美容クリニックの「カウンセラー」が治療法を決めるのは違法:2025年8月、厚生労働省が違法な例を通知。看護師だけの施術、チャットだけの処方、「絶対安全」「No.1」の広告も
厚生労働省は2025年8月15日の局長通知「美容医療に関する取扱いについて」で、美容医療の違法な例を整理しました。医師でない「カウンセラー」が、患者の希望を聞いて埋没法か切開法かなど具体的な治療法を提案・決定するのは医師法違反。医師の指示なく看護師だけで脱毛・HIFUなどを行うこと、メールやチャットだけでの診断・処方、カルテを作らないことも違反(のおそれ)とされています。2025年12月公布の改正医療法では、美容医療を行う医療機関に定期報告の義務も。受ける側が知っておきたいポイントをまとめました。
目次

メル美二重の相談に行ったら、最初にカウンセラーさんが「あなたは切開法がいいですね」って、プランを決めてくれたの。お医者さんとは、手術の直前に少し話しただけ…。

プレ男えっ、それって普通なの?ぼくもヒゲ脱毛のとき、チャットだけで薬を出してもらったことがあるけど…。
こんにちは、Dr. Taro です。 「美容医療」から、今回は美容クリニックで「やってはいけないこと」の話です。厚生労働省が2025年8月15日に出した通知「美容医療に関する取扱いについて」(医政発0815第21号)をもとにまとめました。受ける側が知っておくと、おかしいことに気づける内容です。
なぜ通知が出たの?
- 厚生労働省の「美容医療の適切な実施に関する検討会」は、2024年11月22日に報告書をまとめました
- 報告書では、患者が「カウンセラー」とだけ相談して決めた治療内容を、そのまま医師が行っている例などが指摘されました
- 問題のある例が法律違反かどうかの判断の基準や、保健所が立入検査できる場合がはっきりせず、指導や取り締まりが難しいこともありました
- そこで厚生労働省は、警察庁・消費者庁とも協議したうえで、法律の解釈を整理した通知を出しました
1. 「カウンセラー」が治療法を決めるのは違法
- 医師や看護師などの免許がない人が「カウンセラー」などと名乗って、医療行為や診療に関するカウンセリングをする例が報告されています
- 免許のない人ができるのは、医業にあたらない範囲だけです
- 通知では、免許のない人が、次のようなことを業として行うと、医師法第17条違反になるとしています
- 患者の希望(例:一重を二重にしたい)や、望む処置(例:埋没法ではなく切開法がいい、ダウンタイムが少ないのがいい)を聞いて、具体的な治療方法を選んで提案したり、決めたりすること
- 料金の説明という形をとっていても、実質的にその人に合わせた医学的な判断を伝えていれば、医行為にあたります
- 脱毛、アートメイク、HIFU(ハイフ)の施術などの医行為
- ビデオ通話・電話・メール・チャットなどで、その人に合わせた医学的な判断を伝えること(診察・診断・処方など)

メル美「料金の説明」のつもりでも、わたしに合う治療法を決めていたら、医行為になるんだ。
- 二重の手術の種類とリスクは埋没法と切開法のちがい、HIFU はHIFU(ハイフ)は医師しか行えないの記事もどうぞ
- 通知では、「○○メイク」「○○タトゥー」などアートメイク以外の名前で提供されていても、まゆ毛・アイライン・リップなどを針で色素を入れて描く行為は、医行為にあたるとしています(アートメイクは「医療」)
2. 医師の指示なしに、看護師だけで施術するのは違法
- 看護師などは、医師の指示のもとで、診療の補助ができます
- 通知では、次のようなことは医師法第17条・保健師助産師看護師法第37条に違反するとしています
- 看護師などが、医師の指示なく、脱毛、アートメイク、HIFUなどの医行為をすること
- 看護師などが、診察をすること
- 看護師などが、具体的な治療方法を選んで提案・決定すること
3. メール・チャットだけの診察・処方は「違反のおそれ」
- 医師は、診察しないで治療や処方をしてはいけないことになっています(医師法第20条)
- 国の「オンライン診療の適切な実施に関する指針」では、オンライン診療はリアルタイムの映像と音声を使うこととされ、文字・写真・録画動画のやりとりだけで終わらせてはいけないとされています
- 通知では、メールやチャットだけで、対面と同じくらいの診察をしないまま診断・処方することは、指針に違反し、医師法第20条違反となるおそれがある行為としています

