
プレ男おじいちゃんのお見舞いに行くんだけど、病院でスマホを使ったら、医療機器が止まっちゃうんだよね?電源切っておかなきゃ…。

メル美でも最近、病室でスマホを使ってる人も見かけるよ。いまのルールってどうなってるんだろう。
こんにちは、Dr. Taro です。 今回の都市伝説は、「病院で携帯電話(スマホ)を使うと、電波で医療機器が止まったり誤作動したりする」説です。半分は本当で、半分は古い話。電波環境協議会が2014年に出した指針(厚生労働省が都道府県などに周知を依頼したもの)、総務省の資料、医学雑誌『BMJ』の論文をもとにまとめました。
結論から
- 2014年8月19日、電波環境協議会は「医療機関における携帯電話等の使用に関する指針」を出し、1997年の古い指針を廃止しました
- 新しい指針の考え方は、患者や面会者の携帯電話の使用は、できるかぎり認められることが望ましい。待合室・ロビー・病室などでは、使用可能とすることができるとしています
- ただし、ごく近くで使うと医療機器が影響を受けるおそれはあるので、影響が心配な医療機器から1m程度離すのが目安。医療機器の上にスマホを置くのは禁止。手術室・集中治療室(ICU)などでは電源を切る
- 実際のルールは病院ごとに決めるものです。行った病院の掲示や説明にしたがいましょう
なぜ「電源を切れ」と言われてきたのか
- 指針によると、病院での携帯電話の使い方は、これまで、医療機器の電磁的耐性(まわりの電気機器などの電磁波で動作をじゃまされない能力)についての規制、平成9年(1997年)に不要電波問題対策協議会(いまの電波環境協議会)が出した指針、マナーの問題などを考えて、病院ごとに決められてきました
- その後、携帯電話が生活に広く入りこんだこと、第二世代(2G)の携帯電話サービスが終わったこと、医療機器の電磁的耐性が上がったことなど、状況が大きく変わった、と指針は書いています
- また、病院で無線の機器をうまく使うことは、医療の高度化・効率化や、患者の便利さ・生活の質の向上に大きな効果が見こめる、としています
「1m」の根拠は?
- 指針は、影響が心配な医療機器として、輸液ポンプ、血液浄化装置、体外式ペースメーカ、人工呼吸器、補助人工心臓の駆動装置、保育器などをあげています
- 医療機器の国際規格(IEC 60601-1-2)と、それをもとにした日本の規格(JIS T 0601-1-2:2012)の計算式に、いまの携帯電話の最大の出力(250mW)を当てはめると、推奨される距離は1.15m。実際の端末の性能を考えると0.92mになります
- 指針のための実験(影響が心配な医療機器にしぼった限られた実験)で、診療に影響を与える事象(異音や表示のぶれなどは除く)が出た最大の距離は18cmでした
- これらに、利用者にわかりやすい距離にすることを加えて、目安を「1m程度」にした、と指針は説明しています。この距離で、診療の目的が果たせなくなるような影響が出たことは、これまで確認されていないとも書いています
- 一方で、スピーカーの異音や表示の乱れのように、診療はできるけれど機器が乱れる事象は起こりうること、病院の古い医療機器には念のため注意が必要なことも書かれています

