
プレ男南の島で、夜のうちに人が消える…!?しかも、跡が何も残らないの?

メル美岡本綺堂には、日本の外が舞台の怪談もあるんだね。読んでみよう。
今回は、岡本綺堂の怪談「麻畑の一夜」(あさばたけのいちや)です。青空文庫の本文で読みました。初出は1920年(大正9年)9月、国文堂書店の『慈悲心鳥』です。本文中の「」の言葉は、青空文庫の本文からの引用です。
マニラ麻の島へ
- 語り手のA君が、友人の高谷君から聞いた話です。高谷君は、製麻の事業の用向きで、南洋のフィリピン群島を、ふた月あまり視察してきました
- 9月の末、高谷君がボートで小さな島に近づくと、堤の上の男が、日本語で「さあ、投げますよ」と、長い麻縄を投げてくれました
- 男は丸山俊吉。3年ほど前からこの島で、日本人と現地の人をあわせて70人ばかりの労働者の監督をしていました。芭蕉に似た大きな葉の麻畑が、風になびいています
- 丸山の小屋では、天草生まれの18、9の青年・弥坂勇造が、かいがいしく働いていました。人なつかしい二人は、大切にしまっていた葡萄酒まで出して、高谷君をもてなします
人が消える
- 丸山は、顔をしかめて言いました。「人間がなくなるんです。先月からもう五人ばかり行くえ不明になりました」
- 4、5年前にも同じことがつづき、住んでいたオランダ人はみな立ちのいて、島はしばらく無人島のようになっていた。今度は、日本人も消えはじめた
- いつも夜なかから夜明けまでのうちにいなくなる。猛獣か、山奥にひそむ何者かと思ってさがしても、「死骸も残っていない。骨も残っていない。血のあとも残っていない」
- しかも、日本人は七、八人ずつ、現地の人は十人、二十人とかたまって寝ているのに、だれもいなくなるのに気づかないのです

プレ男大勢で寝てるのに、気づかないなんて…。こわすぎる。
ドイルの小説を思い出す
- 高谷君は、コナン・ドイルの小説を思い出します。大西洋のある島の耕作地で人が消え、骨も血のあとも残らない。調べると、大きな黒猩々のしわざだった——
- けれど丸山は言います。毎晩見まわって、威嚇にピストルを撃ったこともある。猛獣は火をおそれるというので、12か所もかがり火をたいた晩にも、日本人はさらわれた
- 猿でも、うわばみでも、鰐でもなさそうでした
- 島の大きな河は急流で、むこう岸は藪。怪物が藪から来るなら、この河をわたらなければならない。河上には、流れのゆるい湖のような場所があり、みんなそこで水をくみ、洗濯をしていました
- 高谷君は、正体を見とどけようと、丸山・勇造と3人だけで小屋に泊まることにしました。ほかの労働者は、夜は小舟で隣の島へ泊まりに行っていたのです
雷雨の夜
- 日が暮れると、滝をならべたような激しい驟雨がおそってきました。雷が鳴り、真っ青な稲妻が小屋のなかまで光ります
- 夜ふけ、丸山が突然さけびました。「おい、勇造、勇造……弥坂……弥坂……。どこへ行く」
- 隣の部屋をのぞくと、勇造の姿がありません。二人がピストルを手に雷雨のなかへ飛びだすと、稲妻に照らされた麻畑のあいだに、勇造のうしろ姿が見えました
- 勇造は河の堤のほうへ行くようでした。二人は名を呼びながら追いますが、ぬれた草にすべって転び、そのあいだに勇造の姿は見えなくなりました
- 雨がやみ、明るい月が水を照らしても、勇造は見つかりませんでした

メル美勇造さんは、自分から歩いていったんだね…。
「眼に見えないもの」
- 別れぎわ、丸山は言いました。怪物は猿でも、うわばみでもない。「たしかに人間の眼には見えないものです」「眼に見えないその怪物に誘い出されて、みんなあの河へ吸い込まれてしまうのです」
- 船にもどってこの話をすると、乗りくんでいた船医は、怪物は動物でも人間でもなく、一種の病気——熱病のたぐい——だろう、と言いました。あの流れのゆるい水辺にひそむ熱病にかかり、頭がおかしくなって、自分から河へ身を投げるのではないか、と
- ※これは物語のなかの船医の意見で、医学的な説明ではありません
- 高谷君は言います。「理屈はまあどうにでも付くもので」「ドイルの小説の猩々ならば、またそれを退治する工夫もあるだろうが、眼にみえないものではどうにも仕方がない。果たしてそれが一種の病気であるとしても、僕はやはり怖ろしい」

岡本綺堂の「麻畑の一夜」で、船医は怪物の正体を熱病のたぐいだろうと考えますが、高谷君は、それが病気であるとしても、眼に見えないものはやはりおそろしいと語ります。
まとめ
- 「麻畑の一夜」は岡本綺堂の怪談。初出は1920年9月『慈悲心鳥』
- 南洋の小さな島の麻畑で、夜のうちに人が消える。骨も血のあとも残らない
- 高谷君はドイルの小説の黒猩々を思い出すが、かがり火も効かない
- 雷雨の夜、青年勇造は麻畑を抜けて河のほうへ消えた
- 丸山は「人間の眼には見えないもの」、船医は熱病のたぐいと考える。それでも、見えないものはおそろしい
- 岡本綺堂の木曽の旅人、白髪鬼、妖婆もどうぞ
参考文献
- 岡本綺堂. 麻畑の一夜. 青空文庫. https://www.aozora.gr.jp/cards/000082/card45478.html (閲覧日:2026年10月12日)
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