病気の解説2026年9月25日

マイコプラズマ・ジェニタリウムってどんな病気?治りにくい尿道炎の原因と、薬が効きにくい問題

クラミジアや淋菌の検査が陰性なのに治らない尿道炎。その原因になることがあるマイコプラズマ・ジェニタリウムと、日本で広がる薬剤耐性についてまとめました。

目次
  1. マイコプラズマ・ジェニタリウムってどんな病気?
  2. 症状は?
  3. 検査は?
  4. いちばんの問題—薬が効きにくくなっている
  5. 治療は?
  6. パートナーに伝えるのが気まずい…
  7. 予防するには
  8. まとめ

メル美クラミジアや淋菌の治療をしたのに、なかなか治らないことってあるの?

こんにちは、Dr. Taro です。 「クラミジアも淋菌も陰性なのに、尿道炎がなかなか治らない」——そんなときに原因になっていることがあるのが、今回お話しするマイコプラズマ・ジェニタリウムです。名前はあまり知られていませんが、いま性感染症の分野で注目されている細菌です。

マイコプラズマ・ジェニタリウムってどんな病気?

マイコプラズマ・ジェニタリウム(以下、ジェニタリウム)は、性行為でうつる細菌です。男性では尿道炎、女性では子宮頸管炎の原因になります。せきや肺炎の原因になる「肺炎マイコプラズマ」とは別の菌です(2つのマイコプラズマのちがい)。

ジェニタリウムが尿道炎を起こすこと(病原性)は、多くの研究で確かめられています。米国CDCによると、

マイコプラズマ・ジェニタリウムが原因になる割合(米国CDC):クラミジア・淋菌以外の尿道炎(非淋菌性尿道炎)の15〜20%、治りにくい・くり返す尿道炎の40%。子宮頸管炎の女性の10〜30%から見つかる

がジェニタリウムによるものとされています。女性では、子宮頸管炎の人の 10〜30% から見つかります。

症状は?

女性では、骨盤内炎症性疾患、早産、流産、不妊との関連が報告されていて、これらのリスクが約2倍になるとされています。

クラミジアや淋菌の治療をしたのに尿道炎や子宮頸管炎が治らない・くり返すときは、ジェニタリウムを疑うことが大切です。

検査は?

ジェニタリウムは、尿や子宮頸管のぬぐい液を使って、遺伝子を調べる検査(PCR検査)で見つけます。

症状がなくても検査したほうがいい?

米国CDC(2021年)や英国の学会(BASHH、2025年)のガイドラインでは、症状のない人全員に行う検査(スクリーニング)は、すすめられていません。症状のない人を見つけて治療することの効果が確かめられておらず、かえって薬の効かない菌を増やしてしまうおそれがあるためです。

一方で、ジェニタリウムはクラミジアのように、症状がはっきりしないまま感染していることがある菌です。とくに女性は、症状がなくても検査で陽性になることがめずらしくありません。次のようなときは、症状がなくても医師に相談して、検査を考えましょう。

なお、おりものの変化やにおいなどは、細菌性腟症など別の原因でおこることも多いです。英国の学会(BASHH、2025年)は、こうした症状だけではジェニタリウムとの関連は見られないとしています。気になる症状があるときは、自己判断せずに医師に相談しましょう。

いちばんの問題—薬が効きにくくなっている

ジェニタリウムのやっかいなところは、抗菌薬が効きにくい(薬剤耐性)菌が、とても多くなっていることです。

東京で2023〜2025年に集められたジェニタリウム(162人)を調べた研究では、

東京のマイコプラズマ・ジェニタリウムの薬剤耐性(2023〜2025年):マクロライド系の耐性変異 94.4%、キノロン系の耐性変異(parC S83I)65.5%、両方の系統に耐性 89.4%

と、ほとんどの菌が、代表的な2つの系統の薬に効きにくくなっていました。さらに、キノロン系の耐性変異が2つ重なっている菌では、キノロン系の薬での治療がうまくいかないことが多かった(52.4%、変異が重なっていない菌では23.5%)と報告されています。

米国やヨーロッパなどでも、マクロライド系の耐性は44〜90%と報告されていて、世界的な問題になっています。

治療は?

