HIVの治療はいつ始める?:今はCD4の数にかかわらず、すべての人に治療開始がすすめられている。治療しないと、エイズでなくても心臓や血管の病気、がん、認知機能の低下などが増える。治療はパートナーへの感染も防ぐ。飲み続けることがいちばん大切
HIVと診断されたら、治療はいつ始めるのでしょうか。国立健康危機管理研究機構エイズ治療・研究開発センター(ACC)の手引き(2022年)によると、厚生労働省研究班の抗HIV治療ガイドライン(2022年3月)は、CD4数にかかわらず、すべてのHIV感染者に治療開始をすすめています。治療しないでいると、免疫がそれほど下がっていなくても、動脈硬化による病気、エイズ指標疾患以外のがん、認知機能の障害などが増え、亡くなる人も増えることがわかったためです。治療はパートナーへの感染を防ぐこともわかっています。

プレ男HIVと診断された友だちが、「まだ症状もないし、免疫もそんなに下がってないのに、もう薬を始めるの?」って迷ってるんだ。

メル美昔と今で、考え方が変わってるのかな。
こんにちは、Dr. Taro です。 今回は、HIVの治療はいつ始めるのかの話です。国立健康危機管理研究機構エイズ治療・研究開発センター(ACC)の「抗HIV治療ガイドライン・治療の手引き」の「抗HIV療法の開始時期と薬剤選択」(2022年9月29日更新)をもとにまとめました。HIVそのものについてはHIVを見てください。
今は「すべての人に治療開始」
ACCの手引きで紹介されている、厚生労働省研究班の抗HIV治療ガイドライン(2022年3月)では、
- CD4数にかかわらず、すべてのHIV感染者に抗HIV治療の開始をすすめる
とされています。

HIVは、早く治療を始めて飲み続ければ、エイズの発症を防ぎ、ふつうに暮らせる病気です。症状がないうちから治療を始めることが、自分の体とパートナーを守ることにつながります。
考え方はどう変わってきた?
ACCの手引きによると、
- 1996年ごろに強力な多剤併用療法ができたころは、体からHIVを追い出すことをめざして、早く治療を始めることがすすめられていました
- でも、長くウイルスをおさえていても、治療をやめるとウイルスがまた出てくることがわかりました。感染して早い時期に、ウイルスがひそむ細胞(リザーバー)ができるため、今の治療で体からHIVを完全になくすことはできないのです
- そこで2000年ごろからは、薬の長期の副作用などを考えて、CD4数が200〜350に下がるまで治療を待つ考え方になりました
- ところがその後、CD4数が200以上でも、治療していない人や治療を中断した人では、動脈硬化による病気、エイズ指標疾患ではないがん、認知機能の障害などが増え、亡くなる人も増えることがわかりました。ウイルスがずっと体にあることによる慢性の炎症が関係していると考えられています
- さらに、早く治療を始めると、HIVに感染していないパートナーへの感染のリスクが下がることも証明されました
- こうして2012年ごろから、「免疫が下がったから」ではなく「ウイルスをおさえるために」早く治療を始めることがすすめられるようになりました

メル美症状がなくても、ウイルスがあるだけで体に負担がかかっているんだね。
パートナーへの感染を防ぐことについては、HIVの記事の「U=U」の説明も見てください。
治療を始めるときに大切なこと
ACCの手引きによると、
- 治療を始めるときは、飲み続けること(服薬遵守)の大切さと、医療費を軽くするための制度(社会資源)の使い方を、くわしく説明することが大切とされています(HIVの医療費と支援制度)
- 抗HIV療法の目標は、ウイルスを検出できないくらいにおさえ「続ける」ことで、これができるかどうかは、きちんと飲み続けられるかにかかっています
- 飲み続けやすさには、1回に飲む錠剤の数、食後に飲む必要があるか、錠剤の大きさ、副作用、ほかの薬との飲み合わせなどが関係します。ガイドラインですすめられる組み合わせの中から、一人ひとりに合ったものを選びます
(更新)研究班の「抗HIV治療ガイドライン」(2026年3月)では、初回の治療は、核酸系逆転写酵素阻害薬(NRTI)2剤+インテグラーゼ阻害薬(INSTI)1剤、NRTI 1剤(ラミブジン)+INSTI 1剤(ドルテグラビル)の2剤療法、NRTI 2剤+プロテアーゼ阻害薬1剤(コビシスタット併用)、NRTI 2剤+非核酸系逆転写酵素阻害薬1剤のいずれかの組み合わせから選ぶとしています。併存症、副作用、飲み合わせ、飲み続けやすさ、食事との関係、錠剤の数や大きさ、生活スタイルや希望から、その人に最も合うものを選び、服薬率100%をめざすとしています。1日1回1錠の配合剤がどれくらい使われているかは確認していません。
エイズを発症してから見つかったとき
ACCの手引きによると、
- エイズ指標疾患などを発症している人も、基本的に全員が抗HIV療法の対象です
- ただし、いつ始めるかは、病気の種類や重さ、免疫再構築症候群(治療で免疫が回復するときに炎症が強く出ること)のリスクなどを考えて、一人ひとり判断します(エイズを発症してからHIVがわかるとき)
CD4数ごとに起こりやすい病気については、HIVの「CD4数」でわかることにまとめています。
飲み続けることが大切な理由のひとつ、薬剤耐性については、HIVの薬が効かなくなる「薬剤耐性」にまとめています。
HIVの薬と市販薬・サプリの飲み合わせについては、HIVの薬と、市販薬・サプリの飲み合わせにまとめています。早く治療を始める理由のひとつ、エイズ以外の病気については、HIVと「エイズ以外の病気」を見てください。
治療を始めたあとに起こることがある免疫再構築症候群については、HIVの治療を始めて数か月以内に、かえって具合が悪くなる「免疫再構築症候群」を見てください。ウイルスがおさえられたあとの注射の治療については、HIVの治療に「注射」という選択肢を見てください。
WHOの2026年の推奨の更新は、WHOがHIVの治療の推奨を更新(2026年1月)を見てください。
まとめ
- 今は、CD4数にかかわらず、すべてのHIV感染者に治療開始がすすめられている(2022年のガイドライン)
- 治療しないと、免疫がそれほど下がっていなくても、心臓・血管の病気、がん、認知機能の低下などが増える
- 早い治療は、パートナーへの感染も防ぐ
- 今の治療でHIVを体から完全になくすことはできない。だからこそ、飲み続けることがいちばん大切
- 医療費の支援制度も使える
参考文献
- 国立健康危機管理研究機構 エイズ治療・研究開発センター(ACC). 抗HIV治療ガイドライン・治療の手引き:抗HIV療法の開始時期と薬剤選択(Last updated: 2022-09-29). https://www.acc.jihs.go.jp/medics/treatment/handbook/part3/sec01.html (閲覧日:2026年10月10日)
- HIV感染症および血友病におけるチーム医療の構築と医療水準の向上を目指した研究班. 抗HIV治療ガイドライン(2026年3月) 抗HIV薬選択の基本. https://hiv-guidelines.jp/2026/part05-1.htm (閲覧日:2026年10月12日)
この記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の診断・治療に代わるものではありません。 気になる症状や不安がある場合は、医療機関にご相談ください。