プレ男チャットだけで薬が届いたのは、本当はダメなやり方だったのかも…。
4. カルテは作って5年保存。開示も求められる
- 医師は、診療したら遅れずにカルテ(診療録)に書き、5年間保存しなければなりません(医師法第24条)
- 立入検査で、カルテが適切に作られていない例が見つかっています。カルテを作っていない、決められた項目を満たしていない場合は、医師法第24条違反です
- 患者がカルテの開示を求めたら、医療機関は原則として応じる必要があるとされています。トラブルのときは、自分の受けた治療の記録を確かめることができます
5. 「絶対安全」「No.1」の広告は違反
通知では、医療広告の違反の例として、次のようなものをあげています。
- 虚偽広告:「絶対に安全」「必ず綺麗になる」といった医学上ありえない表現、加工・修正した術前術後の写真
- 比較優良広告:ほかより優れているという広告、「日本一」「No.1」などの最上級の表現、著名人との関係を強調する広告
- 誇大広告:科学的な根拠が乏しいのに、特定の治療に誘導する
- 体験談:患者の主観的な体験談を、医療機関への誘引のために紹介する
- 術前術後の写真だけ:治療の内容、費用、リスク・副作用などの詳しい説明がない

具体的な治療方法を選んで決めるのは、医師の仕事です。医師でない人だけで治療法が決まっていくときや、「絶対安全」「必ずきれいになる」といった説明には、注意しましょう。
法律も変わった:美容医療を行う医療機関に定期報告の義務
- 2025年12月12日に公布された「医療法等の一部を改正する法律」(令和7年法律第87号)には、美容医療を行う医療機関の定期報告義務が入りました
- 改正法では、美容を目的とした治療を行う病院・診療所(対象は厚生労働省令で定める)の管理者は、医療の安全を確保するための指針の策定などの措置の状況などを都道府県知事などに報告しなければなりません。都道府県知事などは、そのうちとくに必要な事項を公表し、報告をしない・うその報告には、報告や是正を命じることができます
- 検討会の報告書では、安全管理の実施状況、専門医資格の有無、相談窓口の設置状況などを都道府県などに報告してもらい、そのうち国民に必要な情報を公表する仕組みが提案されています
- この部分の施行は、公布後2年以内に政令で定める日とされています。報告の中身や公表のしかたは、今後決まります
受ける側ができること
- 治療法を決めるのは医師。医師の診察を受け、リスクや副作用、ほかの方法の説明を医師から聞いて、自分で選ぶ
- その日に契約・施術しない。持ち帰って考える(美容医療の契約とクーリング・オフ)
- 受ける前のチェックは美容医療を受ける前の4つのチェック、男性の相談の例は男性の美容医療トラブルの記事もどうぞ
- 困ったときは、消費者ホットライン 188や、都道府県などの医療安全支援センターに相談を

メル美次は、お医者さんにしっかり診てもらってから決めるね。
まとめ
- 厚生労働省は2025年8月15日の通知で、美容医療の違法な例を整理した
- 医師でないカウンセラーが、具体的な治療法を提案・決定するのは医師法違反
- 医師の指示なく看護師だけで脱毛・HIFUなどをするのも違反
- メール・チャットだけの診断・処方は医師法違反のおそれ
- カルテは5年保存、開示も求められる。「絶対安全」「No.1」の広告は違反
- 改正医療法で、美容医療を行う医療機関に定期報告の義務(公布後2年以内に施行)
参考文献
- 厚生労働省医政局長. 美容医療に関する取扱いについて(令和7年8月15日 医政発0815第21号). https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=00tc9325&dataType=1&pageNo=1 (閲覧日:2026年10月4日)
- 厚生労働省医政局. 美容医療の適切な実施に関する検討会 報告書(概要)(令和6年11月28日 第113回社会保障審議会医療部会 資料2). https://www.mhlw.go.jp/content/10801000/001341000.pdf (閲覧日:2026年10月4日)
- 厚生労働省医政局. 医療法等の一部を改正する法律の成立について(報告)(令和7年12月8日 第122回社会保障審議会医療部会 資料4). https://www.mhlw.go.jp/content/10801000/001606327.pdf (閲覧日:2026年10月4日)
- 厚生労働省. 「医療法等の一部を改正する法律」の公布及び一部施行について(通知)(令和7年12月12日). https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=00tc9622&dataType=1&pageNo=1 (閲覧日:2026年10月4日)
この記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の診断・治療に代わるものではありません。 気になる症状や不安がある場合は、医療機関にご相談ください。