【テクノロジー解説】宇宙に「物質」が残ったのはなぜ?自然の「対称性の破れ」。南部陽一郎博士、小林誠博士、益川敏英博士の日本人3人が受賞。予言されたクォークの「3つ目の家族」は、のちの実験で見つかった(2008年ノーベル物理学賞)
アルファベットの「A」は鏡に映しても同じですが、「Z」はちがいます。2008年のノーベル物理学賞は、自然の小さな世界での「対称性の破れ」を明らかにした3人に贈られました。南部陽一郎博士は1960年に「自発的対称性の破れ」を数学で表し、素粒子の標準模型の土台になりました。小林誠博士と益川敏英博士は1972年、物質と反物質のあいだの対称性の破れを説明するには、クォークに少なくとも3つの家族が必要だと予言しました。予言されたクォークはのちの実験で見つかり、2001年にはつくば市の実験装置「Belle」なども対称性の破れを確かめました。

プレ男2008年のノーベル物理学賞、日本人が3人も受賞したんだよね。「対称性の破れ」ってなに?

メル美宇宙に物質が残ったなぞにも関係してるらしいよ。
こんにちは、Dr. Taro です。 「テクノロジー解説」、今回は対称性の破れです。2008年のノーベル物理学賞の発表と一般向け解説をもとにまとめました。とても奥の深い分野なので、発表に書かれていることにしぼって紹介します。
「対称性」と「破れ」
- 身のまわりにも、対称性とその破れがあります。アルファベットの「A」は鏡に映しても変わりませんが、「Z」は変わります
- 素粒子の理論では、鏡の対称性(左右を入れかえても同じ)、電荷の対称性(粒子と反粒子を入れかえても同じ)、時間の対称性の3つが考えられてきました
- 1956年、リー博士とヤン博士が、弱い力では鏡の対称性が破れているかもしれないと考え、数か月後には実験で、放射性のコバルト60がこわれるようすが鏡の対称性にしたがわないことがわかりました
- わたしたちの世界が完全に対称でないのは、ミクロの世界での対称性からのずれのためだと考えられています
南部陽一郎博士:「自発的対称性の破れ」
- 南部陽一郎博士(シカゴ大学、東京生まれ)は、早くも1960年、素粒子物理の「自発的対称性の破れ」を数学で表しました
- 自発的対称性の破れは、ごちゃごちゃに見える表面の下に、自然の秩序をかくしています
- 南部博士の理論は、物質のいちばん小さな部品と、自然の4つの力のうち3つをまとめた「標準模型」のすみずみに生かされています

プレ男1960年に考えた理論が、素粒子物理の土台になったのか!
小林誠博士・益川敏英博士:クォークは「3つの家族」
- 陽子や中性子は、それぞれ3つのクォークからできています。電子とクォークが、すべての物質のいちばん小さな部品です
- 1964年、粒子の実験で、物質と反物質のあいだの対称性の破れが、思いがけず見つかりました
- 小林誠博士(高エネルギー加速器研究機構=KEK)と益川敏英博士(京都大学)は1972年、この破れを標準模型の中で説明しました。そのためには、クォークに少なくとも3つの家族が必要だと予言したのです
- これは大胆な考えでしたが、予言されたクォークは、のちの実験でつぎつぎに見つかりました。チャームクォーク(1974年)、ボトムクォーク(1977年)、そして最後のトップクォーク(1994年)です
- 2001年には、アメリカ・スタンフォードの「BaBar」と、茨城県つくば市の「Belle」という2つの実験装置が、それぞれ別々に対称性の破れを確かめ、小林博士と益川博士の説明が完全に確かめられていきました
宇宙に物質が残ったなぞ
- 約140億年前のビッグバンで、物質と反物質が同じだけできたなら、おたがいに消しあって、何も残らなかったはずです
- でも実際には、反物質100億個につき、物質が1個多いという、わずかなずれがありました。この対称性の破れのおかげで、わたしたちの宇宙は残ったと考えられています
- ただし、それがどのように起きたのかは、まだわかっていません(2008年当時)

南部博士は「自発的対称性の破れ」を、小林博士と益川博士はクォークの「3つの家族」を予言しました。宇宙に物質が残ったのも、わずかな対称性の破れのおかげだと考えられています。
宇宙と素粒子のつながり
- 体をすりぬける粒子:ニュートリノってなに?
- 天の川銀河の中心:天の川銀河の中心には何がある?
- 量子の世界の不思議:「量子力学」ってなに?

プレ男100億分の1のずれがなかったら、ぼくたちもいなかったのか…。

メル美完ぺきじゃないから、世界があるんだね。
ものに重さがあるしくみは、ものに「重さ」があるのはなぜ?へ。
まとめ
- 「A」は鏡に映しても同じ、「Z」はちがう。自然の小さな世界にも対称性の破れがある
- 南部陽一郎博士(1960年):自発的対称性の破れ。標準模型の土台に
- 小林誠博士・益川敏英博士(1972年):クォークに3つの家族が必要と予言。のちの実験で発見
- 2001年、つくば市のBelleなどが対称性の破れを確認
- 宇宙に物質が残ったのも、わずかな対称性の破れのおかげと考えられている(2008年ノーベル物理学賞)
参考文献
- The Royal Swedish Academy of Sciences. Press release: The Nobel Prize in Physics 2008. NobelPrize.org. https://www.nobelprize.org/prizes/physics/2008/press-release/ (閲覧日:2026年10月10日)
- The Royal Swedish Academy of Sciences. Popular information: The Nobel Prize in Physics 2008 (PDF). https://www.nobelprize.org/uploads/2018/06/popular-physicsprize2008.pdf (閲覧日:2026年10月10日)
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