化膿性汗腺炎:わき・足のつけ根・陰部・おしりに、痛いしこりやうみがくり返しできる。性病ではなく、人にうつらない。日本では男性に多く、おしりに多い。診断まで何年もかかることがあるので、くり返すなら皮膚科へ
わきの下、足のつけ根、陰部、おしりに、痛いしこりやうみのかたまりがくり返しできる——それは「化膿性汗腺炎」かもしれません。日本皮膚科学会の「化膿性汗腺炎診療の手引き2020」によると、毛包に起こる慢性の炎症の病気で、半年に2回以上くり返すことが目安です。欧米では女性に多い一方、日本では男性に多く(男女比2〜3:1)、おしりに多いとされます。英国NHSによると、人にうつる病気ではなく、不潔だからなるわけでもありません。喫煙や肥満は悪化と関係します。

プレ男おしりや足のつけ根に、痛いおできが何度もできるんだ。陰部の近くだから、性病じゃないかって心配で……。

メル美わきの下にもできることがあるらしいよ。くり返すなら、ただのおできじゃないのかも。
こんにちは、Dr. Taro です。 今回は、化膿性汗腺炎(かのうせいかんせんえん)の話です。日本皮膚科学会の「化膿性汗腺炎診療の手引き2020」と、英国NHSの「Hidradenitis suppurativa (HS)」をもとにまとめました。
どんな病気?
日本皮膚科学会の手引きによると、
- 毛包(毛穴の奥)に起こる、慢性で、炎症をくり返す皮膚の病気です
- ふつうは思春期以降に、汗腺(アポクリン腺)の多い場所の皮膚の深いところに、痛みのある炎症が起こります
- よくできる場所は、わきの下、足のつけ根(鼠径部)、陰部や肛門のまわり、おしり、乳房の下や乳房の間です
NHSによると、
- おできのようなしこり、黒いポツポツ(面皰)、のう胞、傷あと、そして皮膚の下にトンネル(瘻孔)ができて、うみが出ることがあります
- はじめは、黒いポツポツ、うみをもったぶつぶつ、えんどう豆くらいのかたいしこりから始まり、数時間〜数日で消えるか、破れてうみが出ます。そのあと、近くに新しいしこりができることをくり返します
- とても痛いことがあります
性病ではなく、人にうつらない
- NHSによると、化膿性汗腺炎は人にうつる病気ではなく、不潔だからなるわけでもありません
- NHSは、ニキビや毛の埋没(埋もれ毛)とまちがえられることがあるとしています。陰部やおしりにできるので、性感染症とまちがえて心配する人も少なくありません(陰部のニキビのようなブツブツ、粉瘤(アテローム))

化膿性汗腺炎は、人にうつる病気ではありません。でも、ただのおできだと思って何年も見すごされやすい病気です。同じ場所に痛いしこりがくり返しできるなら、皮膚科へ。
診断の目安
日本皮膚科学会の手引きでは、次の3つを満たすと診断されます。
- 皮膚の深いところに、痛いしこり、うみのかたまり、トンネル(瘻孔)、傷あとなど、典型的な皮膚の症状がある
- よくできる場所(わき、足のつけ根、会陰、おしり、乳房の下など)の複数の場所に、1つ以上の症状がある
- 慢性で、くり返す。くり返しは半年に2回以上が目安
ほかに、家族に同じ病気の人がいること、細菌の検査で病原菌が見つからないことも、診断の手がかりになります。クローン病による皮膚の症状や、がんなどとの区別も必要です。
日本では男性に多く、おしりに多い
日本皮膚科学会の手引きによると、
- 欧米では女性に多い(男女比1:3)のに対し、日本の報告では男性に多く、男女比は2〜3:1です
- 男性はおしり・肛門のまわり、女性はわきの下・外陰部に多く、日本では全体の約半数がおしりです
- 欧米の報告では、発症は20〜30歳代が多いとされています。日本の報告では平均40.1歳でした
- 発症から診断までに約7年かかるとされ、診断が遅れることが大きな問題とされています
- 日本では大規模な調査がなく、どれくらいの人がかかっているかはまだわかっていません

