【テクノロジー解説】光るクラゲのタンパク質「GFP」:下村脩博士は1961年の夏、約1万匹のクラゲを集めて取りだした。いまは見えないタンパク質に「光る名札」をつけ、脳の神経やがん細胞の動きを見る道具に(2008年ノーベル化学賞)
北アメリカの西海岸を漂うオワンクラゲは、刺激されると縁が緑色に光ります。下村脩博士は1961年の夏、約1万匹のクラゲを集め、光るタンパク質「イクオリン」と、紫外線で緑色に光る「緑色蛍光タンパク質(GFP)」を取りだしました(1962年発表)。GFPは、ほかに何も加えなくても光るのが画期的な点です。チャルフィー博士は、GFPを遺伝子の「光る名札」として使えることを示し、チエン博士は緑以外の色もつくりました。いまでは、見えないタンパク質の動きや、脳の神経細胞の発達、がん細胞の広がりを見る、生命科学の大切な道具になっています(2008年ノーベル化学賞)。

プレ男光るクラゲのタンパク質で、ノーベル賞をとった日本人がいるんだって?

メル美下村脩さんだよね。いまは医学の研究にも使われてるらしいよ。
こんにちは、Dr. Taro です。 「テクノロジー解説」、今回は緑色蛍光タンパク質(GFP)です。2008年のノーベル化学賞の発表と一般向け解説をもとにまとめました。
見えないタンパク質を「見たい」
- 生き物の体の中には、何万種類ものタンパク質があり、大切な化学反応をこまかくコントロールしています。このしくみがおかしくなると、病気につながることがよくあります
- だから、体の中でそれぞれのタンパク質が何をしているかを調べることは、生命科学にとってとても大切でした
- でも、ほとんどのタンパク質は目に見えません
1961年夏、約1万匹のクラゲ
- オワンクラゲ(Aequorea victoria)は、北アメリカの西海岸の海流を漂うクラゲで、刺激されると縁が緑色に光ります
- 1961年の夏、下村脩博士は共同研究者とともに、北アメリカ西海岸のフライデーハーバーで、ひと夏じゅうクラゲを集めました。クラゲの縁を切り取り、しぼった液を、約1万匹分持ち帰りました
- ふしぎなことに、そこから取りだした光るタンパク質「イクオリン」の光は、クラゲの縁のような緑ではなく青でした
- 1962年の論文で、2人は、日光の下でわずかに緑っぽく、紫外線で緑色に光るもう1つのタンパク質も取りだしたと書きました。これが GFP です
- クラゲの中では、GFP がイクオリンの青い光を緑の光に変えていたのです

プレ男1万匹のクラゲを、ひと夏で集めたの!?
「何も加えなくても光る」のが画期的
- イクオリンなど、ほかの光るタンパク質は、光るためにエネルギーをもった分子を補いつづける必要があります
- ところが GFP は、ほかに何も加えなくても光るのです。これが GFP の革命的なところでした
遺伝子の「光る名札」に
- マーティン・チャルフィー博士は、GFP が遺伝子の光る目印として役立つことを示しました。最初の実験のひとつで、透明な線虫の6つの細胞を GFP で色づけしました
- ロジャー・チエン博士は、GFP が光るしくみの理解を進め、緑以外の色もつくりました。これで、ちがうタンパク質や細胞にちがう色をつけ、いくつもの現象を同時に追えるようになりました
- いまでは、DNA の技術で、見えないタンパク質に GFP をつなげ、その動き、位置、ほかのタンパク質とのかかわりを見ることができます
何が見えるようになった?
ノーベル賞の発表によると、
- 脳の神経細胞の発達
- がん細胞がどう広がるか
- アルツハイマー病での神経細胞の傷つき方
- 育っていく胎児のすい臓で、インスリンをつくる細胞がどうできるか
- マウスの脳の神経細胞を、万華鏡のようないろいろな色で色分けした実験も

下村脩博士がクラゲから取りだしたGFPは、ほかに何も加えなくても光るタンパク質です。見えないタンパク質に「光る名札」をつけ、脳の神経やがん細胞の動きを見る、生命科学の大切な道具になりました。
生命を見る技術つながり
- 分子の形を見る:電子顕微鏡ってなに?
- タンパク質の形を予測する:AlphaFoldってなに?
- 遺伝子を編集する:CRISPR-Cas9ってなに?

プレ男クラゲの光が、病気の研究を照らしてるんだね。

メル美「なんで光るんだろう」っていう好奇心から始まったのがいいな。
タンパク質の重さをはかる方法を開発した日本人技術者の物語は、タンパク質の「重さ」をはかるへ。
光る分子を使って、光の顕微鏡の限界を越えた技術は、光の顕微鏡の「限界」を超えたへ。
まとめ
- オワンクラゲは、刺激されると縁が緑色に光る
- 1961年夏、下村博士らが約1万匹のクラゲを集め、イクオリンと GFP を取りだした(1962年発表)
- GFP は何も加えなくても光るのが画期的
- チャルフィー博士が遺伝子の光る目印に、チエン博士がいろいろな色に
- 神経の発達、がん細胞の広がりなどを見る道具に(2008年ノーベル化学賞)
参考文献
- The Royal Swedish Academy of Sciences. Press release: The Nobel Prize in Chemistry 2008. NobelPrize.org. https://www.nobelprize.org/prizes/chemistry/2008/press-release/ (閲覧日:2026年10月10日)
- NobelPrize.org. The Nobel Prize in Chemistry 2008 — Popular information. https://www.nobelprize.org/prizes/chemistry/2008/popular-information/ (閲覧日:2026年10月10日)
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