淋菌(淋病)ってどんな病気?症状・検査・治療をやさしく解説
おしっこの強い痛みで気づくことが多い淋菌感染症。のどの感染や、薬が効きにくくなっている問題もあわせて解説します。

プレ男おしっこのときに痛くて、うみみたいなのが出るんだけど…。

メル美淋菌かもしれないね。のどにもうつるって聞いたよ。
こんにちは、Dr. Taro です。 今回は、クラミジアと並んで多い性感染症、淋菌(りんきん)感染症のお話です。「淋病(りんびょう)」とも呼ばれます。
淋菌ってどんな病気?
淋菌感染症は、淋菌という細菌による性感染症です。 WHO の推計では、2020年に世界の15〜49歳で約8,240万人が新たに感染しています。
淋菌は弱い菌で、体の外に出ると数時間で感染する力を失います。そのため、性行為(やそれに近い行為)以外でうつることはまれです。
日本ではどのくらい?
淋菌感染症も、クラミジアと同じく国の統計では「定点把握」の病気です。全国約1,000か所の決められた医療機関(性感染症定点)だけが報告しています。
2024年の報告数は8,791人(男性6,562人、女性2,229人)でした。 ただし、街のクリニックなどで診断された人は数に入らないので、実際の患者数ではなく「増えているか・減っているか」の傾向を見るための数字です。
報告は男性が女性の約3倍ですが、女性は症状が出にくく、受診の機会が少ないことも理由の一つと考えられています。
どうやってうつるの?
主な感染経路は、性行為などによる粘膜どうしの接触です。
- 腟性交だけでなく、オーラルセックスでのどに、アナルセックスで直腸に感染することがあります
- のどや直腸の感染は症状が出ないことが多いため、気づかないうちに感染源になってしまいます
- 出産のときに、産道で赤ちゃんの目にうつる(母子感染)ことがあります
症状は?
感染してから症状が出るまで(潜伏期間)は、2〜9日程度です。
男性
- おしっこのときの強い痛み、尿道が焼けるような感じ
- 尿道から黄色っぽい膿(うみ)がたくさん出る
クラミジアより症状が強いことが多く、「おしっこが痛くて受診した」という人がたくさんいます。 ただし、最近は男性でも症状が軽かったり、ない人もいます。
女性
- 子宮の入り口(子宮頸管)に炎症が起きますが、症状が軽く、自覚しないまま過ごすことが多い
のど・直腸
- ほとんど症状がありません
のどや直腸の淋菌は、検査しないと見つかりません。心当たりがあれば、のどや直腸も一緒に検査しましょう。
放っておくとどうなる?
- 女性:感染が子宮の奥やおなかの中に広がる(骨盤内炎症性疾患)と、不妊や子宮外妊娠の原因になることがある
- 男性:精巣上体炎(陰のうが腫れて強く痛む)になることがある
- まれに:菌が血液にのって全身に広がり、関節や皮膚などに症状が出ることがある(播種性淋菌感染症)
- 赤ちゃん:母子感染で目に感染すると、失明することがある(赤ちゃんにうつるクラミジア・淋菌)
検査はどうやるの?
- 性器の検査:男性は主に尿、女性は子宮頸管のぬぐい液や尿で調べます
- のどの検査:オーラルセックスに心当たりがあれば、のども調べます
- 直腸の検査:アナルセックスに心当たりがあれば、直腸も調べます
淋菌とクラミジアは同時にかかっていることもあるので、一緒に検査することが多いです。
いつ検査すればいいかは、行為から1週間程度が目安です。 タイミングは性行為後にやるべきことチェッカーでも確認できます。
治療は?—「薬が効きにくい菌」に注意
淋菌は、これまで使われてきた多くの抗菌薬が効きにくくなっている(薬剤耐性)菌です。 実は、治療の切り札とされるセフトリアキソンが効かない淋菌が、世界で初めて見つかったのは日本(2009年)でした。
そのため日本では、確実に効くとされる次の薬で治療します。
- セフトリアキソン:点滴(静脈注射)1回で治療します。のどの淋菌にも使えます
- スペクチノマイシン:筋肉注射1回。ただし、のどの淋菌には効きにくいとされています
飲み薬のセフィキシムが使われることもあります。ただ、日本の全国調査(2021年、男性の尿道炎から分離された淋菌1,068株)では、日本で使われる量のセフィキシムでは約4割(39.6%)の菌に効きにくいという結果でした。 一方、同じ調査でセフトリアキソンとスペクチノマイシンが効かない菌は見つかりませんでした。だから今も、治療の中心はセフトリアキソンです。
ただし、日本の別の研究(2018〜2024年に分離された淋菌1,336株)では、セフトリアキソンが効かない菌が6株(約0.4%)見つかっています。その中には、2017年以降は日本で報告されていなかった型の耐性菌も含まれていました。まれではありますが、セフトリアキソンが効かない淋菌は、日本にもいます。治療のあとに、治ったかを確認する検査を受けることが大切です。
飲み薬ではなく注射・点滴1回で治療するのが、クラミジアとの大きな違いです。 どの薬を使うかは、感染した場所などに合わせて医師が決めます。
治療で大事なポイントは3つです。
- パートナーも一緒に検査・治療する 自分だけ治しても、パートナーが感染したままだと、またうつし合ってしまいます。
- 治療後7日間、そしてパートナーの治療が終わるまでは、セックスはお休み(米国CDC)
- 治療から2週間後に、治ったかを確認する検査を受ける(性器ものども) とくにのどの淋菌は治りにくいことがあるので、症状がなくても確認が大切です。 また、淋菌は何度でもかかる病気です。米国CDCは、治療した人は約3か月後にもう一度検査を受けることをすすめています。
パートナーに伝えるのが気まずい…
わかります。すごく気まずいですよね。 でも、のどの淋菌や女性の淋菌は症状が出にくいので、いつ、誰からうつったのかは分からないことが多いんです。 「検査で見つかったから、一緒に調べて治そう」でOK。

