【テクノロジー解説】人類がただ1つ根絶した感染症「天然痘」。始まりは1796年、ジェンナーの牛痘のワクチン。WHOの集中作戦から13年、1980年に根絶を宣言
天然痘は、人類にとってもっとも恐ろしい病気の一つで、何百万もの人の命をうばいました。WHO(世界保健機関)によると、1796年にエドワード・ジェンナーがつくった天然痘のワクチンは、初めて成功したワクチンです。WHOは1967年に集中的な根絶作戦を始め、世界中で予防接種と、患者さんを見つけだす監視を続けました。最後の自然感染は1977年のソマリア。1980年、WHOは天然痘の根絶を宣言しました。いまも人類が根絶できた感染症は天然痘だけです。ワクチンと公衆衛生が社会を変えた物語を解説します。

プレ男「天然痘は根絶された」って歴史で習ったけど、「根絶」ってどういう状態なの?

メル美ほかの感染症は、まだ根絶できてないんだよね?
こんにちは、Dr. Taro です。 「テクノロジー解説」、今回は、人類がただ1つ根絶した感染症、天然痘と、それを可能にしたワクチンの物語です。WHO(世界保健機関)の天然痘のページをもとにまとめました。
天然痘とは
WHO によると、
- 天然痘は、天然痘ウイルス(バリオラウイルス)による、急性で、人から人にうつる病気です
- 人類が知るなかでもっとも破壊的な病気の一つで、根絶されるまでに何百万人もの命をうばいました
- 症状のはじめは、高い熱、だるさ、ひどい腰の痛みなど。2〜3日後に、透明な液の入ったぶつぶつが、顔と手から全身に広がり、やがてうみをもち、かさぶたになって落ちます
- 症状のある人との近い接触で、飛まつでうつり、ときには汚れた衣類や寝具からもうつりました。潜伏期間は7〜17日で、熱が出てから、最後のかさぶたが落ちるまでうつる力がありました
1796年:ジェンナーの「最初のワクチン」
- 1796年、エドワード・ジェンナーがつくった天然痘のワクチンは、初めて成功したワクチンです
- ジェンナーは、牛痘(牛の天然痘)にかかったことのある乳しぼりの女性たちが、天然痘にかからないことに気づき、同じような接種で天然痘を防げることを示しました

プレ男230年前に、乳しぼりの人の観察からワクチンが生まれたのか!
1967年:WHOの集中根絶作戦
- WHO は1967年、天然痘を根絶する集中的な計画を始めました
- 何年ものあいだ、世界中で広く予防接種を行い、患者さんを見つけだす監視(サーベイランス)を続けました
- 4年で中南米から天然痘をなくし、さらに4年でアジアの最後のとりでを落としました。各国のチームは、「最後の戦い」の場となったソマリアに集まりました
- 最後の自然感染は、1977年のソマリアでした
- 1979年12月、19か国の科学者による独立した委員会が、根絶を認定しました
- 1980年、WHO は天然痘の根絶を宣言しました。根絶できた感染症は、天然痘だけです。WHO は、公衆衛生の歴史でもっとも注目すべき成功の一つとしています

天然痘は、1796年のジェンナーのワクチンから始まり、WHOの集中作戦で1980年に根絶されました。人類が根絶できた感染症は、いまも天然痘だけです。
根絶のあとも
- 根絶後、生きた天然痘ウイルスの最後の保管分をどうするかについて、長い議論が続いてきました。現在は、研究のための少量だけが、米国とロシアの2か所の安全な研究施設に保管されています
- WHO は、万一、病気がふたたび現れたときにそなえて、天然痘ワクチンの緊急用の備蓄を管理しています
- 根絶後、より安全なワクチンや、天然痘と、エムポックス(サル痘)のような近い病気の治療薬が開発されています
エムポックスについては、エムポックスの記事にまとめています。
ワクチンと感染症の技術
- 最新のワクチン技術:mRNAワクチンってなに?
- 細菌の感染症の治療薬:ペニシリンってなに?

プレ男世界中が協力したから、根絶できたんだね。

メル美世界中から1つの病気をなくせたって、本当にすごいね。
まとめ
- 天然痘は、何百万人もの命をうばった、もっとも破壊的な感染症の一つ
- 1796年、ジェンナーの牛痘をもとにした接種が、初めて成功したワクチン
- 1967年、WHO の集中根絶作戦。予防接種と監視を世界中で
- 最後の自然感染は1977年のソマリア。1980年に根絶宣言
- 根絶できた感染症は天然痘だけ。公衆衛生の歴史的な成功
参考文献
- World Health Organization. Smallpox(Health topics). https://www.who.int/health-topics/smallpox (閲覧日:2026年10月5日)
この記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の診断・治療に代わるものではありません。 気になる症状や不安がある場合は、医療機関にご相談ください。