
メル美太宰治って暗いイメージがあるけど、『葉桜と魔笛』は、姉妹のやさしい話なんだって。

プレ男「魔笛」って、ちょっとこわそうな題名だけど…。
今回は、太宰治の短編『葉桜と魔笛(はざくらとまてき)』です。青空文庫の原文(底本:ちくま文庫『太宰治全集2』)で読みました。読みは青空文庫の図書カードによります。
※この話には、重い病気と、若い人の死がえがかれています。
語り手と、病気の妹
- 「桜が散って、このように葉桜のころになれば、私は、きっと思い出します」——ある老夫人が、35年前のことを語りはじめます
- 母はすでに亡く、父と「私」と妹の3人ぐらし。父は、島根県の日本海ぞいの城下町に中学校長として赴任し、一家は町はずれのお寺の離れに住んでいました
- 妹は、「私」とちがってとても美しく、かわいい子でしたが、からだが弱く、重い病気で、医者は父に「百日以内」と告げていました
- 妹は何も知らず、寝たきりでも、陽気に歌をうたったり、冗談を言ったりしています。「私」は、そのすがたを見るのがつらくてたまりませんでした
たんすの奥の手紙
- 「私」は、妹のたんすを整理していて、引き出しの奥に、緑のリボンでむすばれた30通ほどの手紙を見つけます。差出人は「M・T」という男性。表書きには、妹の友だちの女性の名前が書かれていました
- 読んでいくと、2人の恋がつづられています。でも最後の手紙で、M・Tは、妹の病気を知ると、「もうお互い忘れてしまいましょう」と、妹をすてていたのです
- 「私」は手紙をすべて焼き、だれにも言わず、胸ひとつにおさめようと決めました

プレ男病気を知ってはなれていくなんて、ひどい…。
姉が書いた手紙
- 5月なかばのある日。「ねえさん、この手紙、いつ来たの?」——妹のまくらもとに、M・Tからの新しい手紙がありました
- じつはその手紙は、妹の苦しみを見かねた「私」が、M・Tの筆跡をまねて書いたものでした。手紙には、こう書いてあります
- 「僕は、もう逃げません。僕は、あなたを愛しています。毎日、毎日、歌をつくってお送りします。それから、毎日、毎日、あなたのお庭の塀のそとで、口笛吹いて、お聞かせしましょう。あしたの晩の六時には、さっそく口笛、軍艦マアチ吹いてあげます」
- 「私」は、妹が亡くなる日まで、毎日手紙を書き、晩の6時には、こっそり塀の外で口笛をふくつもりだったのです
妹の打ち明け話
- ところが、手紙を読み終えると、妹はすんだ声で言いました。「ありがとう、姉さん、これ、姉さんが書いたのね。」
- そして、妹はさらに打ち明けます。緑のリボンの手紙は、さびしさのあまり、妹自身が書いて、自分あてに出していたものだったのです
- 「青春というものは、ずいぶん大事なものなのよ。あたし、病気になってから、それが、はっきりわかって来たの」「ああ、死ぬなんて、いやだ」
- 「私」は、胸がいっぱいになり、妹のやせたほおに自分のほおをぴったりおしつけて、そっとだきしめました

メル美姉は妹のために、妹は自分のために、ひとりで手紙を書いていたんだね…。
六時の口笛
- そのとき——低く、かすかに、でもたしかに、軍艦マアチの口笛が聞こえてきたのです。時計を見ると、6時でした
- 2人は、言いようのないおそろしさに、強くだきあったまま、庭の葉桜のおくから聞こえる、ふしぎなマアチに耳をすませました
- 「神さまは、在る。きっと、いる。」——「私」はそう信じました。妹は、それから3日目に、あまりにも静かに亡くなりました
- 年をとったいま、老夫人は、あの口笛は、となりの部屋で話を立ち聞きしていた父のしわざだったのではないかと思うこともある、と語ります。でも「やっぱり神さまのお恵みでございましょう」と

プレ男がんこなお父さんが、こっそり口笛をふいてたのかも…。それはそれで、泣ける。

太宰治の『葉桜と魔笛』で、妹は、姉が恋人のふりをして書いた手紙を読んで「ありがとう、姉さん、これ、姉さんが書いたのね」と言いました。
まとめ
- 『葉桜と魔笛(はざくらとまてき)』は、太宰治の短編。老夫人が35年前の葉桜のころを語る
- 余命百日の妹のたんすから、男性の手紙。男は病気を知って去っていた
- 姉は男のふりをして手紙を書き、「あしたの晩の六時には、口笛、軍艦マアチ吹いてあげます」
- でも妹は見ぬいていた。そして、あの手紙の束も、妹自身が書いたものだった
- 6時、本当に口笛が聞こえた。妹は3日後に亡くなる。口笛は、神さまか、それとも父だったのか
- 待つ恋の物語は夏目漱石『夢十夜』第一夜、病気と恋の物語は徳冨蘆花『不如帰(ほととぎす)』、伊藤左千夫『野菊の墓』もどうぞ
参考文献
- 太宰治. 葉桜と魔笛(底本:ちくま文庫『太宰治全集2』). 青空文庫. https://www.aozora.gr.jp/cards/000035/card42376.html (閲覧日:2026年10月10日)
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