
メル美「百年待っていて下さい」って、すごくロマンチックなセリフがある短い話、知ってる?

プレ男百年!?長すぎるよ…。でも、ちょっと読んでみたい。
今回は、夏目漱石の『夢十夜(ゆめじゅうや)』の第一夜です。青空文庫の原文(底本:『夏目漱石全集10』)で読みました。読みは青空文庫の図書カードによります。漱石については、『こころ』の記事でも紹介しています。
『夢十夜』とは
- 『夢十夜』は、「第一夜」から「第十夜」まで、10の夢の話からなる作品です
- 第一夜は、「こんな夢を見た。」という一文から始まります

夏目漱石。出典:国立国会図書館「近代日本人の肖像」(https://www.ndl.go.jp/portrait/ )
あらすじ1:「もう死にます」
- 「自分」がうでぐみをして、まくらもとにすわっていると、あおむけに寝た女が、静かな声で「もう死にます」と言います
- 女は、長い髪をまくらにしいて、ほおにはあたたかい血の色がさし、くちびるも赤い。とても死にそうには見えません
- でも女は、ぱっちりと目をあけました。大きなうるんだ目の、まっ黒なひとみのおくに、自分のすがたがあざやかにうかんでいます
- 「死ぬんじゃなかろうね」と聞きかえすと、女は「でも、死ぬんですもの、仕方がないわ」
- 「私の顔が見えるかい」と聞くと、「見えるかいって、そら、そこに、写ってるじゃありませんか」と、にこりと笑いました
あらすじ2:「百年待っていて下さい」
- しばらくして、女が言います
- 「死んだら、埋めて下さい。大きな真珠貝で穴を掘って。そうして天から落ちて来る星の破片を墓標に置いて下さい。そうして墓の傍に待っていて下さい。また逢いに来ますから」
- いつ逢いに来るのかと聞くと、
- 「日が出るでしょう。それから日が沈むでしょう。それからまた出るでしょう、そうしてまた沈むでしょう。――赤い日が東から西へ、東から西へと落ちて行くうちに、――あなた、待っていられますか」
- 「自分」がだまってうなずくと、女は声をはりあげて言いました
- 「百年待っていて下さい」
- 「百年、私の墓の傍に坐って待っていて下さい。きっと逢いに来ますから」
- 「ただ待っている」と答えると、女の黒いひとみの中の自分のすがたが、ぼうっとくずれ、女の目がぱちりと閉じました。長いまつげのあいだから、なみだがほおへ。——もう死んでいた

プレ男ひとみにうつっていた自分の姿がくずれて、死んだことがわかるんだ…。
あらすじ3:赤い日をかぞえて
- 「自分」は庭におりて、真珠貝で穴をほりました。土をすくうたびに、貝のうらに月の光がさしてきらきらします。女を入れ、やわらかい土をそっとかけました
- それから、落ちてきた星のかけらをひろって、土の上にのせます。星のかけらは丸く、長いあいだ大空を落ちてくるうちに、角がとれたのだろうと思いました
- 「自分」は苔の上にすわり、うでぐみをして、丸い墓石をながめます。女の言ったとおり、大きな赤い日が東からのぼり、西へしずむ。「一つ」とかぞえました。また日がのぼり、しずむ。「二つ」
- かぞえても、かぞえても、かぞえきれないほどの赤い日が、頭の上を通りすぎていきました。それでも百年はまだ来ない。しまいには、「女に欺されたのではなかろうか」と思いはじめます
白い百合と、暁の星
- すると、石の下から、ななめに青い茎がのびてきました。見るまに胸のあたりまでのび、茎の先の細長いつぼみが、ふっくらと花びらをひらきます。真白な百合でした
- はるか上からぽたりと露が落ちて、花はゆれます。「自分」は首を前に出して、冷たい露のしたたる白い花びらに、そっと口づけしました
- 百合から顔をはなしたひょうしに、遠い空を見ると、暁の星がたったひとつ、またたいていました
- 「百年はもう来ていたんだな」と、このとき、はじめて気がついたのです

メル美女の人は、約束どおり「百合」になって逢いに来たのかな。読む人によって、いろいろな受けとり方ができる話だね。

夏目漱石の『夢十夜』第一夜で、死んでいく女は「百年、私の墓の傍に坐って待っていて下さい。きっと逢いに来ますから」と言いのこしました。
まとめ
- 『夢十夜(ゆめじゅうや)』は、夏目漱石の、10の夢からなる作品。第一夜は「こんな夢を見た。」から始まる
- 死んでいく女は「百年待っていて下さい。きっと逢いに来ますから」
- 「自分」は真珠貝で墓をほり、星のかけらを墓じるしに、赤い日をかぞえて待った
- 墓石の下から真白な百合が咲き、暁の星を見て「百年はもう来ていたんだな」と気づく
- 漱石の作品は『こころ』、待つことの物語は太宰治『葉桜と魔笛』、明治の恋の詩は島崎藤村「初恋」、樋口一葉『十三夜』もどうぞ
参考文献
- 夏目漱石. 夢十夜(底本:『夏目漱石全集10』). 青空文庫. https://www.aozora.gr.jp/cards/000148/card799.html (閲覧日:2026年10月10日)
- 国立国会図書館. 夏目漱石|近代日本人の肖像. https://www.ndl.go.jp/portrait/datas/307 (閲覧日:2026年10月10日)
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