
プレ男「一枚、二枚……一枚たりない」って、井戸から出てくる幽霊の話だよね。こわい!

メル美岡本綺堂の小説『番町皿屋敷』では、それが、せつない恋の話になってるんだって。
今回は、岡本綺堂の小説『番町皿屋敷(ばんちょうさらやしき)』です。青空文庫の本文(底本:『怪奇・伝奇時代小説選集13 四谷怪談 他8編』)で読みました。読みは青空文庫の図書カードによります。
※この話には、人が手討ち(斬られて)になる場面、切腹の場面があります。この記事では、くわしい描写はひかえています。
主な人物
| 青山播磨 | 番町に屋敷をもつ、七百石の旗本。旗本の集まり「白柄組」(かしらは水野十郎左衛門)の一人で、町奴(町人の侠客)とけんかばかりしている |
| お菊 | 四谷生まれの腰元。播磨のそば近くに仕える |
| 十太夫 | 青山家の用人 |
| 真弓 | 播磨の伯母。播磨に結婚をすすめている |
あらすじ1:恋と縁談
- 明暦のはじめの春。播磨とお菊の恋は深まり、播磨は「きっとお前を妻にする」とお菊にちかっていました
- ところが、伯母の真弓から、播磨に縁談が持ちこまれます。お菊の小さな胸は、安まりませんでした
- 「播磨を疑うな」——お菊はその言葉にすがりながらも、もやもやした日々を送ります
あらすじ2:十枚の高麗皿
- 青山家には、10枚そろった、めずらしい高麗焼の皿がありました。いつのころからか、「この皿をすべて割ると、家がほろびる」という伝説が生まれ、1枚でも割った召使いは命がない——それが家の代々の掟でした
- ある日、水野十郎左衛門たちが屋敷にまねかれ、播磨は、その皿を料理に使うよう用人の十太夫に言いつけます
あらすじ3:わざと割った皿
- お菊は、その皿の1枚を「あやまって」まっ二つに割ってしまいます。播磨は少しもしからず、「そちを手討になると思うか」「割れた皿は、井戸の底へ沈めてしまえ」とやさしく言いました
- お菊は、男の心が少しもかわっていないとわかって、感激の涙をこぼします。でも同時に、そんな美しい男の心をためそうとした自分の罪が、おそろしくなりました
- そこへ十太夫がかけこんできます。下女のお仙が、お菊が皿を台所の柱に打ちつけて、わざと割ったのを見ていたのです
- 播磨に問われたお菊は、うそをつきとおすことができず、「わざとお皿を打割りました」と白状しました

プレ男家宝の皿を割っても許してくれるか、試したんだ…。
皿ではなく、心を
- 播磨は、のこりの皿を自分の手で割ってみせ、自分が皿を惜しんでいるのではないことを家来たちにしめします。お菊を成敗するのは「ほかに仔細があって」のことでした
- お菊は、誠のある男の心を疑った自分の大きな罪を、十分に自覚していました。そして、一生に一度の恋をした男に、いつわりがなかったとたしかめた以上、死んでも満足だと思ったのです
- お菊は、播磨に手討ちにされ、その亡きがらは井戸の底に沈められました。播磨は、割った皿も、すべて井戸に投げこませます。綺堂は「青山の家重代の宝も、播磨が一生の恋も、すべてこの井戸の深い底に葬られてしまった」と書いています
井戸から立つすがた
- そのあと播磨は、町奴とのけんかにあけくれます。白柄組はやがておとろえ、かしらの水野十郎左衛門は、切腹を命じられました
- 伯母の真弓にさとされ、切腹を決めた雨の夜。播磨が暗い庭を見ると、井戸の中から青白い火がもえあがり、菊の模様の振袖を着た若い女のすがたが、まぼろしのようにうかびあがりました。世間にいわれる「皿屋敷の幽霊」を、播磨はその夜はじめて見たのです
- 「菊。顔を見せい」。幽霊が静かに顔をあげると、それは生きていたころとかわらない、怨みも妬みも呪いも知らないような、美しい清らかな顔でした
- 「菊。播磨も今行くぞ」——お菊の魂は、自分をうらんでいない。そう思うと、播磨は力強くなったのでした

メル美こわい幽霊じゃなくて、うらんでいない、きれいな顔の幽霊…。かなしい恋の話だね。

岡本綺堂の『番町皿屋敷』で、播磨が切腹を決めた夜に見たお菊の幽霊は、怨みも妬みも呪いも知らないような、美しい清らかな顔をしていました。
まとめ
- 『番町皿屋敷』は、岡本綺堂が、皿屋敷の怪談を恋の物語として書いた小説
- 旗本青山播磨と腰元お菊は恋仲。でも播磨に縁談がもちこまれる
- 1枚でも割れば手討ちになる家宝の高麗皿を、お菊は男の心をためすため、わざと割った
- 播磨は、皿ではなく疑われたことをゆるせず、お菊を手討ちにし、井戸に沈めた
- 切腹の夜、井戸からあらわれたお菊は、うらみのない清らかな顔だった
- 江戸の怪談は四谷怪談、牡丹燈籠、小泉八雲の葬られたる秘密もどうぞ
参考文献
- 岡本綺堂. 番町皿屋敷(底本:『怪奇・伝奇時代小説選集13 四谷怪談 他8編』). 青空文庫. https://www.aozora.gr.jp/cards/000082/card45617.html (閲覧日:2026年10月10日)
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