めずらしい性感染症:痛い潰瘍の「軟性下疳」と、クラミジアの特別な型による「鼠径リンパ肉芽腫(LGV)」。海外での接触や、直腸の症状に注意
性器に痛い潰瘍ができる軟性下疳と、クラミジアの特殊な型(L1〜L3)で起こる鼠径リンパ肉芽腫(LGV)は、どちらもあまり見かけない性感染症です。米国CDCによると、軟性下疳は世界的に減っているもののアフリカの一部やカリブ海地域では起こりうること、LGVは直腸の炎症(血や粘液の混じった分泌物、肛門の痛みなど)として出ることが多いとされます。特徴と、ほかの性感染症の検査が大切な理由をまとめました。

プレ男海外旅行から帰ってきて、性器に痛いただれができた…。ヘルペスとか梅毒以外にも、何かあるのかな。

メル美日本ではあまり見ないけど、海外では注意したい性感染症もあるみたい。
こんにちは、Dr. Taro です。 今回は、あまり見かけない性感染症、軟性下疳(なんせいげかん)と鼠径(そけい)リンパ肉芽腫(LGV)です。米国CDCの治療ガイドラインと日本皮膚科学会のQ&Aをもとにまとめました。
軟性下疳
- 軟性下疳菌(Haemophilus ducreyi)という細菌による性感染症です
- 日本皮膚科学会によると、感染から2〜7日後に、男性では亀頭やそのまわり、女性では陰唇や腟の入り口に、ふちがギザギザの深い潰瘍ができ、痛みが強いのが特徴です
- CDCによると、深く痛い潰瘍と、押すと痛む、膿をもった足のつけ根のリンパ節のはれがそろうと軟性下疳を考えます(リンパ節のはれは半数未満)
- 米国では減っていて、世界的にも減少していますが、アフリカの一部やカリブ海地域ではまだ起こりうるとされています
- 軟性下疳は、HIVがうつる・うつされるリスクを高めます

メル美梅毒の潰瘍は痛くないことが多いけど、軟性下疳は痛いんだね。
検査と治療
- 特別な培地で菌を見つける必要がありますが、どこでもできる検査ではありません。そのため、梅毒やヘルペスではないことを確かめたうえで、見た目などから診断することがあります
- 抗菌薬で治ります。治療を始めて3日ほどで症状が良くなり、7日ほどで見た目も改善するのがふつうです。大きな潰瘍は治るまで2週間以上かかることもあります
- 診断されたら、HIVの検査も受けましょう
- 症状が出る前の10日間にセックスをした相手は、症状がなくても診察と治療が必要です
鼠径リンパ肉芽腫(LGV)
- クラミジアの特別な型(L1、L2、L3)による性感染症です。ふつうのクラミジア(A〜K型)が軽い、または症状のない感染を起こすのに対し、LGVは強い炎症を起こします(クラミジア)
- 日本皮膚科学会によると、感染から3〜12日後に性器に小さなぶつぶつや水ぶくれが出て、2〜6週後に片側の足のつけ根のリンパ節が腫れ、強く痛みます
- CDCによると、直腸への感染による直腸炎が最も多いあらわれ方で、血や粘液の混じった分泌物、肛門の痛み、便秘、熱、しぶり腹などが起こり、炎症性の腸の病気とまちがわれることがあります(直腸炎)
検査と治療
- LGVの型を調べる検査はどこでもできるわけではないため、症状と、クラミジアの検査(症状のある場所)などから判断し、疑わしければ先に治療を始めることがあります
- 治療は抗菌薬を3週間飲むのが基本で、98.5%以上が治るとされています
- 診断されたら、HIV、淋菌、梅毒などの検査も受けましょう

プレ男めずらしい病気だからこそ、海外での心当たりは医師にちゃんと伝えないとね。
受診するときは
- 海外でのセックス、アナルセックスなど、心当たりを医師に正直に伝えてください。めずらしい病気ほど、その情報が診断の手がかりになります
- 性器の潰瘍は、梅毒、性器ヘルペスのことが多く、自分では見分けられません(陰部の潰瘍)

軟性下疳やLGVはめずらしい性感染症ですが、海外での接触やアナルセックスの心当たりがあれば、医師に伝えてください。ほかの性感染症の検査も大切です。
まとめ
- 軟性下疳:感染2〜7日後に痛い深い潰瘍。足のつけ根のリンパ節が膿をもってはれることも。HIVのリスクを高める
- LGV:クラミジアの特別な型。リンパ節の痛いはれ、直腸炎(血の混じった分泌物・肛門の痛み)
- どちらも抗菌薬で治る。HIVなどほかの性感染症の検査も
- 海外やアナルセックスの心当たりは医師に伝える
参考文献
- Centers for Disease Control and Prevention. Chancroid. Sexually Transmitted Infections Treatment Guidelines, 2021. https://www.cdc.gov/std/treatment-guidelines/chancroid.htm (閲覧日:2026年9月29日)
- Centers for Disease Control and Prevention. Lymphogranuloma Venereum (LGV). Sexually Transmitted Infections Treatment Guidelines, 2021. https://www.cdc.gov/std/treatment-guidelines/lgv.htm (閲覧日:2026年9月29日)
- 公益社団法人日本皮膚科学会. 皮膚科Q&A 性感染症(Q7 どんな症状で、始まりますか?). https://qa.dermatol.or.jp/qa24/q07.html (閲覧日:2026年9月29日)
この記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の診断・治療に代わるものではありません。 気になる症状や不安がある場合は、医療機関にご相談ください。