
プレ男サメってがんにならないんでしょ?骨が軟骨だからって聞いた。サメの軟骨を食べたら、がんの予防になったりして!

メル美サプリでも見かけるよね。でも、本当に効くなら、病院の治療でも使われてるはず…。
こんにちは、Dr. Taro です。 今回の都市伝説は、「サメはがんにならない。だからサメの軟骨はがんに効く」説です。米国国立がん研究所(NCI)のがん情報「PDQ:軟骨(ウシとサメ)」、2004年に学術誌『Cancer Research』に出た論文、そして2つの臨床試験(人でたしかめる研究)の論文をもとにまとめました。
結論から
- NCI の PDQ によると、「サメはがんにならない」はまちがった思いこみ。サメの悪性腫瘍(がん)は少ないものの、見つかっている
- がんの患者さんで、サメ軟骨の製品とプラセボ(にせ薬)をくらべた臨床試験では、生存期間ものびず、生活の質もよくならなかった
- 米国食品医薬品局(FDA)は、軟骨をがんの治療として承認していません
話のはじまり:「サメはがんにならない」
- NCI の患者さん向けの PDQ によると、ウシとサメの軟骨は、30年以上前からがんなどの治療として研究されてきました
- きっかけのひとつは、骨のほとんどが軟骨でできているサメはがんにならない、と信じられていたことです
- 軟骨には血管がありません。そこで、軟骨の中に「新しい血管ができるのをじゃまする物質」があるのではないか、と考えられました。がんは大きくなるのに新しい血管が必要なので、それを止めればがんが育たないのでは、という発想です
- PDQ によると、実際に1980年代には、サメの軟骨に血管ができるのをじゃまする物質があることが報告されています

メル美試験管の中で「血管をじゃまする物質がある」ことと、「食べたらがんに効く」ことは、別の話なんだね。
でも、サメにもがんはある
- NCI の医療者向けの PDQ はこう書いています:「がんの治療としての軟骨への関心は、骨格がおもに軟骨でできているサメはがんにならない、というまちがった思いこみから生まれた」「サメの悪性腫瘍の報告はまれだが、さまざまながんが見つかっている」
- 米ジョンズ・ホプキンス大学のオストランダーらは、2004年に『Cancer Research』に「サメ軟骨、がん、そして広がる疑似科学の脅威」という論文を書きました
- この論文は、サメとその仲間の悪性と良性の腫瘍を報告しています。下等動物の腫瘍の記録(Registry of Tumors in Lower Animals)にあった、それまで発表されていなかった例や、1匹に2つのがんがあったサメ2匹もふくまれます
- 論文は、軟骨に血管や浸潤をじゃまする物質が見つかったことから「サメ軟骨ががんを治す」と考えるのは「論理の飛躍」で、これまでの科学的な証拠は、加工しただけの軟骨の抽出物が効くことも、効く成分ががん細胞までとどいて消すことも支持していない、と書いています
人でたしかめた臨床試験の結果
- 進行した乳がん・大腸がん(2005年、『Cancer』):米国メイヨー・クリニックなどのグループが、標準の治療を受けている患者さんを、サメ軟骨の製品をのむ組と、見た目もにおいも同じプラセボをのむ組に分けました(どちらをのんでいるか本人も医師も知らない二重盲検)。分析できた83人で、生存期間に差はなく、生活の質がよくなるきざしもありませんでした
- 手術できない進行した肺がん(ステージIIIの非小細胞肺がん)(2010年、『Journal of the National Cancer Institute』):抗がん剤と放射線の治療に、サメ軟骨の液体の抽出物(AE-941)を足す組と、プラセボを足す組をくらべました。379人で、生存期間の中央値はAE-941の組が14.4か月、プラセボの組が15.6か月で、差はありませんでした。論文は「サメ軟骨からつくった製品を、肺がんの治療に使うことを支持しない」と結論しています
- NCI の PDQ も、査読のある学術誌にのった、サメ軟骨とプラセボをくらべた試験(上の83人の試験)で、生活の質にも生存率にも差がなかったとまとめています

