
ハイ男SNSで「子どもの1割は父親がちがう」って見て、結婚するのが怖くなった…。それって本当?

ブン子数字だけがひとり歩きしてる気がする。ちゃんとした研究では、どうなってるんだろう。
こんにちは、Dr. Taro です。 今回は、ネットで話題になりがちな「托卵」の話です。「托卵」は、カッコウなどがほかの鳥の巣に卵を産んで育てさせることから、パートナーがほかの人との子どもを、夫の子として育てさせることを指すネットの言葉です。論文と法務省の資料で確かめた事実をまとめました。不安をあおるための記事ではありません。
研究でわかっていること
- 父親とされる人と、生物学的な父親がちがうことを、研究では「婚外父性(extra-pair paternity)」と呼びます
- 2016年の論文(Larmuseauら)は、過去の人口集団での割合を推定した研究から、その割合は低いとし、「女性がいつも“良い遺伝子”を求めて相手を探している」という考え方に疑問を投げかけました
- 2019年の研究(Larmuseauら)は、ベルギー・オランダ地域の500年以上にわたる父系の家系図と、今生きている子孫のY染色体を調べました
- 結婚した夫婦での割合は、全体として低く、0.4%から5.9%の幅がありました
- いちばん高かったのは、19世紀後半の人口が密集した都市で、社会経済的に苦しい家庭でした
- つまり、割合は社会の状況によって大きく変わると考えられています

ハイ男「1割」どころか、多くの時代や地域では数%以下なんだ。

500年以上の家系図とDNAを調べた研究では、結婚した夫婦で子どもが夫の子でない割合は0.4%から5.9%で、全体として低く、社会の状況によって大きく変わっていました。
法律ではどうなっている?
- 日本の民法では、結婚しているあいだに妊娠した子、そして結婚前に妊娠して結婚後に生まれた子は、夫の子と推定されます(嫡出推定、772条)
- 生物学的な父親ではない人が法律上の父親と推定されている状態を解消するための手続きが、嫡出否認の訴えです
- 2024年(令和6年)4月1日から、次のように変わりました
| 改正前 | 改正後(2024年4月1日〜) | |
|---|---|---|
| 嫡出否認ができる人 | 夫だけ | 夫、子、母 |
| 訴えられる期間 | 1年 | 3年 |
| 女性の再婚禁止期間 | あり | 廃止 |
| 離婚などから300日以内に生まれた子 | 前の夫の子と推定 | 母が再婚した後に生まれた子は、再婚後の夫の子と推定 |
- 改正前に生まれた子とその母も、2024年4月1日から1年間に限って、嫡出否認の訴えを起こすことができました(この期間は終わっています)
- わからないことは、全国の法務局や住んでいる市区町村の戸籍の窓口、法律の相談は弁護士に

ブン子前は夫しか否認できなかったのが、子どもやお母さんもできるようになったんだね。
托卵は、罪に問えるの?
ここでは、条文と最高裁の判例をもとに、一般的な考え方を紹介します。実際のケースは事情によって大きく変わるので、必ず弁護士に相談してください。
刑事:不貞そのものを罰する規定はない
- 日本の刑法には、不貞(不倫)そのものを罰する規定はありません。刑法の「わいせつ、不同意性交等及び重婚の罪」の章にも、不貞を罰する条文はありません
- そのため、「托卵をした」こと自体で、刑事の罪に問うのは難しいと考えられます
民事:慰謝料と離婚
- 不貞な行為は、民法で裁判で離婚を求められる理由のひとつです(770条1項1号)
- 故意や過失で他人の権利や法律上守られる利益を侵害した人は、損害を賠償する責任を負い、精神的な損害(慰謝料)も対象になります(709条・710条)。配偶者の不貞は、この不法行為として慰謝料を求める理由になりえます
- 不貞の相手への請求について、最高裁(2019年2月19日判決)は、不貞の相手は、ふつうは「夫婦を離婚させたこと」を理由とする慰謝料(離婚に伴う慰謝料)は負わず、夫婦を離婚させようとして不当に干渉したなどの特別な事情がある場合に限られる、と判断しました。一方で、不貞行為そのものを理由とする責任を負う場合があることは否定していません
法律上の親子関係:DNAだけでは消えない
- 最高裁(2014年7月17日判決)は、DNA検査で夫と子に生物学上の父子関係がないことが明らかで、子が母と生物学上の父のもとで順調に育っている場合でも、それだけでは嫡出推定はなくならず、親子関係不存在確認の訴えでは争えないと判断しました(夫婦が事実上離婚していたなど、妊娠する機会がなかったことが明らかな場合は別)
- つまり、法律上の父子関係を解消するには、原則として嫡出否認の訴えを、決められた期間内に起こす必要があります。父の否認権の期間は、父が子の生まれたことを知った時から3年です(777条)
- 期間を過ぎると、生物学上の父でなくても、法律上の父のままになることがあります。疑いがあるときは、早めに弁護士に相談しましょう
不安なときに大切なこと
- 極端な数字に振り回されず、研究の中身を見ることが大切です
- 結婚は、相手を信頼できるかがいちばんの土台。誠実に向き合える相手かを、時間をかけて確かめましょう(結婚に愛は必要?)
- 「Good genes」と「Good dad」の話は、Good dadとGood genesの記事もどうぞ

ハイ男ネットの数字より、目の前の相手を信頼できるかだな。
まとめ
- 「托卵」はネットの言葉。研究では「婚外父性」と呼ばれる
- 500年以上の家系図とDNAの研究では、0.4〜5.9%。全体として低く、社会の状況で変わる
- 民法では、結婚中に妊娠した子は夫の子と推定
- 2024年4月から、嫡出否認は夫・子・母ができ、期間は3年に
- 極端な数字より、相手を信頼できるか
参考文献
- Larmuseau MHD, Matthijs K, Wenseleers T. Cuckolded Fathers Rare in Human Populations. Trends Ecol Evol. 2016;31:327-329. https://doi.org/10.1016/j.tree.2016.03.004 (閲覧日:2026年9月30日)
- Larmuseau MHD, et al. A Historical-Genetic Reconstruction of Human Extra-Pair Paternity. Curr Biol. 2019;29:4102-4107. https://doi.org/10.1016/j.cub.2019.09.075 (閲覧日:2026年9月30日)
- 法務省. 民法等の一部を改正する法律について(令和4年法律第102号、嫡出推定制度の見直し等). https://www.moj.go.jp/MINJI/minji07_00315.html (閲覧日:2026年9月30日)
- e-Gov法令検索. 民法 第772条. https://laws.e-gov.go.jp/law/129AC0000000089 (閲覧日:2026年9月30日)
- e-Gov法令検索. 民法 第709条・第710条・第770条・第774条・第777条. https://laws.e-gov.go.jp/law/129AC0000000089 (閲覧日:2026年9月30日)
- e-Gov法令検索. 刑法 第二編第二十二章 わいせつ、不同意性交等及び重婚の罪. https://laws.e-gov.go.jp/law/140AC0000000045 (閲覧日:2026年9月30日)
- 最高裁判所第一小法廷. 平成26年7月17日判決(平成25年(受)第233号 親子関係不存在確認請求事件). https://www.courts.go.jp/assets/hanrei/hanrei-pdf-84344.pdf (閲覧日:2026年9月30日)
- 最高裁判所第三小法廷. 平成31年2月19日判決(平成29年(受)第1456号 損害賠償請求事件). https://www.courts.go.jp/assets/hanrei/hanrei-pdf-88422.pdf (閲覧日:2026年9月30日)
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