【テクノロジー解説】染色体の端の「キャップ」テロメア:細胞分裂のたびにDNAの端はコピーしきれないはずなのに、なぜ短くならない?クリスマスの日に見つかった酵素テロメラーゼ。老化とがんにも関係(2009年ノーベル生理学・医学賞)
遺伝子をのせた長いDNAは、染色体にまとめられています。その両端の「キャップ」がテロメアです。細胞分裂でDNAをコピーするとき、片方の鎖のいちばん端はコピーしきれないので、染色体は分裂のたびに短くなるはず。でも、ふつうはそうなりません。2009年のノーベル生理学・医学賞は、このなぞを解いたブラックバーン博士、グライダー博士、ショスタク博士に贈られました。テロメアの独特なDNAのくり返しが染色体を守ること、そしてテロメアをつくる酵素テロメラーゼを発見しました。テロメアが短くなると細胞は老化し、がん細胞ではテロメラーゼの働きが高いことが多いとわかっています。

プレ男「テロメアが短くなると老化する」って聞いたことある。本当?

メル美細胞の老化には関係するけど、体全体の老化はもっと複雑なんだって。
こんにちは、Dr. Taro です。 「テクノロジー解説」、今回はテロメアです。2009年のノーベル生理学・医学賞の発表をもとにまとめました。
染色体の端の2つのなぞ
- 遺伝子をのせた長い糸のようなDNAは、染色体にまとめられています。その両端の「キャップ」がテロメアです
- なぞ1:1930年代、マラー博士とマクリントック博士は、染色体の端の構造が、染色体どうしがくっつくのを防いでいるように見えることに気づきました。でも、どう働いているのかはわかりませんでした
- なぞ2:1950年代、遺伝子のコピーのしくみがわかってくると、新しい問題が出てきました。細胞分裂でDNAをコピーするとき、片方の鎖のいちばん端はコピーできないのです。それなら、染色体は分裂のたびに短くなるはず。でも実際には、ふつうそうなりません
種をこえた実験(1982年)
- エリザベス・ブラックバーン博士は、単細胞の生き物テトラヒメナの染色体の端に、「CCCCAA」というDNAの並びが何度もくり返されていることを見つけました
- ジャック・ショスタク博士は、線状のDNA(小さな人工の染色体)を酵母に入れると、すぐに分解されてしまうことに気づいていました
- 1980年の学会で出会った2人は、テトラヒメナのCCCCAAの並びを、酵母の小さな染色体の端につけて酵母に入れました。すると、その染色体は分解から守られたのです(1982年発表)
- まったくちがう生き物のテロメアが別の生き物の染色体を守ったことから、生き物に共通する基本的なしくみがあるとわかりました。テロメアのDNAは、アメーバから人まで、ほとんどの植物と動物にあります

プレ男別の生き物のキャップでも、ちゃんと守れたのか!
クリスマスの日の発見:テロメラーゼ
- 大学院生だったキャロル・グライダー博士と、指導者のブラックバーン博士は、テロメアのDNAをつくる未知の酵素があるのではないかと考えました
- 1984年のクリスマスの日、グライダー博士は細胞の抽出液に、酵素の働きのしるしを見つけました。2人はこの酵素を「テロメラーゼ」と名づけました
- テロメラーゼはRNAとタンパク質でできていて、RNAの部分にCCCCAAの並びがあり、それを型にしてテロメアをのばします。これで、DNAをコピーする酵素が、染色体の端まで全部コピーできるようになります
老化とがん
- テロメアがだんだん短くなる酵母や、テロメラーゼのRNAを変えたテトラヒメナは、育ちが悪く、やがて分裂を止め、細胞が早く老化しました。人の細胞の老化も、テロメラーゼでおそくなることが示されました
- テロメアの短縮が体全体の老化の原因ではないかとも考えられましたが、老化はもっと複雑で、テロメアはいくつもある要因の1つだと考えられています
- がん細胞は、何度でも分裂し続けられるのにテロメアを保っています。がん細胞ではテロメラーゼの働きが高いことが多く、テロメラーゼをねらう治療の研究も進められています(2009年当時)
- 骨髄の幹細胞がうまく分裂できず重い貧血になる病気など、テロメラーゼの異常が原因の遺伝性の病気も知られています

テロメアは染色体の端のキャップで、テロメラーゼという酵素がそれをつくります。テロメアが短くなると細胞は老化しますが、体全体の老化はもっと複雑で、テロメアはその要因の1つと考えられています。
つながるテクノロジー
- 細胞分裂のサイクル:細胞分裂の「エンジン」と「アクセル」と「点検所」
- DNAの修理チーム:DNAは毎日こわれている
- 計画的に消える細胞:細胞は「計画的に」死ぬ

プレ男クリスマスに大発見って、すてきなプレゼントだね。

メル美「テロメアで若返り」みたいな話は、うのみにしないようにしよう。
まとめ
- テロメア:染色体の端のキャップ。DNAの端がコピーしきれず短くなる問題を解決
- 1982年、テトラヒメナのテロメアが酵母の染色体を守ることを示した(ブラックバーン博士、ショスタク博士)
- 1984年のクリスマス、テロメアをつくる酵素テロメラーゼを発見(グライダー博士、ブラックバーン博士)
- テロメアが短くなると細胞が老化。ただし体全体の老化はもっと複雑
- がん細胞はテロメラーゼの働きが高いことが多い(2009年ノーベル生理学・医学賞)
参考文献
- The Nobel Assembly at Karolinska Institutet. Press release: The Nobel Prize in Physiology or Medicine 2009. NobelPrize.org. https://www.nobelprize.org/prizes/medicine/2009/press-release/ (閲覧日:2026年10月10日)
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