HIVとノカルジア感染症:土やほこりなど身のまわりにいる菌が、免疫がとても下がった人(CD4が200未満、とくに100未満)に、肺・皮膚・脳の感染を起こす。人から人へはうつらない。治療は長く、半年〜1年以上
ノカルジアは、土や野菜などの植物、水など、身のまわりにいる菌です。国立健康危機管理研究機構エイズ治療・研究開発センター(ACC)の手引き(2022年)によると、HIV感染者の0.2〜2%にノカルジア感染症が起こり、CD4数が200未満、とくに100未満の人に多いとされています。吸いこんだり、傷口から入ったりして感染し、人から人へうつった報告はありません。肺、皮膚、脳などに感染し、ニューモシスチス肺炎と一緒に肺炎として見つかることが多く、肺炎から脳の膿瘍に進むこともあります。治療は長く、免疫が下がった人では少なくとも12か月とされています。

プレ男HIVで入院した知り合いが、ニューモシスチス肺炎と一緒に「ノカルジア」っていう菌も見つかったんだって。聞いたことがないな。

メル美どこからうつる菌なんだろう。
こんにちは、Dr. Taro です。 今回は、HIVとノカルジア感染症の話です。国立健康危機管理研究機構エイズ治療・研究開発センター(ACC)の「抗HIV治療ガイドライン・治療の手引き」の「ノカルジア感染症」(2022年9月29日更新)をもとにまとめました。
どんな菌?
ACCの手引きによると、
- ノカルジアは、土や野菜などの植物、水など、ふだんの環境にいる菌です
- 吸いこんだり、傷口から入ったりして感染します。動物から人、人から人へうつった報告はありません。土ぼこりの吸いこみや、病院内の工事などによる院内感染の報告はあります
- 体を守るには細胞性免疫が大切で、ノカルジア感染症の6割以上は、なんらかの免疫が下がった状態を背景に起こるとされています
HIVとの関係
ACCの手引きによると、
- ノカルジア感染症は、HIV感染症全体の0.2〜2%に起こり、CD4数が200未満(とくに100未満)の人に多いと報告されています(HIVの「CD4数」でわかること)
- 感染する場所は、皮膚、肺、脳が問題になることが多いですが、ほかの臓器にも起こりえます
- ACCの経験では、ニューモシスチス肺炎と一緒に肺炎として見つかることが多く、肺炎から脳の膿瘍に進むこともあり、けっしてまれではないとしています(エイズを発症してからHIVがわかるとき、HIVと脳の病気)

ノカルジアは、治療で肺の影がよくなっても、根絶には長い治療が必要で、あとから肺や脳で再燃することがあります。主治医の指示どおりに、治療を最後まで続けてください。
診断と治療
ACCの手引きによると、
- 病変からとった検体を特別な染色や遺伝子の検査で調べて診断します。培養では見つかりにくいことがあります
- 菌の種類によって効く薬がちがうため、専門機関で菌の種類と薬の効き方を調べることが大切です
- 治療は長く、はじめの点滴の治療(免疫が下がった人では最低6週間)のあと、飲み薬で続け、免疫が下がった人では少なくとも12か月とされています
- ニューモシスチス肺炎の治療薬でノカルジアの肺炎もいったんよくなることがありますが、治療が終わったあとに肺や脳で再燃した例があるとしています
まとめ
- ノカルジアは土・植物・水など身のまわりにいる菌。人から人へはうつらない
- HIV感染症の0.2〜2%に起こり、CD4数200未満(とくに100未満)に多い
- 肺・皮膚・脳に感染。ニューモシスチス肺炎と一緒に見つかることが多い
- 治療は長く、免疫が下がった人では12か月以上。途中でやめると再燃することも
参考文献
- 国立健康危機管理研究機構 エイズ治療・研究開発センター(ACC). 抗HIV治療ガイドライン・治療の手引き:ノカルジア感染症(Last updated: 2022-09-29). https://www.acc.jihs.go.jp/medics/treatment/handbook/part2/no39.html (閲覧日:2026年10月10日)
この記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の診断・治療に代わるものではありません。 気になる症状や不安がある場合は、医療機関にご相談ください。