ジェニタリウムは抗菌薬で治療します。ただ、上のように薬が効きにくい菌が多いため、医師が状況に合わせて薬を選ぶことが大切です。

日本では、マクロライド系が効かない菌がほとんどです。そのため、このサイトではアジスロマイシンは最初から使わず、ドキシサイクリン、ミノサイクリン、シタフロキサシン、モキシフロキサシンなどの中から医師が選んで治療する方針をとっています。薬によっては、この病気に対する保険適用がないものもあります。

治療が終わってから3週間後に、治ったかを確認する

このサイトでは、治療が終わってから3週間後に、治ったかを確認する検査をおすすめしています(日本では、治療効果の判定のための検査にも保険が使えます)。

すぐに検査しないのには理由があります。治療で菌が一時的に減ると、本当は治っていなくても、しばらく検査で見つからないことがあるのです。薬を飲んでいったん陰性になったあと、10日ほどしてから、薬の効かない菌として再び見つかった例も報告されています。そのためヨーロッパのガイドライン(2021年)では、確認の検査は治療が終わってから3週間以上たってから行うとされています。

※英国の学会(BASHH、2025年)のように、症状がよくなっていれば確認の検査は必須ではない、とするガイドラインもあります。

治るまでのセックスは?

治ったことが確認できるまで(治療を始めてから5週間ほど)、セックスは控えるのが理想です。 ただ、それが難しい場合もあると思います。その場合は、必ずコンドームを使い、パートナーも一緒に治療して、うつし合い(ピンポン感染)にとくに気をつけてください。ヨーロッパのガイドラインでも、確認の検査で陰性になるまではコンドームを使うようすすめています。

パートナーに伝えるのが気まずい…

わかります。聞きなれない名前の病気だと、なおさら説明しにくいですよね。 でも、ジェニタリウムは症状が出ないこともあるので、「いつ、誰からうつったのか」は分からないことがほとんどです。

プレ男性病になるより、修羅場になる方がヤバい!

メル美責め合うより、2人で一緒に治すのがいちばんの近道です。

予防するには

まとめ


参考文献

  1. Centers for Disease Control and Prevention. Sexually Transmitted Infections Treatment Guidelines, 2021: Mycoplasma genitalium. https://www.cdc.gov/std/treatment-guidelines/mycoplasmagenitalium.htm (閲覧日:2026年9月25日)
  2. Omachi R, et al. Spread of dual-class drug-resistant Mycoplasma genitalium in Tokyo, Japan, 2023-2025. Antimicrob Agents Chemother. 2026;70:e0136725. https://doi.org/10.1128/aac.01367-25 (閲覧日:2026年9月25日)
  3. 厚生労働省保険局医療課. 検査料の点数の取扱いについて(保医発0531第4号、令和4年5月31日). https://kouseikyoku.mhlw.go.jp/hokkaido/info/tsuchi/02_santei/000241766.pdf (閲覧日:2026年9月25日)
  4. 日本感染症学会・日本化学療法学会. JAID/JSC 感染症治療ガイドライン2018―男性尿道炎とその関連疾患―. 感染症学雑誌 2018;92(3):313-. https://www.kansensho.or.jp/uploads/files/guidelines/guideline_JAID-JSC2018_maleurethritis1805.pdf (閲覧日:2026年9月25日)
  5. Jensen JS, et al. 2021 European guideline on the management of Mycoplasma genitalium infections. J Eur Acad Dermatol Venereol. 2022. https://doi.org/10.1111/jdv.17972 (閲覧日:2026年9月25日)
  6. Soni S, et al. British Association of Sexual Health and HIV national guideline for the management of infection with Mycoplasma genitalium, 2025. Int J STD AIDS. https://doi.org/10.1177/09564624251359054 (閲覧日:2026年9月25日)
  7. Falk L, et al. Time to eradication of Mycoplasma genitalium after antibiotic treatment in men and women. J Antimicrob Chemother. 2015. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/26283670/ (閲覧日:2026年9月25日)
  8. 日本性感染症学会(編). 性感染症 診断・治療ガイドライン2026. 診断と治療社, 2025年12月18日発行.

この記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の診断・治療に代わるものではありません。 気になる症状や不安がある場合は、医療機関にご相談ください。