
プレ男旅先の海で、きれいな蟹を見つけたら、つい持って帰りたくなるよね。

メル美その蟹が、とんでもないことを起こす話なの…。
今回は、岡本綺堂の短編「五色蟹」(ごしきがに)です。青空文庫の本文(底本:学研M文庫『伝奇ノ匣2 岡本綺堂妖術伝奇集』)で読みました。初出は不明とされています。本文中の「」の言葉は、青空文庫の本文からの引用です。
※この作品には、人が亡くなる場面があります。
五色の蟹
- 作者のもとに、読者のT君(作中では「遠泉君」)から、自分が旅先で出会った事件を書いた原稿が届いた、という形で始まります。場所は「伊豆地方」の温泉場とだけ書かれています
- 8月中旬、遠泉君は、学校を出たばかりの会社員本多と田宮(24歳)と、二流の温泉宿の下座敷に泊まります
- 海岸の崖ぞいを散歩していると、石のあいだに美しい蟹。「甲には紅やむらさきや青や浅黄の線が流れていて、それが潮水にぬれて光って、一種の錦のように美しく見えた」。本多はその一匹をマッチ箱に入れて持ちかえりました
隣の座敷の女学生
- その夜、隣の座敷で「きゃっきゃっ」と悲鳴。隣には、19か20歳ぐらいの東京の女学生4人が、暑中休暇で自炊同様に泊まっていました。湯あがりの一人の脛に、蟹がはいあがったのです
- マッチ箱は空になっていました。本多があやまりにいったのをきっかけに、7人は親しくなります
- 4人のなかで、いちばんつつましく、口をきかないのが児島亀江でした
午前2時の湯船
- 翌晩、田宮がうちあけます。ゆうべ、いやな夢で目がさめた午前2時ごろ、ひと風呂あびようと風呂場へ行くと、湯けむりの中、大きな湯船のまん中に「真っ白な女の首」がぼんやり浮かんでいた。児島亀江の顔だった
- ところが、湯に入ったとたん、ぞっと寒くなり、首は見えなくなった。けさ見ると、亀江は平気で朝ごはんを食べている——
- 本多は、湯気のなかに何か見えたのだろう、と笑いました

プレ男夜中の湯船に、女の人の首だけが浮かんで、消える…。こわすぎる!
また、蟹が
- その夜、縁側に、また五色の蟹がはいだしてきて、隣の座敷へ。女学生たちがさがすと、蟹は床の間の、児島亀江の化粧道具を入れた小さなバッグの上にうずくまっていました。本多がつかまえて、垣の外へ投げすてます
- 午前2時近く、隣の座敷から二人の女が、そっと廊下へ出ていく気配。同じ蚊帳の中で、田宮がうなされはじめます。その胸の上に、小さな蟹が乗っていました
- ほとんど同時に、風呂場から女のけたたましい悲鳴。駆けつけると、表二階の客の細君が、あがり場にたおれていました。湯の中に二人の若い女の首が浮いていたのに、湯船の前に進んだとたん、消えてしまったというのです
- 湯船をさがすと、底に女学生二人が沈んでいました。古屋為子は息をふきかえしましたが、児島亀江は助かりませんでした
「およしなさい。祟りがある」
- 為子によれば、湯につかっていると眠いような気持ちになり、だれか入ってきた気配に顔をあげようとした瞬間、となりの亀江が湯の底に沈み、自分も「何物にか曳かれたように」沈んでいった、といいます
- 警察は、偶然の事故とは見ず、為子を疑って調べはじめました
- 翌朝、海岸の岩のあいだに、また五色の蟹。遠泉君が小石を投げつけようとすると、その手をつかんだ者がいます。「あ、およしなさい。祟りがある」——60ばかりの漁師でした
- 漁師によれば、この蟹は「あばた蟹」。千年ほど昔、顔のあばたをひどく気に病んでいた女が、恋した若い男に捨てられ、来世は美しい女に生まれかわると言って、この海岸から身を投げた。女は美しく生まれかわったが、人間にはなれず、蟹になった。この蟹に手をふれた者には祟りがあり、とくに嫁入り前の若い女がこの蟹を見ると、縁遠くなるか、恋に破れる、と言い伝えられていた
- 10年ほど前にも、東京の銀行家の令嬢が、この蟹を宿へ持ちかえった翌晩、湯船の中に沈んでしまった。そのあとにも似たことが二度ばかりあった、と漁師は言いました

メル美美しくなりたいと願って、蟹に生まれかわった女の人の言い伝え…。悲しいね。
田宮の秘密
- 遠泉君は考えます。蟹をつかまえたのは本多なのに、本多には何も起きず、蟹は亀江のバッグの上に、そして田宮の胸の上に。蟹と田宮と亀江のあいだには、どんな糸がつながっているのか
- 巡査に漁師の話をすると、巡査はただ笑っていました
- 東京に帰ってからも、田宮はひと月以上ぼんやりしていました。9月の末、遠泉君はたずねます。「君はあの児島亀江という女学生と何か関係があったのか」
- 「実はかつて一度、帝劇の廊下で見かけたことがある。それが偶然に伊豆でめぐり逢ったんだ」。「そこで、君はあの女をなんとか思っていたのか」——「田宮は黙って溜め息をついていた」。物語はここで終わります

「五色蟹」の漁師は、この蟹に手をふれた者には祟りがあり、嫁入り前の若い女がこの蟹を見ると、恋に破れるなどと言い伝えられていると語ります。巡査はその話を、ただ笑って聞いていました。
まとめ
- 「五色蟹」は岡本綺堂の短編(初出不明)
- 伊豆の温泉場で、甲が紅・むらさき・青・浅黄に光る蟹をマッチ箱に入れて持ちかえる
- 蟹は隣の座敷の女学生たちのもとへ。午前2時の湯船に浮かぶ女の首
- 湯の底に沈んだ二人の女学生。児島亀江は助からなかった
- 漁師が語る「あばた蟹」の言い伝え——「およしなさい。祟りがある」
- 亀江を以前から知っていた田宮は、ただ黙って溜め息をつく
- 綺堂の穴、河鹿、兜もどうぞ
参考文献
- 岡本綺堂. 五色蟹(底本:『伝奇ノ匣2 岡本綺堂妖術伝奇集』学研M文庫、学習研究社). 青空文庫. https://www.aozora.gr.jp/cards/000082/card48027.html (閲覧日:2026年10月12日)
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