プレ男性病になるより、修羅場になる方がヤバい!

メル美責め合うより、2人で一緒に治すのがいちばんの近道です。
予防するには
- コンドームを正しく使う(オーラルセックスのときも)
- パートナーが変わったとき、気になることがあったときは検査を受ける(のども忘れずに)
- 妊娠中の人は、赤ちゃんへの感染を防ぐためにも早めの検査と治療が大切です
Doxy-PEP(ドキシサイクリンによる予防内服)について
コンドームなしの性行為のあと72時間以内に抗菌薬のドキシサイクリンを飲んで、クラミジア・淋菌・梅毒の感染を減らすことをねらう予防法です。
- 米国CDCは2024年に、男性と性行為をする男性やトランスジェンダー女性で、過去1年にクラミジア・淋菌・梅毒にかかったことがある人を対象とした指針を出しています。それ以外の人での効果は、十分に確かめられていません。
- ただし、淋菌への予防効果はクラミジアや梅毒より低めです。米国の試験(DoxyPEP 試験)では、淋菌の感染は約55%減りましたが、クラミジアは約75〜90%、梅毒は約75〜90%減っていました。
- 淋菌には、ドキシサイクリンと同じ系統の薬(テトラサイクリン系)が効きにくい菌が多いためです。日本の全国調査(2021年)では、テトラサイクリンが効く淋菌は13.7%しかありませんでした。
- 日本ではこの目的での使用は承認されていない使い方(適応外)のため、保険は使えず自費診療になります。副作用や耐性菌が増える心配もあります。
使うかどうかは、自己判断で飲まずに、性感染症を扱う医療機関で医師に相談してください。
くわしくは、Doxy-PEPのページをご覧ください。
淋菌のワクチンは?
淋菌そのものを防ぐワクチンは、まだありません。 ただ、淋菌とよく似た「髄膜炎菌」のB群ワクチン(4CMenB)に、淋菌を防ぐ効果があるのではないかと期待され、研究されてきました。
- これまでの観察研究では、淋菌を約3〜4割防いだという報告がありました
- しかし、淋菌のリスクが高い男性どうしを対象にした3つのランダム化比較試験(DOXYVAC〈フランス、2024年〉、MenGO〈2026年〉、GoGoVax〈オーストラリア、2026年〉)では、いずれも効果は確認されませんでした
ただし、これらの試験はどれも淋菌のリスクがとても高いMSMが対象で、MSM以外の人での効果は、まだ分かっていません。国内未承認で、効果もはっきりしないことを理解したうえで、どうしても淋菌を避けたい人が、医師とよく相談して選択肢のひとつとして考えることはできます。淋菌専用のワクチンも開発が続いていますが、実用化はまだ先です。また、髄膜炎菌B群ワクチンは日本では承認されていません(日本で承認されている髄膜炎菌ワクチンは4価ワクチンのみ)。 くわしくは、髄膜炎菌ワクチンのページをご覧ください。
日本の淋菌の薬剤耐性のデータは、薬が効きにくい淋菌(薬剤耐性)にまとめています。
まとめ
- 淋菌は性行為でうつる細菌の感染症。のどや直腸にも感染する
- 男性はおしっこの強い痛みや膿で気づくことが多いが、女性やのどは症状が出にくい
- 放っておくと不妊などの原因になることがある
- 薬が効きにくくなっている菌。日本では注射・点滴1回で治療する
- パートナーと一緒に治す。治療2週間後に治ったかを確認(性器ものども)、その後の再検査も大切
参考文献
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- 国立健康危機管理研究機構. 淋菌感染症(詳細版). https://id-info.jihs.go.jp/diseases/ra/gonorrhea/010/gonorrhea.html (閲覧日:2026年9月24日)※ページに「更新作業中のため一部に古い情報が含まれる場合がある」との注記あり
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この記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の診断・治療に代わるものではありません。 気になる症状や不安がある場合は、医療機関にご相談ください。
