【テクノロジー解説】核融合発電はいまどこまで来た?米国のレーザー核融合は2022年に「点火」、2025年には入れたエネルギーの約4倍に。欧州JETは0.21mgの燃料で69MJ。日本は「2030年代の発電実証」をめざす
「夢のエネルギー」とよばれてきた核融合が、ここ数年で大きく前進しています。米国ローレンスリバモア国立研究所のレーザー核融合施設NIFは、2022年12月、燃料に当てたレーザーより多くのエネルギーを核融合で生む「点火」に成功し、2025年4月には2.08MJのレーザーで8.6MJ(約4.1倍)を記録しました。欧州のトカマクJETは、最後の実験で0.21mgの燃料から69MJを出す世界記録を残しました。日本では2023年にJT-60SAが初プラズマを達成し、政府は2025年の戦略改定で「2030年代の発電実証」(従来は2050年ごろ)を目標にしました。ただし、電気を生む発電所はまだありません。
目次

プレ男核融合って「あと30年」ってずっと言われてる気がする。最近、何か進んだの?

メル美アメリカで「点火」に成功した、ってニュースを見たよ。
こんにちは、Dr. Taro です。 「テクノロジー解説」、今回は核融合発電の最新の進歩です。米国ローレンスリバモア国立研究所(LLNL)、欧州の EUROfusion、ITER、日本の内閣府と量子科学技術研究開発機構(QST)の公式情報をもとにまとめました。核融合のしくみと ITER の基本は核融合ってなに?へ。
核融合には2つの方式がある
- 磁場で閉じこめる方式(トカマクなど):ドーナツ形の容器の中で、1億℃をこえるプラズマを磁石で閉じこめる。ITER、JET、JT-60SA など
- レーザーで一気に圧縮する方式:小さな燃料の粒に強力なレーザーを当てて、一瞬で押しつぶして核融合を起こす。米国の NIF など
米国NIF:2022年、ついに「点火」
LLNL によると、
- 2022年12月5日、レーザー施設 NIF(国立点火施設)が、燃料に当てたレーザーのエネルギーより多くの核融合エネルギーを生む「点火」に、はじめて成功しました。2.05MJのレーザーから3.15MJの核融合エネルギーが出ました
- 192本のレーザー光線を、燃料の粒が入った小さな容器に当て、そこで生まれた X線で燃料を押しつぶします
- そのあとも点火をくり返し、記録をのばしています
| 日付 | レーザー | 核融合エネルギー |
|---|---|---|
| 2022年12月5日 | 2.05MJ | 3.15MJ(はじめての点火) |
| 2024年2月12日 | 2.2MJ | 約5.2MJ |
| 2025年4月7日 | 2.08MJ | 8.6MJ(当てたエネルギーの約4.13倍、最高記録) |
| 2026年 | — | 7.9MJ(11回目の点火) |

プレ男入れたエネルギーの4倍以上!もう発電できそうじゃない?
- ただし LLNL も、家庭や会社に電気を送る、安くてシンプルなレーザー核融合には、まだ多くの科学と技術の進歩が必要だとしています
- ここでいう「何倍」は、燃料に当たったレーザーのエネルギーとくらべた数字です
レーザーの技術についてはレーザーってなに?へ。
欧州JET:最後の実験で69MJの世界記録
EUROfusion によると、
- イギリスにある欧州のトカマク JET は、最後の重水素・三重水素の実験(2023年9月から)で、1回の運転で69.26MJの熱を出す世界記録を出しました
- 使った燃料はわずか0.21mg、エネルギーは約6秒かけて出て、石炭約2kgを燃やしたのと同じ量です
- 2022年の59MJ、1997年の記録をぬりかえ、何度も同じ条件を再現できたことで、核融合の過程を理解し、コントロールできていることを示しました
- JET の実験は、ITER で使う運転方法を確かめる、大切なデータを残しました
日本:JT-60SAと「2030年代の発電実証」
- QST 那珂フュージョン科学技術研究所のトカマク JT-60SA は、2023年10月23日に初プラズマを達成しました(QST)
- 内閣府によると、日本は2023年4月に初の国家戦略「フュージョンエネルギー・イノベーション戦略」をつくり、2025年6月4日に改定しました
- 改定では、世界に先がけた2030年代の発電実証をめざすとしました。従来の政府方針は2050年ごろでした
- スタートアップをふくめた官民の研究開発の強化や、安全確保の基本的な考え方の整理(当面は放射性同位元素などの規制の法律の対象とする)も進めるとしています
ITER:研究運転は2034年から
- ITER は2024年11月、新しい計画(ベースライン)の案を示しました。研究運転の開始は2034年、重水素・三重水素での運転開始は2039年としています。はじめから、より完成に近い装置で研究をはじめる計画です

レーザー方式のNIFは2022年に点火に成功し、2025年には当てたエネルギーの約4倍を出しました。欧州のJETは0.21mgの燃料で69MJの記録を残しました。ただし、電気を生む核融合発電所はまだなく、日本は2030年代の発電実証をめざしています。
エネルギーの技術つながり
- 熱を電気に変える:ガスタービンってなに?
- 光を電気に変える:ペロブスカイト太陽電池ってなに?

プレ男「あと30年」から、「2030年代」に目標が近づいたんだね。

メル美点火はできても、電気にするまでにはまだ壁があるってことも覚えておこう。
まとめ
- 核融合には、磁場で閉じこめる方式とレーザーで圧縮する方式がある
- NIF:2022年12月に点火。2025年4月に8.6MJ(当てたエネルギーの約4.13倍)。2026年までに11回点火
- JET:最後の実験で、0.21mgの燃料から69MJの世界記録
- 日本:JT-60SA が2023年に初プラズマ。政府は2030年代の発電実証をめざす(従来は2050年ごろ)
- ITER:新しい計画案では研究運転2034年、重水素・三重水素2039年。電気を生む核融合発電所はまだない
参考文献
- Lawrence Livermore National Laboratory. Achieving Fusion Ignition. https://lasers.llnl.gov/science/achieving-fusion-ignition (閲覧日:2026年10月7日)
- Lawrence Livermore National Laboratory. Lawrence Livermore National Laboratory achieves fusion ignition(2022年12月13日). https://www.llnl.gov/article/49306/lawrence-livermore-national-laboratory-achieves-fusion-ignition (閲覧日:2026年10月7日)
- EUROfusion. Breaking New Ground: JET Tokamak’s Latest Fusion Energy Record Shows Mastery of Fusion Processes. https://euro-fusion.org/eurofusion-news/dte3record/ (閲覧日:2026年10月7日)
- 量子科学技術研究開発機構(QST)那珂フュージョン科学技術研究所. JT-60SA. https://www.qst.go.jp/site/jt60/ (閲覧日:2026年10月7日)
- 内閣府. フュージョンエネルギー・イノベーション戦略(核融合戦略). https://www8.cao.go.jp/cstp/fusion/index.html (閲覧日:2026年10月7日)
- 内閣府. 【概要】フュージョンエネルギー・イノベーション戦略(令和7年6月4日改定)(PDF). https://www8.cao.go.jp/cstp/fusion/fusion_senryakugaiyo.pdf (閲覧日:2026年10月7日)
- ITER Organization. What is ITER?(2025年1月の更新). https://www.iter.org/proj/inafewlines (閲覧日:2026年10月7日)
この記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の診断・治療に代わるものではありません。 気になる症状や不安がある場合は、医療機関にご相談ください。