【テクノロジー解説】天の川銀河の中心には何がある?見えないのに、太陽の約400万倍の重さ。星の動きを30年近く追いかけ、空気のゆらぎを打ち消す鏡で見つけた「超巨大ブラックホール」(2020年ノーベル物理学賞)
光さえ抜けだせないブラックホール。アインシュタイン自身は、ブラックホールが本当にあるとは考えていませんでした。2020年のノーベル物理学賞は、ブラックホールができることを数学で証明したペンローズ博士と、天の川銀河の中心にある、見えないのにとても重い天体を見つけたゲンツェル博士、ゲズ博士に贈られました。2つのグループは1990年代はじめから、銀河の中心「いて座A*」のまわりの星の動きを追いかけ、太陽系ほどの大きさに太陽約400万個分の重さがつまっていることを示しました。地球の空気のゆらぎを打ち消す特別な鏡などの技術が、観測を支えました。

プレ男ブラックホールって、光も出てこないんでしょ。見えないのにどうやって見つけたの?

メル美まわりの星の動きから、「そこに何かがある」ってわかったんだって。
こんにちは、Dr. Taro です。 「テクノロジー解説」、今回はブラックホールです。2020年のノーベル物理学賞の発表と一般向け解説をもとにまとめました。
アインシュタインも信じなかった
- ブラックホールは、入ったものをすべてつかまえる、とても重い天体です。光さえ抜けだせません
- アインシュタインの一般相対性理論から考えられるものですが、アインシュタイン自身は、ブラックホールが本当にあるとは考えていませんでした
- 1965年1月、アインシュタインの死から10年後、イギリスのロジャー・ペンローズ博士は、巧みな数学で、ブラックホールは本当にできることを証明し、そのようすをくわしく説明しました。その中心には、知られている自然の法則がすべて通用しなくなる「特異点」がかくれています
- ブラックホールのまわりには「事象の地平面」というベールのような境界があり、ものは一方向にしかこえられません。その大きさは、太陽と同じ重さなら直径約3km、地球と同じ重さなら直径わずか9mmです
天の川銀河の中心をのぞく
- わたしたちの天の川銀河は、直径約10万光年の平たい円盤の形で、何千億個もの星があり、太陽もその1つです
- 銀河の中心には「いて座A*」という場所があり、すべての星がそのまわりを回っています
- ラインハルト・ゲンツェル博士とアンドレア・ゲズ博士は、1990年代はじめから、それぞれ天文学者のグループをひきいて、いて座A*のまわりの明るい星の軌道を、どんどん正確に調べてきました
- 2つのグループの結果は一致しました。見えないのにとても重い天体が、まわりの星をものすごい速さでふり回していて、太陽系ほどの大きさに、太陽約400万個分の重さがつまっていたのです
- たとえば「S2(S-O2)」という星は、銀河の中心のまわりを16年たらずで一周します
- 現在わかっている説明は、超巨大ブラックホールだけです

プレ男太陽系くらいの大きさに、太陽400万個分!?
観測を支えたテクノロジー
- 銀河の中心は、大量のガスやちりの雲にかくれています。赤外線の望遠鏡や電波の技術で、はじめて中心の星を写せるようになりました
- 2つのグループは、チリの「VLT」やハワイ・マウナケア山の「ケック天文台」など、世界最大級の望遠鏡を使いました。ケック天文台の鏡は直径約10mで、36枚の六角形の鏡を1枚ずつ動かして、星の光にピントを合わせます
- 望遠鏡の上の空気には、まわりより熱かったり冷たかったりする空気のかたまりがあり、レンズのように光を曲げて、像をゆがめます
- そこで、空気のゆらぎを打ち消す薄い鏡をとりつけ、ゆがんだ像をなおす技術(補償光学)が、観測を大きく進めました
- 2人は30年近く、銀河の中心の星を追いかけてきました

天の川銀河の中心には、見えないのに太陽約400万個分の重さの天体があります。まわりの星の動きを30年近く追いかけ、空気のゆらぎを打ち消す技術などで見つけた、超巨大ブラックホールです。
宇宙のテクノロジーつながり
- ブラックホールの衝突を「時空のゆれ」でとらえる:重力波ってなに?
- 恒星のゆれで見つけた:太陽系の外の惑星はどう見つける?
- 宇宙からやってくる粒子:ニュートリノってなに?

プレ男見えないものを、まわりの動きで見つけるって探偵みたい。

メル美30年近く追いかけ続けたのもすごいね。
宇宙の膨張が加速しているという発見は、宇宙の膨張は「加速」していたへ。
X線で宇宙を見る望遠鏡のはじまりは、宇宙を「X線」で見るへ。
まとめ
- ペンローズ博士(1965年):一般相対性理論から、ブラックホールが本当にできることを証明
- ゲンツェル博士、ゲズ博士:1990年代はじめから、天の川銀河の中心いて座A*のまわりの星を追跡
- 太陽系ほどの大きさに太陽約400万個分の重さ。いまの説明は超巨大ブラックホールだけ
- 赤外線望遠鏡、世界最大級の望遠鏡、空気のゆらぎを打ち消す鏡が観測を支えた
- 2020年ノーベル物理学賞
参考文献
- The Royal Swedish Academy of Sciences. Press release: The Nobel Prize in Physics 2020. NobelPrize.org. https://www.nobelprize.org/prizes/physics/2020/press-release/ (閲覧日:2026年10月10日)
- The Royal Swedish Academy of Sciences. Popular science background: Black holes and the Milky Way’s darkest secret (PDF). https://www.nobelprize.org/uploads/2020/10/popular-physicsprize2020-1.pdf (閲覧日:2026年10月10日)
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