
メル美姉が生後6か月の赤ちゃんを連れて遊びに来るの。離乳食に、体によさそうなハチミツを少し入れてあげようかな。

プレ男ちょっと待って!赤ちゃんにハチミツはダメって、どこかで聞いたことがあるよ。
こんにちは、Dr. Taro です。 今回は、ボツリヌス症の話です。厚生労働省の「ハチミツを与えるのは1歳を過ぎてから。」と、食品安全委員会のファクトシート「ボツリヌス症」(2021年3月30日更新)、メールマガジン「ボツリヌス症について その2 Q&A」(2019年1月配信)をもとにまとめました。赤ちゃんのまわりの大人に知っておいてほしい内容です。
ボツリヌス菌ってどんな菌?
- 土、川、海に広くいる細菌で、芽胞(がほう)という殻をつくります
- 芽胞は、酸素の少ない状態になると目を覚まして増え、ボツリヌス毒素を出します。この毒素が神経をまひさせます
- 芽胞の中には熱にとても強いものがあり、ふつうの加熱や調理では死にません
- 一方、毒素そのものは熱にそれほど強くなく、80℃で20分、または100℃で1〜2分の加熱で働きを失います
- なお、美容医療やわきの汗の治療で使われるボツリヌストキシンは、ボツリヌス菌がつくる毒素を薬として使えるようにしたものです(ボツリヌストキシン治療)
1歳未満の赤ちゃんにハチミツを与えない
- 1歳未満の赤ちゃんがハチミツを食べると、乳児ボツリヌス症にかかることがあります
- 大人の腸では、ボツリヌス菌がほかの腸内細菌との競争に負けるので、ふつうは何も起こりません。ところが赤ちゃんは腸内環境がまだ整っておらず、菌が腸の中で増えて毒素を出してしまうのです
- ボツリヌス菌は熱に強いので、ハチミツを加熱しても防げません
- 厚生労働省は、1歳未満の赤ちゃんには、ハチミツやハチミツ入りの飲料・お菓子などを与えないよう呼びかけています
- 1歳以上の人にとっては、ハチミツはリスクの高い食品ではありません

メル美加熱しても防げないんだ…。ハチミツ入りのお菓子やジュースも気をつけないと。
実際に起きていること
- 2017年2月、離乳食として市販のジュースにハチミツを混ぜたものを飲んでいた生後5か月の赤ちゃんが発症し、亡くなりました
- 厚生労働省によると、国内では、保健所が食中毒として報告した例が1986年以降3例、医師が乳児ボツリヌス症として報告した例が1999年以降16例あります。米国では毎年100例以上報告されています
- ハチミツを食べていない例(国内では井戸水)も報告されています
- 市販のハチミツ30検体を調べた調査では、2検体(6.7%)からボツリヌス菌が見つかっています(2003年のとりまとめ)
赤ちゃんの症状
- 潜伏期間ははっきりしませんが、3〜30日と推定されています
- 便秘で気づくことが多く(多くは3日以上続く)、元気がない、おっぱい・ミルクを飲む力が弱い、泣き声が小さい、首のすわりが悪くなるなどが出ます
- まぶたが下がる、首や体、手足の力が抜けてぐったりし、横隔膜までまひすると人工呼吸器が必要になります
- ほとんどは適切な治療で治りますが、まれに亡くなることもあります

ボツリヌス菌は熱に強く、ハチミツを加熱しても乳児ボツリヌス症は防げません。1歳未満の赤ちゃんには、ハチミツやハチミツ入りの食品を与えないようにしましょう。
大人のボツリヌス食中毒
原因になりやすい食べもの
- ほとんどは自家製の食品で起きています。酸素のない状態の食品が原因になりやすく、瓶詰・缶詰・真空パックなどの容器包装詰め食品、保存食(とくに自家製の瓶詰・缶詰)などです
- 日本では、北海道・東北を中心に、生魚や米飯を自然発酵させる「いずし」による中毒が多く起きていました。真空パックの辛子レンコン、サトイモの缶詰などの例もあります
- 1951年〜2012年4月に120事例が報告されています
症状:8〜36時間後に、目や口のまひ
- 潜伏期間は、ふつう8〜36時間(早いと5〜6時間、遅いと2〜3日)
- はじめに吐き気・嘔吐・下痢。次に、めまい・頭痛をともなう全身の違和感、視力の低下、かすみ目、ものが二重に見えるなどの目の症状、口の渇き、話しにくい、飲みこみにくいなどのまひが出ます
- 進むと、おなかの張り、便秘、尿が出ない、強い脱力、手足のまひが起こり、呼吸困難で亡くなることもあります
- 日本では、抗毒素療法が始まった1962年以降、致死率は約30%から約4%に下がりました
予防のポイント
- ボツリヌス菌は、3℃未満、水分の少ない状態、強い酸性(pH4.6未満)では、増えることも毒素を作ることもできません
- 野菜や果物などの原材料をよく洗う
- 冷蔵・冷凍で保存する。包装に「冷蔵」「10℃以下で保存してください」などの表示があるものは、必ず冷蔵
- 自家製の瓶詰・保存食では、pHの調整などをする
- 毒素は熱に弱いので、食べる前の十分な加熱が予防に有効
- 市販の缶詰・瓶詰・真空パックでも、膨らんでいる・異臭がするものは食べない

プレ男「要冷蔵」の真空パック、常温の棚に置きっぱなしにしてたかも。すぐ冷蔵庫に入れるよ。

メル美赤ちゃんの離乳食にハチミツは使わない。姉にも伝えておくね。
- 作り置きの料理の食中毒はウエルシュ菌と二日目のカレー、おにぎりは黄色ブドウ球菌とおにぎりの記事もどうぞ
まとめ
- 1歳未満の赤ちゃんに、ハチミツやハチミツ入りの食品を与えない。加熱しても防げない
- 赤ちゃんの便秘、飲む力が弱い、泣き声が小さい、首のすわりが悪いなどに注意
- 大人のボツリヌス食中毒は、自家製の瓶詰・缶詰、真空パック、いずしなどで起こる
- 8〜36時間で、かすみ目・ものが二重に見える・飲みこみにくいなどのまひ
- 「要冷蔵」は必ず冷蔵、食べる前に十分に加熱、膨らんだ・異臭のする缶詰や真空パックは食べない
参考文献
- 厚生労働省. ハチミツを与えるのは1歳を過ぎてから。. https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000161461.html (閲覧日:2026年10月4日)
- 食品安全委員会. ファクトシート ボツリヌス症(作成日:平成23年11月24日、最終更新日:令和3年3月30日). https://www.fsc.go.jp/factsheets/index.data/20210330botulism.pdf (閲覧日:2026年10月4日)
- 食品安全委員会. 【読み物版】生活の中の食品安全 −ボツリヌス症について− その2 ◆Q&A◆(平成31年1月25日配信). https://www.fsc.go.jp/e-mailmagazine/mailmagazine_h3101_r2.html (閲覧日:2026年10月4日)
この記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の診断・治療に代わるものではありません。 気になる症状や不安がある場合は、医療機関にご相談ください。