
メル美モーツァルトを聞くと頭がよくなるって、よく聞くよね。赤ちゃんに聞かせるCDもあるみたい。

プレ男じゃあ、仕事の前にモーツァルトを聞いたら、オレも頭が冴えるかも!
こんにちは、Dr. Taro です。 「都市伝説にマジレス」、今回は「モーツァルト効果」です。1993年と1999年に科学誌『Nature』に載った論文・反論・回答の原文、2001年の医学雑誌の解説、2010年のウィーン大学の発表をもとにまとめました。
結論から
- もとの研究(1993年)は、大学生がモーツァルトを10分聞いたあと、空間の課題の成績が上がった、というもの。効果は10〜15分で消えた
- 16の研究をまとめた分析(1999年)では、差はIQにして1.4ポイントで、統計的に意味のある差ではなかった
- 最初の研究者自身が「知能が上がるとは主張していない」と答えている
- 約40の研究・3000人超をまとめた分析(2010年)も、モーツァルトに特有の効果は確かめられないとした
1993年の『Nature』の報告
- 米国カリフォルニア大学アーバイン校の心理学者フランシス・ラウシャーらが、1993年に『Nature』に短い報告を出しました
- 2001年の医学雑誌の解説によると、大学生がモーツァルトの「2台のピアノのためのソナタ ニ長調 K.448」を10分聞いたあと、空間の推理の課題で、リラックスするための指示の音声を聞いたとき・無音のときより、成績がIQの点にして8〜9ポイント高くなりました
- ただし、効果は10〜15分より長くは続きませんでした

プレ男え、10〜15分で消えちゃうの?
話が大きくなっていった
- ウィーン大学の発表(2010年)によると、この報告は大きな話題になり、米紙ニューヨーク・タイムズは「モーツァルトを聞くと大学入試(SAT)で有利になる」と書きました。子どもの知能を上げる「魔法の弾丸」だと言う人も出てきました
- 同じ発表によると、1998年には米国ジョージア州の知事が、赤ちゃんを産んだすべての母親にクラシック音楽のCDを配るための法案を出し、フロリダ州では、州のお金で運営する保育施設で1日1時間以上クラシック音楽を流すことを求める法律ができました
- 一方で、世界の研究者は、同じ結果を再現するのに苦労しました
1999年:16の研究をまとめると「1.4ポイント」
1999年、『Nature』に2つの反論がのりました。
- 米国ハーバード大学のクリストファー・チャブリスは、モーツァルトの音楽と認知の課題についての16の研究をまとめました(メタ分析)
- 「モーツァルト」と「無音」をくらべた20の比較・計714人を合わせると、差は0.09標準偏差、IQにして1.4ポイントでした
- 課題を分けると、抽象的な推理では差は0.04、紙を折って切る課題などの空間の課題では0.14(IQにして2.1ポイント)。空間の課題でも、統計的に意味のある差ではありませんでした
- この差は、論文の言葉で「1人がIQテストを受けるときの、ふつうのばらつきより小さい」ものでした
- チャブリスは、残った小さな効果は「楽しんで、気分が高まった」ことで説明できると考えました。紹介されている研究では、モーツァルトでも、スティーヴン・キングの小説の朗読でも、楽しんだ人だけ紙を折って切る課題の成績が上がりました

メル美モーツァルトだから、じゃなくて、「楽しかったから」かもしれないんだ。
- もう1つの反論は、米国とカナダの3つの研究室のチームでした。3つの実験のどれでも、モーツァルトのソナタを聞いて空間の推理がよくなることはありませんでした。差の大きさは平均0.003で、チームは「レクイエム(鎮魂曲)がふさわしいかもしれない」と書いています
言い出した研究者の答え
- 同じ号で、ラウシャーはこう答えています。2つの反論は「モーツァルトを聞くと知能が上がる」という、よくある誤解をくり返している。「私たちはそのような主張はしていない」。効果は、頭の中で図形を思いうかべて順番に動かすような、空間と時間の課題に限られる
- そのうえでラウシャーは、効果を再現した研究もあり、「パンをうまくふくらませられない人がいても、イーストの効果がないことにはならない」とも書いています
2010年:約40の研究、3000人超
- ウィーン大学のピーチュニクらは、2010年に学術誌『Intelligence』で、この分野の研究をまとめた分析を発表しました
- 発表によると、集めたのは約40の独立した研究(出版された論文のほか、米国などの出版されていない学位論文もふくむ)、参加者は3000人超です
- 結論は、「モーツァルトの音楽を聞くことに特有の、空間の能力の向上は支持されない」。筆頭著者は「モーツァルトを聞くことはすべての人におすすめするが、認知の能力を高めるという期待にはこたえないだろう」と話しています

1993年の研究は、大学生の空間の課題の成績が10〜15分だけ上がったという報告で、知能が上がるという主張ではありませんでした。その後の分析でも、モーツァルトに特有の効果は確かめられていません。
まとめ
- 「モーツァルト効果」のもとは、1993年の『Nature』の短い報告。大学生が10分聞いたあと、空間の課題の成績が上がり、効果は10〜15分
- 16の研究をまとめると、差はIQにして1.4ポイントで、統計的に意味のある差ではなかった(1999年)
- 最初の研究者も「知能が上がるとは主張していない」
- 約40の研究・3000人超の分析でも、モーツァルトに特有の効果は確かめられない(2010年)
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参考文献
- Rauscher FH, Shaw GL, Ky KN. Music and spatial task performance. Nature. 1993;365(6447):611. doi:10.1038/365611a0. https://doi.org/10.1038/365611a0 (閲覧日:2026年10月22日)
- Chabris CF. Prelude or requiem for the ‘Mozart effect’? Nature. 1999;400(6747):826-827. / Steele KM, et al. Prelude or requiem for the ‘Mozart effect’? Nature. 1999;400:827. / Rauscher FH. Rauscher replies. Nature. 1999;400:827-828(3本をまとめた紙面の写し、アパラチアン州立大学 Steele 氏のページ). https://www.appstate.edu/~steelekm/documents/Mozart_N.pdf (閲覧日:2026年10月22日)
- Jenkins JS. The Mozart effect. J R Soc Med. 2001;94(4):170-172. doi:10.1177/014107680109400404. https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC1281386/ (閲覧日:2026年10月22日)
- University of Vienna. Mozart’s music does not make you smarter, study finds(2010年5月10日、ScienceDaily に掲載). https://www.sciencedaily.com/releases/2010/05/100510075415.htm (閲覧日:2026年10月22日)
- Pietschnig J, Voracek M, Formann AK. Mozart effect–Shmozart effect: A meta-analysis. Intelligence. 2010;38(3):314-323. doi:10.1016/j.intell.2010.03.001. https://doi.org/10.1016/j.intell.2010.03.001 (閲覧日:2026年10月22日)
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