プレ男診断まで7年もかかることがあるんだ……。ずっと「おでき」だと思っていたら、もったいないね。
原因と悪化させるもの
- NHSによると、はっきりした原因はわかっていませんが、毛包がつまることで起こります
- 喫煙と肥満は化膿性汗腺炎と強く関係し、症状を悪くします。日本皮膚科学会の手引きも、喫煙を発症のリスクとしています
- NHSによると、約3人に1人は家族にも同じ病気の人がいます
治療
NHSによると、
- 一生続き、くり返すことが多い病気ですが、治療で症状がよくなったり、おさまったりすることがあります。早く診断して、悪化を防ぐことが大切です
- 早い段階では薬でコントロールし、重い場合や長引く場合は手術を考えます
- 薬には、抗菌薬(感染があるとき、または炎症をおさえるために長めに使う)、消毒薬での洗浄、レチノイド、ホルモン剤、重い場合の免疫をおさえる注射などがあります
日本皮膚科学会の手引きには、日本での治療の考え方がくわしくまとめられています。治療は皮膚科の医師と相談して決めましょう。
- 日本皮膚科学会の手引き(2020年)によると、日本では化膿性汗腺炎に保険で使える薬が海外より少ないため、治療の方針が海外とちがうところがあります。手引きの時点で、化膿性汗腺炎への使用が承認されていた生物学的製剤(注射薬)はアダリムマブだけでした
- 日本皮膚科学会の「化膿性汗腺炎におけるビメキズマブの使用上の注意」(2024年9月25日)によると、2024年9月に、ビメキズマブも化膿性汗腺炎への使用が承認され、日本で2番目の生物学的製剤になりました。いずれも、局所の治療や抗菌薬などで効果が不十分な、ある程度重い人が対象です
自分でできること
NHSによると、
- 太っている場合は減量、たばこを吸うならやめる
- 消毒用の洗浄剤やせっけんを使う(治療と一緒に処方されることもあります)
- しこりに温かいタオルをあてて、うみが出やすくする
- ゆったりした服を着る
- できている場所の毛をそらない
長く痛みや分泌物とつきあうことは、気持ちにも大きな負担になります。NHSも、つらいときは医師に相談するようすすめています。
まとめ
- わき・足のつけ根・陰部・おしりに、痛いしこりやうみがくり返しできる
- 性病ではなく、人にうつらない。不潔だからなるわけでもない
- 日本では男性に多く、おしりに多い
- 診断まで約7年かかることも。半年に2回以上くり返すなら皮膚科へ
- 禁煙・減量も大切
参考文献
- 化膿性汗腺炎診療の手引き策定委員会. 化膿性汗腺炎診療の手引き2020(日本皮膚科学会 一般公開ガイドライン、PDF). https://www.dermatol.or.jp/dermatol/wp-content/uploads/xoops/files/kanoseikannsenenn2020.pdf (閲覧日:2026年10月10日)
- NHS. Hidradenitis suppurativa (HS)(Page last reviewed: 17 March 2023). https://www.nhs.uk/conditions/hidradenitis-suppurativa/ (閲覧日:2026年10月10日)
- 日本皮膚科学会 乾癬分子標的薬安全性検討委員会. 化膿性汗腺炎におけるビメキズマブの使用上の注意(2024年9月25日、PDF). https://www.dermatol.or.jp/dermatol/wp-content/uploads/xoops/files/%E5%8C%96%E8%86%BF%E6%80%A7%E6%B1%97%E8%85%BA%E7%82%8E%E3%81%AB%E5%AF%BE%E3%81%99%E3%82%8B%E3%83%93%E3%83%A1%E3%82%AD%E3%82%BA%E3%83%9E%E3%83%96%E3%81%AE%E4%BD%BF%E7%94%A8%E4%B8%8A%E3%81%AE%E6%B3%A8%E6%84%8F_20240924(1).pdf (閲覧日:2026年10月10日)
この記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の診断・治療に代わるものではありません。 気になる症状や不安がある場合は、医療機関にご相談ください。
