【テクノロジー解説】ハードディスクを小さく大容量にした「巨大磁気抵抗(GMR)」:原子数個ぶんの薄い層で、ごく弱い磁気を大きな電気の差に。1997年に読み取りヘッドに使われ、すぐに標準へ(2007年ノーベル物理学賞)
写真や動画、音楽。データの多くは、パソコンやデータセンターのハードディスクに、小さな磁石の向きとして記録されています。2007年のノーベル物理学賞は、フランスのフェール博士とドイツのグリュンベルク博士が1988年にそれぞれ発見した「巨大磁気抵抗(GMR)」に贈られました。原子数個ぶんの厚さの金属の層を重ねると、ごく弱い磁気の変化で電気抵抗が大きく変わります。これを使った読み取りヘッドが1997年に登場し、すぐにハードディスクの標準になって、小型化と大容量化を支えました。電子の「スピン」を使う新しいエレクトロニクスの入口にもなりました。
目次

プレ男昔のパソコンのハードディスクって、すごく大きかったんでしょ?いまは手のひらサイズでテラバイト。なんでこんなに小さくなったの?

メル美ノーベル賞をとった発見がかかわってるって聞いたよ。
こんにちは、Dr. Taro です。 「テクノロジー解説」、今回はハードディスクを変えた「巨大磁気抵抗(GMR)」です。2007年のノーベル物理学賞の発表と一般向け解説をもとにまとめました。
ハードディスクは「小さな磁石」で記録する
ノーベル賞の発表によると、
- ハードディスクは、音楽などの情報を、ちがう向きに磁化されたとても小さな領域として記録しています
- 情報は、ディスクの上をなぞる読み取りヘッドが、磁気の変化を感じとって読みだします
- ハードディスクを小さく、高密度にするほど、一つひとつの磁気の領域は小さく、弱くなります。そのため、もっと敏感な読み取りヘッドが必要でした
1988年:ごく弱い磁気で、電気抵抗が大きく変わる
- 1988年、フランスのアルベール・フェール博士と、ドイツのペーター・グリュンベルク博士が、それぞれ別々に、まったく新しい物理現象「巨大磁気抵抗(GMR)」を発見しました
- GMR では、とても弱い磁気の変化が、電気抵抗の大きなちがいを生みます。磁気で記録された情報を電気の信号に変える、ハードディスクの読み取りにぴったりの道具でした
- 読み取りヘッドに流れる電流の強い・弱いが、データの1と0になります

プレ男弱い磁気を、大きな電気の差に「増幅」するイメージか!
しくみ:電子の「スピン」
一般向け解説によると、
- 電子には「スピン」という量子力学の性質があり、2つの向きのどちらかをとります(量子コンピューターってなに?)
- いちばん簡単な GMR は、磁石になる金属の層で、磁石にならない金属の層をはさんだサンドイッチです
- 2つの磁石の層の磁化の向きがそろっていると、多くの電子がすいすい通り、抵抗は小さい
- 2つの層の向きが逆だと、どの電子もどちらかの層で大きく散らばり、抵抗は大きい
- GMR が働くには、層の厚さが原子数個ぶんしかない構造が必要です。1970年代に生まれたとても薄い層をつくる技術のおかげで発見され、ナノテクノロジーの最初の本格的な応用のひとつともいえます
1997年、すぐに標準に
- 発見者たちの層のつくり方は、手間と費用がかかる研究室向けでした。アメリカで働くイギリス人のスチュアート・パーキンさんが、もっと簡単な方法(スパッタリング)でも同じ効果が出ることを示し、工場でつくれるようになりました
- 1997年に GMR を使った最初の読み取りヘッドが登場し、すぐにハードディスクの標準技術になりました
- こうしてハードディスクは大きく小型化し、ノートパソコンや音楽プレーヤーに入るようになりました。2007年当時、家庭用のハードディスクの最大容量は1テラバイト(1兆バイト)にまで伸びていました

巨大磁気抵抗(GMR)は、ごく弱い磁気の変化を大きな電気抵抗の差に変える現象です。1997年に読み取りヘッドに使われ、すぐに標準となって、ハードディスクの小型化と大容量化を支えました。
電子のスピンを使う「スピントロニクス」へ
- GMR は、電子の電気(電荷)だけでなくスピンも使う、新しいエレクトロニクス「スピントロニクス」の第一歩ともいえます
- 磁石の層のあいだに電気を通さない薄い層をはさむ「TMR(トンネル磁気抵抗)」は、さらに大きな抵抗の差を生み、新しい世代の読み取りヘッドに使われています
- 電源を切っても情報が消えない、磁気を使った作業用メモリ「MRAM」の研究も進んでいました
データを守る技術つながり
- ハードディスクがならぶ場所:データセンターってなに?
- 大切なデータはバックアップを:データのバックアップ

プレ男スマホの写真も、どこかのデータセンターの小さな磁石に記録されてるかもしれないんだね。

メル美原子数個ぶんの薄い層、想像もつかない…。
まとめ
- ハードディスクは、小さな磁気の領域で情報を記録し、読み取りヘッドで読む
- 1988年、フェール博士とグリュンベルク博士が巨大磁気抵抗(GMR)を発見
- 原子数個ぶんの薄い層のサンドイッチで、弱い磁気→大きな抵抗の差
- 1997年に GMR ヘッド登場、すぐに標準に。小型化・大容量化を支えた
- スピントロニクス(TMR、MRAM)の入口。2007年ノーベル物理学賞
参考文献
- The Royal Swedish Academy of Sciences. Press release: The Nobel Prize in Physics 2007. NobelPrize.org. https://www.nobelprize.org/prizes/physics/2007/press-release/ (閲覧日:2026年10月6日)
- The Royal Swedish Academy of Sciences. The Nobel Prize in Physics 2007 — Information for the public: The discovery of giant magnetoresistance. https://www.nobelprize.org/uploads/2018/06/popular-physicsprize2007.pdf (閲覧日:2026年10月6日)
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