【テクノロジー解説】光の顕微鏡の「限界」0.2マイクロメートルを超えた:光る分子をつかって、生きた細胞の中の分子1個1個の動きを見る「ナノスコピー」。2本のレーザーの方法と、分子を少しずつ光らせて重ねる方法(2014年ノーベル化学賞)
光の顕微鏡は、光の波長の半分、約0.2マイクロメートルより細かいものは見分けられない。1873年にアッベが示したこの「限界」は、長いあいだ越えられないと考えられていました。2014年のノーベル化学賞を受けた3人は、光る分子(蛍光分子)をうまく使ってこの限界をくぐりぬけました。ヘル博士は2本のレーザーで、ナノサイズの範囲だけを光らせる方法(STED)を、ベツィグ博士とモーナー博士は、分子を少しずつ光らせて何枚もの画像を重ねる方法を開発。いまでは、脳の神経のつなぎ目ができるようすや、病気にかかわるタンパク質が集まるようすを、生きた細胞の中で見られます。

プレ男顕微鏡って、倍率を上げればどこまでも細かく見えるんじゃないの?

メル美光の顕微鏡には「限界」があったんだって。それを越えた人たちがノーベル賞をとったらしいよ。
こんにちは、Dr. Taro です。 「テクノロジー解説」、今回は超解像蛍光顕微鏡です。2014年のノーベル化学賞の発表をもとにまとめました。
光の顕微鏡の「限界」
- 光の顕微鏡は長いあいだ、「光の波長の半分より細かいものは見分けられない」という限界があると考えられてきました
- 1873年、顕微鏡の研究者エルンスト・アッベは、ふつうの光の顕微鏡の解像度は0.2マイクロメートルより良くならないという物理的な限界を示しました
- 生きた細胞を、分子レベルのこまかさで調べられるようになるとは、思われていなかったのです
光る分子で限界をくぐりぬけた
2014年のノーベル化学賞を受けた3人は、光る分子(蛍光分子)を使って、この限界をたくみにくぐりぬけました。2つの原理があります。
1. 2本のレーザーの方法(STED顕微鏡)
- シュテファン・ヘル博士が2000年に開発しました
- 2本のレーザーを使います。1本は蛍光分子を光らせ、もう1本は、ナノメートルサイズのごく小さな範囲以外の光を消します
- 試料をナノメートルずつなぞっていくと、アッベの限界より細かい画像が得られます
2. 分子を少しずつ光らせて重ねる方法(単一分子顕微鏡)
- エリック・ベツィグ博士とウィリアム・モーナー博士が、それぞれ別々に土台をつくりました
- 一つひとつの分子の光をオン・オフできることを利用します
- 同じ場所を何度も撮影し、そのたびにばらばらの場所の少しの分子だけを光らせます。それらの画像を重ね合わせると、ナノレベルの細かい画像ができあがります
- 2006年、ベツィグ博士がこの方法をはじめて使いました

プレ男少しずつ光らせて、あとで重ねるのか!写真の合成みたい。
何が見えるようになった?
「ナノスコピー」とよばれるようになったこの方法で、科学者は、生きた細胞の中で、分子1個1個の通り道を見られるようになりました。たとえば、
- 脳の神経細胞どうしのつなぎ目(シナプス)を、分子がどうつくっていくか
- パーキンソン病、アルツハイマー病、ハンチントン病にかかわるタンパク質が、集まっていくようす
- 受精卵が分かれて胚になっていくときの、一つひとつのタンパク質
ナノスコピーは、いまでは世界中で使われています。

光の顕微鏡には、約0.2マイクロメートルより細かいものは見えないという限界がありました。光る分子をうまく使うことでこの限界を越え、生きた細胞の中の分子の動きが見えるようになりました。
見る技術つながり
- 電子で見る顕微鏡:電子顕微鏡ってなに?
- 光るタンパク質:光るクラゲのタンパク質「GFP」
- 2本の光線のもと:レーザーってなに?

プレ男「無理」と言われた限界を、アイデアで越えたんだね。

メル美病気のしくみの研究にも役立ってるのがいいな。
まとめ
- 光の顕微鏡には、約0.2マイクロメートルの限界がある(1873年、アッベ)
- 光る分子を使って、この限界を越えた
- STED:2本のレーザーで、ナノサイズの範囲だけを光らせる(ヘル博士、2000年)
- 単一分子顕微鏡:分子を少しずつ光らせて重ねる(ベツィグ博士、モーナー博士。2006年)
- 生きた細胞の中の分子1個1個の動きが見える(2014年ノーベル化学賞)
参考文献
- The Royal Swedish Academy of Sciences. Press release: The Nobel Prize in Chemistry 2014. NobelPrize.org. https://www.nobelprize.org/prizes/chemistry/2014/press-release/ (閲覧日:2026年10月10日)
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