プレ男ちゃんとにせ薬とくらべたら、差がなかったんだ…。
サプリとしては売られているけれど
- NCI の PDQ によると、米国では軟骨の製品が栄養補助食品(サプリメント)として売られています。サプリメントは病気の治療・予防・治癒を目的としたものではなく、FDA は売る前に安全性や効果を承認していません
- PDQ は、製品によっては作られた時期(ロット)ごとに中身や量がちがうことがあるので、ある臨床試験の結果は、その試験で使ったロットにしか当てはまらないかもしれない、とも書いています
- サメ軟骨で報告された副作用には、吐き気、嘔吐、おなかのけいれんや張り、便秘、血圧の低下、血糖や血液中のカルシウムの上昇、だるさなどがあり、肝炎の報告も1例ある、と PDQ は書いています
- NCI の PDQ は、補完代替療法を考えているがんの患者さんは、ほかの治療と同じように医師・看護師・薬剤師と相談するように、と書いています。治療と一緒に使うと、標準の治療に影響したり、害になったりするものもあるからです
- オストランダーらの論文は、サメ軟骨をがんの治療として広めたことが、サメの数の大きな減少と、患者さんが効果のあるがん治療から離れてしまうことの2つの悪い結果につながった、と指摘しています

サメにもがんは見つかっていて、サメ軟骨の製品をプラセボとくらべた臨床試験では、生存期間はのびませんでした。がんの治療中にサプリメントを使いたいときは、治療をやめずに、まず担当の医師や薬剤師に相談してください。
まとめ
- 「サメはがんにならない」はまちがい。サメのがんは少ないが、見つかっている(NCI の PDQ、オストランダーら 2004年)
- 軟骨に血管をじゃまする物質があることと、食べてがんに効くことは別の話
- 進行がんの83人、肺がんの379人の臨床試験で、サメ軟骨の製品はプラセボと差がなかった
- FDA は軟骨をがんの治療として承認していない。サプリメントは治療の代わりにならない
- 「体にいい」と広まった話のマジレスは、水素水で活性酸素を消して健康に?、うま味調味料(MSG)は体に悪い?もどうぞ
参考文献
- National Cancer Institute. Cartilage (Bovine and Shark) (PDQ®)–Patient Version(2017年9月7日更新). https://www.cancer.gov/about-cancer/treatment/cam/patient/cartilage-pdq (閲覧日:2026年10月22日)
- National Cancer Institute. Cartilage (Bovine and Shark) (PDQ®)–Health Professional Version(2018年8月23日更新). https://www.cancer.gov/about-cancer/treatment/cam/hp/cartilage-pdq (閲覧日:2026年10月22日)
- Ostrander GK, Cheng KC, Wolf JC, Wolfe MJ. Shark cartilage, cancer and the growing threat of pseudoscience. Cancer Research. 2004;64(23):8485-8491. doi:10.1158/0008-5472.CAN-04-2260. PubMed. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/15574750/ (閲覧日:2026年10月22日)(要旨による)
- Loprinzi CL, Levitt R, Barton DL, et al. Evaluation of shark cartilage in patients with advanced cancer: a North Central Cancer Treatment Group trial. Cancer. 2005;104(1):176-182. doi:10.1002/cncr.21107. PubMed. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/15912493/ (閲覧日:2026年10月22日)(要旨による)
- Lu C, Lee JJ, Komaki R, et al. Chemoradiotherapy with or without AE-941 in stage III non-small cell lung cancer: a randomized phase III trial. Journal of the National Cancer Institute. 2010;102(12):859-865. doi:10.1093/jnci/djq179. PMC2902826. https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC2902826/ (閲覧日:2026年10月22日)
この記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の診断・治療に代わるものではありません。 気になる症状や不安がある場合は、医療機関にご相談ください。