【テクノロジー解説】細胞の「水だけ通す門」アクアポリン:腎臓は1日に約170Lの原尿から水をとりもどし、尿は約1Lに。神経の電気信号を生むイオンの通り道も、原子のレベルで見えた(2003年ノーベル化学賞)
人の体の約70%は塩水です。細胞は、水や塩(イオン)をどうやって出し入れしているのでしょうか。2003年のノーベル化学賞は、細胞の膜にある「通り道」を明らかにした2人に贈られました。アグレ博士は1988年、水だけを通すタンパク質を見つけ、「アクアポリン(水の穴)」と名づけました。腎臓では、1日に約170Lつくられる原尿の水の多くが、アクアポリンを通って血液にもどり、最終的に尿は1日約1Lになります。マキノン博士は1998年、カリウムイオンの通り道の立体構造を示し、神経の電気信号が生まれるしくみの理解を進めました。

プレ男水を飲むと、体のすみずみまで行きわたるのはなんで?細胞には「ドア」でもあるの?

メル美水だけを通す「門」があるんだって。ノーベル賞の発見だよ。
こんにちは、Dr. Taro です。 「テクノロジー解説」、今回は細胞の膜の通り道です。2003年のノーベル化学賞の発表と一般向け解説をもとにまとめました。
体の約70%は塩水
- わたしたちの体の約70%は塩水です
- 細胞は、水と塩(イオン)を、膜を通して出し入れしています
- そのしくみがわかると、腎臓が尿から水をとりもどすしくみや、神経の電気信号が生まれて伝わるしくみを、分子のレベルで理解できます
水だけを通す門「アクアポリン」
- 細胞には水専用の通り道がある、と19世紀なかばから考えられていました。1950年代なかばには、水分子だけを通す穴を通って水がすばやく出入りすることがわかり、イオンを通さないフィルターがあるはずだと考えられていました
- ピーター・アグレ博士は、赤血球の膜のタンパク質を調べていて、1988年にあるタンパク質をとりだし、その1年ほどあとに、それこそがさがし求められていた水の通り道だと気づきました
- このタンパク質がある細胞は、水を吸ってふくらみました。博士はこれを「アクアポリン(水の穴)」と名づけました
- 2000年には、アクアポリンの立体構造の画像が発表され、水分子1つ1つが通るようすを追えるようになりました
なぜ水だけが通れる?
- 水分子は、通り道の壁の原子がつくる電気の場に合わせて向きを変えながら、細い通り道をすりぬけます
- プラスの電気をもつ水素イオン(オキソニウムイオン)は、通り道の真ん中のプラスの電荷ではね返され、通れません
- 細胞の内と外の水素イオンの濃さのちがいは、細胞がエネルギーをためるしくみの土台なので、ここでもれないことがとても大切です

プレ男水は通すけど、イオンは門前ばらい。かしこい門だね!
腎臓で大活躍
- 腎臓では、1日に約170Lの原尿(尿のもと)がつくられます
- その水の多くは、しくみをかえて血液にもどされ、最終的に体の外に出る尿は1日約1Lになります
- 原尿が通る細い管で、水の約70%がアクアポリン(AQP1)を通って血液にもどり、管の終わりのほうで、さらに約10%が似たアクアポリン(AQP2)でもどります
- アクアポリンは、細菌、植物、ほ乳類にもある、大きなタンパク質の家族です
もう1つの通り道「イオンチャネル」
- ロデリック・マキノン博士は1998年、カリウムイオンの通り道(カリウムチャネル)の立体構造を明らかにし、研究者たちをおどろかせました
- 細胞の合図で開いたり閉じたりする通り道を、イオンが流れるようすを「見る」ことができるようになりました
- 神経細胞では、となりの細胞からの化学的な合図でイオンの通り道が開き、さらにほかの通り道が次々に開閉して、数ミリ秒のうちに電気信号が神経の表面を伝わっていきます
- これらの研究は、腎臓、心臓、筋肉、神経などの多くの病気の理解にとって、とても重要です

アクアポリンは、細胞の膜にある水だけを通す門です。腎臓では1日約170Lの原尿から水をとりもどし、尿は約1Lになります。イオンの通り道の構造も原子のレベルで明らかになりました。
つながるテクノロジー
- 細胞の中の宅配便:細胞の中の「宅配便」
- 細胞の表面のセンサー:ドキッとしたとき、細胞はどうやってアドレナリンを受けとる?
- 温度や圧力で開く通り道:温度と触覚のセンサーの発見

プレ男170Lが1Lになるなんて、腎臓のリサイクル力すごい。

メル美赤血球の研究から、大発見につながったんだね。
細胞のエネルギー通貨をつくる回転モーターは、細胞のエネルギー通貨「ATP」をつくる回転モーターへ。
まとめ
- 体の約70%は塩水。細胞は膜の通り道で水とイオンを出し入れ
- 1988年、アグレ博士が水だけを通すアクアポリンを発見
- 水は通し、プラスのイオンははね返すしくみ
- 腎臓では1日約170Lの原尿から水をとりもどし、尿は約1L
- マキノン博士は1998年にカリウムチャネルの構造を解明(神経の電気信号)(2003年ノーベル化学賞)
参考文献
- The Royal Swedish Academy of Sciences. Press release: The Nobel Prize in Chemistry 2003. NobelPrize.org. https://www.nobelprize.org/prizes/chemistry/2003/press-release/ (閲覧日:2026年10月10日)
- NobelPrize.org. The Nobel Prize in Chemistry 2003 — Popular information. https://www.nobelprize.org/prizes/chemistry/2003/popular-information/ (閲覧日:2026年10月10日)
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