HIVと脳の病気:免疫がとても下がると、トキソプラズマ脳炎、進行性多巣性白質脳症(PML)、クリプトコックス髄膜炎などが起こることがある。熱や頭痛から、まひ・けいれん・意識の変化へ進むことも。抗HIV療法を始めたあとに悪くなることもある
HIVで免疫がとても下がると、脳や髄膜の病気が起こることがあります。国立健康危機管理研究機構エイズ治療・研究開発センター(ACC)の手引きによると、トキソプラズマ脳炎は多くがCD4数100以下で起こり、数日から数週かけて、熱や頭痛から意識の変化、けいれん、片まひへ進むことがあります。進行性多巣性白質脳症(PML)は、手足の力が入らない、見え方の異常などで始まります。クリプトコックス髄膜炎は、熱、だるさ、頭痛など目立たない症状で、ゆっくり進むことが多いとされています。どれも、抗HIV療法を始めたあとに悪くなることがあります。

プレ男HIVで免疫が下がると、脳にも病気が起こることがあるって聞いたんだ。どんな病気なの?

メル美頭痛くらいなら、見のがしてしまいそうで心配だね。
こんにちは、Dr. Taro です。 今回は、HIVで免疫がとても下がったときに起こる、脳や髄膜の病気の話です。国立健康危機管理研究機構エイズ治療・研究開発センター(ACC)の「抗HIV治療ガイドライン・治療の手引き」の「トキソプラズマ脳炎」「進行性多巣性白質脳症(PML)」「播種性クリプトコックス症」をもとにまとめました。CD4数と起こりやすい病気の全体はHIVの「CD4数」でわかることを見てください。
トキソプラズマ脳炎
ACCの手引き(2022年9月更新)によると、
- トキソプラズマという原虫が原因です。人には、原虫がついた食べものや、加熱が不十分な肉を食べることなどで感染し、脳などにひそんだ状態になります
- HIVで免疫が下がると、脳にひそんでいた原虫が再び活動して発症します。多くはCD4数が100以下で起こります
- 数日から数週かけて進みます。はじめは熱や頭痛くらいですが、診断や治療が遅れると、意識の変化、けいれん、片まひなどに進むことがあります
- 治療を始めると多くは1週間以内に症状がよくなりはじめるので、その反応をみて診断します。よくならないときは、脳のリンパ腫などとの見分けが大切です(HIVと悪性リンパ腫)
妊娠中のトキソプラズマについては、妊娠中に気をつけたい「サイトメガロウイルス」と「トキソプラズマ」を見てください。
進行性多巣性白質脳症(PML)
ACCの手引き(2023年12月更新)によると、
- 原因のJCウイルスは、多くの人が子どものころに症状なく感染していて(大人の70%ほど)、体の中にひそんでいます。HIVによる免疫の低下で再び活動し、脳の神経の働きをこわします。健康な人に起こることはとてもまれです
- 手足の力が入らない、ふらつく、見え方の異常(視野が欠ける、ものが二重に見える)などで始まり、進むと意識障害、認知の障害、けいれんなど、さまざまな神経の症状が出ます
- 熱などの炎症の症状は少ないことが多いとされています
クリプトコックス髄膜炎(播種性クリプトコックス症)
ACCの手引き(2022年9月更新)によると、
- クリプトコックスは、とくに鳥のふんで汚れた土でふえやすい真菌(カビの仲間)で、空気中の粒子を吸いこんで肺に感染し、症状がないままひそむことがあります
- HIVで免疫が下がると再び活動し、脳や髄膜に広がることが多いとされています
- 症状は、熱、だるさ、頭痛など目立たないことが多く、ゆっくり進むことが多いとされています。進むと髄膜炎の症状や意識障害が出て、そうなると見通しが悪くなります

これらの病気は、はじめは熱や頭痛など目立たない症状のことがあります。HIVの治療中や、免疫が下がっていると言われている人は、いつもとちがう頭痛や、手足の動かしにくさ、見え方の変化があれば、すぐに主治医に伝えてください。
抗HIV療法を始めたあとにも注意
ACCの手引きによると、3つの病気はいずれも、抗HIV療法を始めたあとに、免疫が回復するときの反応(免疫再構築症候群)として、悪くなったり、新しく出てきたりすることがあります。PMLでは、抗HIV療法を始めたあとに日常生活の動作が急に悪くなることがとても多いとされています。
治療の始め方については、HIVの治療はいつ始める?、エイズを発症してからHIVがわかる場合についてはエイズを発症してからHIVがわかるときを見てください。
脳にできるリンパ腫については、HIVと中枢神経系原発悪性リンパ腫にまとめています。
まとめ
- HIVで免疫がとても下がると、脳や髄膜の病気が起こることがある
- トキソプラズマ脳炎:多くはCD4数100以下。熱・頭痛から意識の変化・けいれん・片まひへ
- PML:手足の力が入らない、見え方の異常など。熱は少ない
- クリプトコックス髄膜炎:熱・だるさ・頭痛など目立たない症状でゆっくり進む
- 抗HIV療法を始めたあとに悪くなることもある。いつもとちがう症状はすぐ主治医へ
参考文献
- 国立健康危機管理研究機構 エイズ治療・研究開発センター(ACC). 抗HIV治療ガイドライン・治療の手引き:トキソプラズマ脳炎(Last updated: 2022-09-29). https://www.acc.jihs.go.jp/medics/treatment/handbook/part2/no31.html (閲覧日:2026年10月10日)
- 国立健康危機管理研究機構 エイズ治療・研究開発センター(ACC). 抗HIV治療ガイドライン・治療の手引き:進行性多巣性白質脳症(PML)(Last updated: 2023-12-04). https://www.acc.jihs.go.jp/medics/treatment/handbook/part2/no32.html (閲覧日:2026年10月10日)
- 国立健康危機管理研究機構 エイズ治療・研究開発センター(ACC). 抗HIV治療ガイドライン・治療の手引き:播種性クリプトコックス症(Last updated: 2022-09-29). https://www.acc.jihs.go.jp/medics/treatment/handbook/part2/no28.html (閲覧日:2026年10月10日)
この記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の診断・治療に代わるものではありません。 気になる症状や不安がある場合は、医療機関にご相談ください。
