
プレ男「カルメン」って、情熱的な女の人の代名詞みたいに使われるよね。

メル美もとは小説なんだって。しかも、カルメンを愛した男が、牢の中で語る話なの。
今回は、フランスの作家プロスペル・メリメの小説『カルメン』です。Project Gutenberg にある英訳(メアリー・ロイド訳)で読みました。本文中の「」の言葉は、その英訳をこの記事で日本語にしたものです。
作品の中では、カルメンたちロマの人々を、当時の呼び方で「ジプシー」とよんでいます。この記事でも、作品のことばを紹介するところでは、そのままにしています。
※この作品には、決闘や殺人、恋人を殺す結末がえがかれています。
山の中の見知らぬ男
- 小説は4章に分かれています。第1章と第2章の語り手は、古代ローマの戦い「ムンダの戦い」の戦場がどこだったかを調べに、スペインのアンダルシアを旅しているフランス人の学者です
- コルドバで雇った案内人と山へ入った語り手は、泉のほとりで、ひとりの男に出会います。葉巻を分けあい、同じ宿に泊まった夜、案内人がそっと告げます。あの男は「ホセ・ナバロ、アンダルシアでいちばん名の知れた山賊」だ、と。語り手は、男を起こして逃がしてやります
- 何日かのち、コルドバで、語り手は夕暮れの川べりで不思議な女と出会います。占いをしてもらおうとついていった家に、マントに顔をかくした男が飛びこんできました。あのホセでした
- 数か月後、コルドバにもどった語り手は、ホセが捕らえられ、いくつもの殺人の罪で処刑を待っていると聞きます。牢をたずねた語り手に、ホセは自分の身の上を語りはじめます。それが第3章です
たばこ工場の前で
- ホセは、スペイン北部バスク地方の出身。故郷でけんかをして村にいられなくなり、騎兵連隊に入って伍長になり、まもなく軍曹になれると言われていました
- ある日、ホセはセビリアのたばこ工場の衛兵になります。工場では四、五百人の女たちが葉巻を巻いていて、昼食のあと女たちがもどってくるのを、若い男たちがからかいに集まってきます
- そこへ、口にアカシアの花をくわえた女があらわれます。それがカルメンでした。ホセが相手にしないでいると、カルメンは口から花をとって、ホセに投げつけました
- その日の午後、工場の中でけんかが起きます。カルメンが、言いあいになった女工の顔を、葉巻のはしを切るナイフで切りつけたのです。ホセはカルメンを捕らえ、牢へ連れていくことになります

メル美出会ったその日に、もう事件を起こしてるんだね…。
「わざと、うしろにたおれた」
- 連行の途中、カルメンはホセにバスクのことばで話しかけ、自分も同じ地方の出だと言います(ホセは、「あの女はそのときもうそをついていた。いつもうそばかりだった」と語っています)。ホセは心を動かされ、命令を忘れてしまいます
- 細い路地にさしかかったとき、カルメンはホセの胸をこぶしでつきます。「わたしは、わざと、うしろにたおれた」。カルメンは逃げさり、ホセは仲間の追跡をさまたげさえしました
- ホセは伍長の位をとりあげられ、ひと月の牢に入れられます。牢の窓から通りを見ても、彼女ほどの女はいない。乾いても香りの残るアカシアの花のにおいをかいでしまう——
- やがて、牢にパンが差し入れられます。中には、小さなやすりがしこまれていました。ホセは逃げずに刑期をつとめましたが、心はもうカルメンからはなれられなくなっていました
上官を斬り、山賊に
- カルメンにさそわれて会いに行った夜、同じ連隊の中尉があらわれます。もみあいの中で、ホセは中尉を剣でつらぬいてしまいます
- ホセは軍を逃げ、カルメンのつてで密輸の仲間に入ります。そして、カルメンにはもう夫がいることを知ります。片目の男、ガルシア。カルメンが手を回して牢から出させた男でした
- ガルシアとの仲はうまくいかず、ある晩、カード遊びのいかさまをきっかけに、ホセはガルシアとナイフで決闘し、討ちとります。「ぼくはカルメンを愛している。そして、ただひとりの男でいたいんだ」
- ホセはカルメンの「夫」になりますが、カルメンは言います。「わたしは、うるさく言われたくないし、何より命令されたくない。好きなようにする自由がほしいの」

