?

メル美世界最速のカメラで、スローモーションで見られるようになったんだって。
こんにちは、Dr. Taro です。 「テクノロジー解説」、今回はフェムト秒化学です。1999年のノーベル化学賞の発表をもとにまとめました。
化学反応の「スローモーション」
- サッカーのテレビ中継で、ゴールの瞬間をスローモーションで見ると、選手やボールの動きがよくわかります
- 化学反応も同じです。化学者は、反応をできるだけくわしく追いかけたいと考えてきました
- アーメド・ズウェイル博士は、反応の最中の原子や分子を「スローモーション」で見て、化学結合が切れて新しくつながるときに実際に何が起きているのかを見ました
世界最速のカメラ
- 博士の方法は、世界最速のカメラともいえるものです。反応が実際に起こる時間の単位まで短いレーザーの光の点滅を使います
- その単位がフェムト秒。1フェムト秒は1000兆分の1秒(10-15秒)で、1フェムト秒と1秒の比は、1秒と3,200万年の比と同じです
- 分子の中の原子が1回ふるえる時間は、ふつう10〜100フェムト秒。化学反応は、原子のふるえと同じ時間の単位で起こります
- この分野は「フェムト秒化学(フェムトケミストリー)」とよばれます

プレ男1秒と3,200万年の比!想像もつかない短さだ。
反応の「山の頂上」を見る
- さびる釘と爆発するダイナマイトのように、反応の速さはいろいろですが、多くの反応は温度が上がると速くなります
- 分子が反応するには、まず強い「けり」を受けて山(障壁)を越える必要があると考えられてきました。山の頂上にいる瞬間の分子の姿を「遷移状態」といいます
- でも、分子がどうやって山を登り、頂上でどんな形をしているのかは、ほとんどわかっていませんでした
- ズウェイル博士は1980年代の終わりに、数十フェムト秒の光の点滅を使い、反応の最中の分子を写す実験を行いました。これで、はじめて、山を越える瞬間を「スローモーション」で見られるようになりました。これより速い化学反応はない、つまり道の終点にたどりついたのです
「ポンプ」と「プローブ」
- 真空の中で分子のビームに、まず強い「ポンプ」の光をあてて反応をスタートさせ、次に弱い「プローブ」の光で何が起きているかを調べます
- 2つの光の時間差を少しずつ変えると、分子がどれくらいの速さで変わっていくかがわかります。時間差は、プローブの光を鏡で少し遠回りさせるだけでつくれます
何に役立つ?
- なぜある反応は起こり、別の反応は起こらないのか、なぜ反応の速さが温度で変わるのかを説明できます
- 触媒のしくみ、分子の電子部品の設計、生命のしくみ、未来の薬づくりまで、世界中で研究に使われています(1999年当時)

フェムト秒化学は、1000兆分の1秒のレーザーの光で、化学反応の最中に原子がどう動くかを見る技術です。反応の山を越える瞬間まで、スローモーションで観察できるようになりました。
つながるテクノロジー
- さらに1000分の1の短さで電子を見る:アト秒
- 光をそろえる:レーザー
- コンピューターの中で反応を再現:化学の実験を「コンピューターの中」で

プレ男鏡で光を遠回りさせるだけで時間差をつくるの、アイデアがすごい。

メル美化学反応のゴールシーンが見られるようになったんだね。
まとめ
- フェムト秒=1000兆分の1秒(1秒と3,200万年の比と同じ)
- 原子のふるえは10〜100フェムト秒。化学反応も同じ時間の単位
- ズウェイル博士は、ごく短いレーザーの光で、反応の最中の分子を「スローモーション」で観察
- 反応の山の頂上(遷移状態)を越える瞬間まで見えるように
- ポンプ光で反応を始め、プローブ光で調べる(1999年ノーベル化学賞)
参考文献
- The Royal Swedish Academy of Sciences. Press release: The Nobel Prize in Chemistry 1999. NobelPrize.org. https://www.nobelprize.org/prizes/chemistry/1999/press-release/ (閲覧日:2026年10月10日)
この記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の診断・治療に代わるものではありません。 気になる症状や不安がある場合は、医療機関にご相談ください。