陰部の赤み・ただれが長引く…湿疹やいんきんたむしではなく「乳房外パジェット病」のことも:陰嚢や大陰唇などにできるまれな皮膚がん。日本では70歳代に多く、男性にやや多い。多くはゆっくり進み、早く見つければ手術で治ることが多い
陰部の赤み、ただれ、かゆみがなかなか治らない——それは湿疹やカビ(いんきんたむし)ではなく、まれな皮膚がん「乳房外パジェット病」のことがあります。日本皮膚科学会などの「乳房外パジェット病診療ガイドライン2025」によると、日本では年間約1,050人が新たに診断され、70歳代がピークで、アジアでは男性にやや多い(男女比1.5〜1.7:1)とされます。陰部にもっとも多く、男性は陰嚢、女性は大陰唇に多くできます。湿疹との区別が大切で、診断には皮膚の一部をとる検査(生検)が必要です。

プレ男おじいちゃんが、陰部の赤いただれが何年も治らないって。いんきんたむしの薬を塗っても変わらないらしい……。

メル美性病かと心配してるみたい。でも、ずっと治らないなら、ほかの病気のこともあるのかな。
こんにちは、Dr. Taro です。 今回は、陰部の赤み・ただれが長引くときに知っておきたい「乳房外パジェット病」の話です。日本皮膚科学会・日本皮膚悪性腫瘍学会の「乳房外パジェット病診療ガイドライン2025」(日皮会誌135巻1号)をもとにまとめました。皮膚がん全体については、顔の「テカテカしたほくろ」や「治らない湿疹」の記事も見てください。
どんな病気?
ガイドラインによると、
- 外陰部、肛門のまわり、わきの下など、アポクリン腺(においの汗を出す腺)が多い皮膚にできる皮膚がんです
- 乳がんの一種の「乳房パジェット病」とは別の病気です
- 陰部にもっとも多く、次に肛門のまわり、わきの下の順です。男性は陰嚢(いんのう)、女性は大陰唇にできることが多いとされています
どれくらいの人がかかる?
ガイドラインによると、
- とてもまれな皮膚がんで、日本の全国がん登録では、2016年に1,045人、2017年に1,057人が新たに診断されました(人口10万人あたり年に約0.8人)
- 診断されるのは高齢の人が多く、日本では70歳代がピークです
- アジアでは男性にやや多く(男女比1.5〜1.7:1)、欧米では女性に多いと報告されています
見た目:湿疹とまちがえやすい
ガイドラインによると、
- ふつうは赤み(紅斑)として現れます。色が白く抜けた部分(脱色素斑)や、境目のはっきりしない赤み、ただれ(びらん)があったり、かゆみがあったりします
- 湿疹との区別が大切です。赤みのふちに白く抜けた部分があるのは、乳房外パジェット病の特徴の一つで、湿疹との区別に役立つとされています
- 陰部はもともと色が濃いので、病変の境目がわかりにくいことが多いとされています
- 進むと、赤みの中にしこり(結節)ができます
ダーモスコピー(皮膚を拡大して見る検査)の所見を比べた報告でも、湿疹、皮膚の真菌症(いんきんたむしなど)、ボーエン病などとの区別が問題になっています(股部白癬(いんきんたむし))。

陰部の赤みやかゆみの多くは、湿疹やカビ、かぶれです。でも、薬を塗っても長く治らないときは、皮膚科で相談を。性病ではないかと心配で受診をためらっていた人も、遠慮なく。
診断と治療
ガイドラインによると、
- 診断を確かめるには、皮膚の一部をとって調べる検査(生検)が必須です
- 多くはゆっくり進み、診断されたときにはがん細胞が皮膚の表面の層(表皮)の中にとどまっていることが多く、見通しはよいとされています
- リンパ節への転移の可能性が低く、十分な範囲で切除できる場合は、病変を広めに切除する手術が、根治をめざす治療の第一選択とされています
- 病変の境目がわかりにくいため、手術の前に、まわりの何か所かから小さく皮膚をとって、がん細胞がない範囲を確かめること(マッピング生検)もあります
性病とのちがい
- 乳房外パジェット病は人にうつる病気ではありません
- 陰部の症状は、性感染症、湿疹、かぶれ、カビ、乾癬などさまざまな原因で起こります(陰部がかゆい、陰部がかゆい・赤い・ヒリヒリ、性病?)
- 自己判断で市販薬を塗りつづけず、長引くときは受診しましょう
まとめ
- 乳房外パジェット病は、陰部・肛門のまわり・わきにできるまれな皮膚がん
- 日本では年に約1,050人、70歳代に多く、男性にやや多い
- 湿疹やいんきんたむしとまちがえやすい。赤みのふちの白く抜けた部分が特徴の一つ
- 診断には生検が必要。多くはゆっくり進み、手術で治ることが多い
- 陰部の赤みやただれが長引くときは、皮膚科へ
参考文献
- 皮膚がん診療ガイドライン策定委員会(乳房外パジェット病診療ガイドライングループ). 皮膚がん診療ガイドライン第4版 乳房外パジェット病診療ガイドライン2025(日本皮膚科学会・日本皮膚悪性腫瘍学会). 日皮会誌 135(1): 1-36, 2025(PDF). https://www.dermatol.or.jp/uploads/uploads/files/guideline/Paget%E2%80%99s2025.pdf (閲覧日:2026年10月10日)
この記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の診断・治療に代わるものではありません。 気になる症状や不安がある場合は、医療機関にご相談ください。