プレ男カルメンのために、どんどん後もどりできないところへ行ってしまうんだ。
闘牛士ルーカス
- 仲間の多くが兵士に殺され、ホセは傷を負ってもなお、密輸と山賊の稼業をつづけます
- グラナダで闘牛があったとき、カルメンは、腕のいいピカドール(馬上から槍で牛をつく闘牛士)のルーカスのことばかり話すようになります。やがて、二人がいっしょにいるところを見たという知らせが入ります
- ホセはカルメンに、アメリカへわたって、まっとうに暮らそうと言います。けれどカルメンの心は、もう変わっていました
人けのない谷で
- ホセは、山の庵の修道士に、「まもなく神の前に出るかもしれない魂」のためのミサをたのみます。もどると、カルメンは逃げずに、鉛をとかして占いをしていました
- 「いっしょに来るか」と聞くと、カルメンは馬のうしろに乗ります。そして言いました。「ついていくわ。死ぬまでも。でも、もうあなたとは暮らさない」
- 人けのない谷で、ホセはひざまずき、泣きながら、もう一度愛してくれ、何でもすると頼みます。カルメンは答えます。「あなたはまだわたしを愛している。だからわたしを殺したいのよ。……でもカルメンはいつまでも自由。自由に生まれて、自由に死ぬの」
- カルメンは、ホセにもらった指輪をはずして草むらに投げすてました。ホセはナイフで、カルメンの命をうばいます
- 森にほうむられたいと言っていたカルメンを、ホセは森にうめ、さがしだした指輪と小さな十字架をいっしょに入れます。そしてコルドバへ馬を走らせ、自首しました。遺体の場所は、言いませんでした
- ホセの告白は、こう結ばれます。「かわいそうな子だ。あんなふうに育てた、ジプシーたちが悪いのです」
第4章
- 最後の第4章は、語り手の学者が、作品の中で「ジプシー」とよばれる人々の暮らしやことばについて、自分の見聞と考えを書きつづった章になっています

『カルメン』のホセは、最後の谷で「すべては過去のことだ」と言ってやりなおそうとしますが、カルメンは「あなたはまだわたしを愛している。だからわたしを殺したいのよ」と答えます。作品は、それを処刑を待つホセ自身の告白としてえがいています。
まとめ
- 『カルメン』は、フランスの作家プロスペル・メリメの小説。この記事は Project Gutenberg の英訳で紹介した
- 語り手の学者が、アンダルシアで山賊ホセと、不思議な女カルメンに出会う。処刑を待つ牢の中で、ホセが自分の過去を語る
- セビリアのたばこ工場で、アカシアの花を投げつけられた日から、ホセの転落が始まる
- 彼女を逃がして罰を受け、上官を斬り、密輸と山賊の仲間になり、カルメンの夫ガルシアを決闘で討つ
- 闘牛士ルーカスに心を移したカルメンは、「カルメンはいつまでも自由」と言い、ホセは彼女を殺して自首する
- 嫉妬の悲劇はシェイクスピア『オセロー』、愛と殺意の独白は芥川龍之介『袈裟と盛遠』、美しく底知れない女の物語は坂口安吾『桜の森の満開の下』もどうぞ
参考文献
- Prosper Mérimée. Carmen(Lady Mary Loyd 訳). Project Gutenberg. https://www.gutenberg.org/ebooks/2465 (閲覧日:2026年10月22日)
この記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の診断・治療に代わるものではありません。 気になる症状や不安がある場合は、医療機関にご相談ください。