【テクノロジー解説】すき間だらけの結晶「MOF(金属有機構造体)」:数グラムにサッカー場ほどの表面積。砂漠の空気から水をとる、二酸化炭素をつかまえる、水からPFASを分ける。京都大学の北川進博士らが受賞(2025年ノーベル化学賞)
2025年のノーベル化学賞は、京都大学の北川進博士、ロブソン博士、ヤギー博士に贈られました。金属のイオンを「角」に、長い有機分子を「柱」にして組み立てた結晶で、中に大きなすき間がたくさんある「金属有機構造体(MOF)」をつくり、その可能性を示した業績です。部品を変えると、ねらった物質をつかまえたりためたりするように設計できます。ヤギー博士のMOF-5は、数グラムでサッカー場ほどの表面積。北川博士は、気体が出入りできることを示し、「呼吸する」ようにやわらかいMOFを提案しました。砂漠の空気から水をとる、二酸化炭素を回収する、水からPFASを分けるなどの研究が進んでいます。

プレ男2025年のノーベル化学賞、日本の先生がとったんだよね。「MOF」ってなに?

メル美すき間だらけの結晶で、砂漠の空気から水をとれたりするらしいよ。
こんにちは、Dr. Taro です。 「テクノロジー解説」、今回はMOF(金属有機構造体)です。2025年のノーベル化学賞の発表と一般向け解説をもとにまとめました。
MOFってなに?
- 金属のイオンを「角」に、長い有機分子(炭素でできた分子)を「柱」にしてつないだ結晶です
- 中に大きなすき間(部屋)がたくさんあり、気体や化学物質が出入りできます。こうした、すき間の多い材料を「金属有機構造体(MOF)」とよびます
- 部品を変えると、ねらった物質をつかまえたり、ためたりするように設計できます。化学反応を進めたり、電気を通したりするものもあります
- 受賞したのは、北川進博士(京都大学)、リチャード・ロブソン博士(メルボルン大学)、オマー・ヤギー博士(カリフォルニア大学バークレー校)です
1989年、すき間だらけのダイヤモンド
- 1989年、ロブソン博士は、銅のイオンと、4本の腕をもつ分子を組みあわせました
- すると、整ったすき間の多い結晶ができました。無数のすき間がある、ダイヤモンドのような形です
- ロブソン博士はすぐにその可能性に気づきましたが、この結晶は不安定で、すぐくずれてしまいました

プレ男分子でジャングルジムを組み立てたみたい!
北川博士とヤギー博士が土台を固めた
北川博士:「無用の用」
- 北川博士は、研究人生を通じて「無用の用(役に立たないように見えるものの役割)」を大切にしてきました
- 研究費を申しこんでも、はじめは「何の役に立つのか」と理解されませんでした。それでもあきらめず、1997年、通り道(チャンネル)が通ったMOFをつくり、気体が出入りできることを示しました
- 1998年には、MOFをやわらかくできると提案。のちに、肺のように気体を吸ったり吐いたりする、形が変わるのに安定な材料が生まれました
ヤギー博士:とても安定なMOF-5
- ヤギー博士は1999年、とても安定な「MOF-5」を発表しました
- 数グラムのMOF-5の中に、サッカー場ほどの表面積があります。そのぶん、たくさんの気体をとりこめます
- 部品を変えて、すき間の大きさがちがう16種類のMOF-5もつくり、設計して性質を変えられることを示しました
何に役立つ?
- 受賞のあと、化学者は何万種類ものMOFをつくってきました
- 砂漠の空気から水をとる:ヤギー博士のグループは、アメリカ・アリゾナ州の砂漠で、夜のあいだに空気中の水蒸気をMOFにとりこませ、水をとりだしました
- 二酸化炭素をつかまえる、水素をためる、有毒なガスをためる
- 水からPFAS(有機フッ素化合物)を分ける、環境中にわずかに残った薬の成分を分解する

MOFは、金属のイオンと有機分子でつくる、すき間だらけの結晶です。数グラムにサッカー場ほどの表面積があり、砂漠の空気から水をとる、二酸化炭素をつかまえるなどの研究が進んでいます。
化学のつながり
- 「第3の触媒」:触媒は「金属」と「酵素」だけじゃなかった
- 電気を通すプラスチック:導電性ポリマー
- 原子1個分の厚さのシート:グラフェン

プレ男「何の役に立つの?」って言われても続けた研究が、ノーベル賞か。

メル美「無用の用」、いい言葉だね。
まとめ
- MOF:金属イオンを角、有機分子を柱にした、すき間だらけの結晶
- 1989年、ロブソン博士が最初の形をつくった(不安定)
- 北川博士(1997年〜):気体が出入りできる、やわらかく呼吸するMOF
- ヤギー博士(1999年):とても安定なMOF-5、数グラムでサッカー場ほどの表面積
- 砂漠の空気から水、二酸化炭素の回収、水からPFASを分けるなど(2025年ノーベル化学賞)
参考文献
- The Royal Swedish Academy of Sciences. Press release: The Nobel Prize in Chemistry 2025. NobelPrize.org. https://www.nobelprize.org/prizes/chemistry/2025/press-release/ (閲覧日:2026年10月10日)
- The Royal Swedish Academy of Sciences. Popular science background: They have created new rooms for chemistry (PDF). https://www.nobelprize.org/uploads/2025/11/popular-chemistryprize2025-2.pdf (閲覧日:2026年10月10日)
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