【テクノロジー解説】地球温暖化の予測はどうやって?真鍋淑郎博士は1960年代、コンピューターで大気を40kmの「柱」にして計算し、CO2が2倍で気温が2℃以上上がると示した。いまの気候モデルの土台に(2021年ノーベル物理学賞)
天気予報は10日先でもむずかしいのに、なぜ何十年も先の気候を予測できるのでしょうか。2021年のノーベル物理学賞は、日本生まれの真鍋淑郎博士と、ドイツのハッセルマン博士らに贈られました。真鍋博士は1960年代、大気を地表から40kmの1本の柱にたとえた気候モデルをつくり、二酸化炭素が2倍になると地表の気温が2℃以上上がることを示しました。ハッセルマン博士は、変わりやすい天気と長い期間の気候をむすびつけ、気温の上昇が人間が出す二酸化炭素によるものだと示す「指紋」の方法を開発しました。

プレ男来週の天気もはずれるのに、50年後の地球の気温がわかるって、ふしぎじゃない?

メル美日本生まれの真鍋さんが、それでノーベル賞をとったんだよね。
こんにちは、Dr. Taro です。 「テクノロジー解説」、今回は気候モデルです。2021年のノーベル物理学賞の発表と一般向け解説をもとにまとめました。
2021年のノーベル物理学賞
- 2021年のノーベル物理学賞は、「複雑な物理のしくみ」を理解するための先駆的な研究に贈られました
- その半分は、真鍋淑郎博士(1931年、日本の新宮生まれ)とクラウス・ハッセルマン博士(ドイツ)に、「地球の気候を物理的にモデル化し、変動を定量化し、地球温暖化を確かに予測した」ことに対して贈られました
- もう半分は、乱れた物質などにかくれたパターンを見つけたジョルジョ・パリージ博士(イタリア)に贈られました
真鍋博士:大気を「1本の柱」にして計算した
- 真鍋博士は1950年代、戦争で荒れた日本をはなれてアメリカにわたった若い研究者の一人でした
- 1960年代、真鍋博士は地球の気候の物理モデルの開発をリードしました。太陽と地球の放射のバランスと、空気が上下に動く対流による熱の運び、水の循環による熱を、はじめていっしょに考えた研究者です
- 計算を現実的な量にするため、大気を地表から40kmの高さの1本の柱(1次元)にしぼりこみました。それでも、ガスの量を変えてためすのに、何百時間もの貴重なコンピューターの時間が必要でした
- その結果、酸素や窒素は地表の気温にほとんど影響しないのに、二酸化炭素ははっきり影響することがわかりました。二酸化炭素が2倍になると、気温は2℃以上上がりました(1967年の論文では、2倍で2.36℃上昇、半分で2.28℃低下)
- 当時のコンピューターはいまより何十万倍も遅く、モデルは単純でしたが、大事な特徴を正しくとらえていたとされています。この研究が、いまの気候モデルの土台になりました

プレ男60年近く前に、CO2が2倍で2℃以上って計算してたのか!
ハッセルマン博士:「犬の散歩」と「指紋」
- 天気はカオス(ほんの少しのちがいが大きなちがいになる)で、10日より先の天気をあてるのはむずかしいことです
- 真鍋博士の約10年後、ハッセルマン博士は、変わりやすい天気と長い期間の気候をむすびつけるモデルをつくりました。なぜ天気がカオスでも気候のモデルが信頼できるのか、という問いに答えたのです
- 一般向け解説は、これを犬の散歩にたとえています。犬はリードの先で、前後左右に走りまわります(=天気の変化)。それでも、犬の足あとから、飼い主が歩いているか、どれくらいの速さか(=気候)を読みとれるのか、という問題です
- ハッセルマン博士は、自然の現象と人間の活動が気候に残す「指紋」を見分ける方法も開発しました。この方法で、大気の気温の上昇が人間の出す二酸化炭素によるものだと示されました

真鍋淑郎博士は1960年代、大気を1本の柱にたとえた気候モデルで、二酸化炭素が2倍になると気温が2℃以上上がることを示しました。この研究が、いまの気候モデルの土台になっています。
地球を見守る技術つながり
- 宇宙から雲を見る:気象衛星「ひまわり」ってなに?
- 地球規模の問題を国際協力で解決した例:フロンとオゾン層
- 大きな計算を支えるコンピューターの基地:データセンターってなに?

プレ男「犬の足あとから飼い主の歩き方を読む」って、わかりやすいたとえだね。

メル美単純にしても大事なところをはずさない、っていう考え方もすてき。
化学反応をコンピューターで再現する技術は、化学の実験を「コンピューターの中」でへ。
まとめ
- 2021年ノーベル物理学賞:真鍋淑郎博士、ハッセルマン博士(気候)、パリージ博士(複雑な系)
- 真鍋博士は1960年代、大気を40kmの1本の柱にした気候モデルで、CO2が2倍で2℃以上の気温上昇を示した
- それがいまの気候モデルの土台に
- ハッセルマン博士は、天気と気候をむすびつけ、人間の影響を見分ける「指紋」の方法を開発
- 気温の上昇が人間の出す二酸化炭素によるものだと示された
参考文献
- The Royal Swedish Academy of Sciences. Press release: The Nobel Prize in Physics 2021. NobelPrize.org. https://www.nobelprize.org/prizes/physics/2021/press-release/ (閲覧日:2026年10月7日)
- The Royal Swedish Academy of Sciences. Popular science background: They found hidden patterns in the climate and in other complex phenomena (PDF). https://www.nobelprize.org/uploads/2021/10/popular-physicsprize2021-2.pdf (閲覧日:2026年10月7日)
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