メル美実験で影響が出たのは18cmまで。それで、わかりやすく「1mくらい離して」なんだ。
場所ごとの考え方(指針の参考の例)
- 待合室・ロビー・食堂・廊下・エレベーターホール:ふつうは医療機器がない場所なので、マナーに気をつければ通話もふくめて使える。医療機器を使っている患者がいたら、決められた距離以上離す。歩きスマホはしない
- 病室:使われている医療機器は限られ、影響は比較的少ないので、使用可能とすることができる。ただし医療機器からは離す。大部屋では通話を控えるなどの配慮が望ましい
- 診察室:診察のじゃまにならないよう、使うのは控える。ただし、ここの医療機器の多くは診断用で、医療者が近くにいて対処できるので、電源を切る必要はない
- 手術室・集中治療室(ICU)・検査室・治療室:生命維持の装置など、影響が出たときのリスクがとても大きい機器が多いので、原則として使用禁止。携帯電話は待ち受けの状態でも電波を出すことがあるので、必ず電源を切る(または電波を出さないモードにする)
- 指針は、録音やカメラについても、個人情報や医療情報を守るため、病院では原則として使うのを控えるのが適切だとしています
ペースメーカは「15cm」
- 体の中に入れる植込み型の医療機器(心臓ペースメーカなど)については、総務省が別の指針を出しています
- 総務省の資料によると、1997年の指針では、携帯電話を植込み型の医療機器の装着部位から「22cm程度以上」離すことになっていました。この22cmは、実験で影響が出た最大の距離(15cm)に、安全のゆとりを加えた数字でした
- ところが、その最大の距離を示した第二世代の携帯電話は、2012年7月にサービスを終えました。それ以降の携帯電話では、それまでの実験で影響が出た最大の距離は3cmでした
- 植込み型の医療機器の国際規格(ISO 14117など)では、携帯電話にあたる電波を15cmの距離で受けても異常にならないよう定められています。そこで総務省は2013年1月、指針の距離を「15cm程度以上」に見直しました
- 総務省はこのとき、「満員電車などでは電源を切るよう配慮することが望ましい」としていた書き方を、リスクを大きく見すぎて不安を与えないよう、「装着部位との距離が15cm程度以下にならないよう注意する」という書き方に改めています。優先席のまわりでの携帯電話の扱いに誤解が生じている、という意見があったためです

プレ男「スマホは全部ダメ」じゃなくて、「場所によって」と「距離」なんだね。お見舞いでは、病院の掲示を見てから使うよ。
海外の研究では
- 医学雑誌『BMJ』の2007年の論文「Medical myths(医学の神話)」も、「携帯電話は病院で医療機器に大きな電波障害を起こす」をとりあげています
- 論文によると、英国の初期の研究では、携帯電話が影響したのは医療機器の4%で、1m未満の距離のときだけ。深刻な影響は0.1%未満でした
- 米国のメイヨー・クリニックで2005年に、医療機器16種類・携帯電話6台で510回試したところ、臨床的に重要な影響が出たのは1.2%でした。2007年の研究では、ふつうの使い方で、75の治療室で300回試して、影響は1つもありませんでした

いまの指針では、待合室や病室ではスマホを使えることが多く、影響が心配な医療機器から1m程度離すのが目安です。手術室やICUでは電源を切ります。具体的なルールは病院ごとにちがうので、掲示や説明にしたがってください。
まとめ
- 「病院でスマホを使うと医療機器が止まる」は、ごく近くでは影響のおそれがあるが、「病院では一切だめ」は古い考え。1997年の指針は2014年に廃止された
- 電波環境協議会の指針(2014年8月19日):待合室・病室などでは使用可能とすることができる。影響が心配な医療機器から1m程度離す。医療機器の上に置かない。手術室・ICUなどでは電源オフ
- 実験で診療に影響が出た最大の距離は18cm。1mは、規格の計算(1.15m・0.92m)とわかりやすさから決めた目安
- 植込み型の医療機器(ペースメーカなど)からは15cm程度以上(総務省、2013年1月の見直し。それまでは22cm)
- 実際のルールは病院ごと。掲示にしたがいましょう。電波と健康の都市伝説は「5Gの電波で新型コロナが広がる」説、「医学の神話」の論文から「死んだあとも髪と爪は伸びる」は本当?もどうぞ
参考文献
- 厚生労働省医政局総務課長・医薬食品局安全対策課長. 電波環境協議会による「医療機関における携帯電話等の使用に関する指針」について(医政総発0819第1号・薬食安発0819第1号、平成26年8月19日)。別紙:電波環境協議会「医療機関における携帯電話等の使用に関する指針」(平成26年8月19日). https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11120000-Iyakushokuhinkyoku/140819a1.pdf (閲覧日:2026年10月22日)
- 総務省. 「各種電波利用機器の電波が植込み型医療機器へ及ぼす影響を防止するための指針」の改正について(別紙1). https://www.soumu.go.jp/main_content/000188787.pdf (閲覧日:2026年10月22日)
- 総務省. 「電波の医療機器等への影響に関する調査」報告書(平成26年3月). https://www.soumu.go.jp/main_content/000291919.pdf (閲覧日:2026年10月22日)
- Vreeman RC, Carroll AE. Medical myths. BMJ. 2007;335(7633):1288-1289. doi:10.1136/bmj.39420.420370.25. PMC2151163. https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC2151163/ (閲覧日:2026年10月22日)
この記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の診断・治療に代わるものではありません。 気になる症状や不安がある場合は、医療機関にご相談ください。