HIVってどんな病気?検査・治療・予防(PrEP・PEP)をやさしく解説
HIVは「治療できる」時代に。早く見つける大切さと、飲んで予防するPrEP、もしものときのPEPについてまとめました。

プレ男HIVって、今はどんな病気なんだろう。検査は受けたほうがいいのかな。

メル美治療や予防の方法も、ちゃんと知っておきたいよね。
こんにちは、Dr. Taro です。 今回は HIV(エイチアイブイ)のお話です。「怖い病気」というイメージが強いかもしれませんが、今は治療で、HIVを持っていない人と変わらないくらいの寿命が期待できる時代です。そして、飲み薬で予防する方法(PrEP)も、日本で承認されました。
HIVとエイズはちがう
- HIV:ヒト免疫不全ウイルス。体を守る免疫の細胞に感染するウイルスです
- エイズ(AIDS):HIVに感染したまま治療しないでいると、免疫がだんだん弱くなり、ふだんならかからない感染症やがんなど、決められた23の病気(エイズ指標疾患)のどれかを発症した状態をいいます
つまり、HIVに感染しても、早く見つけて治療すればエイズは防げるのです。
日本の今
2025年に新しく報告されたのは、HIV感染者624件、エイズ患者266件、合わせて890件でした(過去20年間で2番目に少ない数)。 報告の94.8%が男性で、感染経路は同性間の性的接触が半数以上です。
気になるのは、新しく報告された人のうち29.9%(約3割)が、エイズを発症してからHIVに感染していたと分かった、ということ。前の年(33.4%)より少し下がりましたが、依然として約3割で推移しています。
エイズを発症してから見つかると、それより前に見つけて治療を始めた場合より、治療の効果が明らかに劣ってしまいます。だからこそ、症状がないうちの検査が大切なんです。
どうやってうつるの?
HIVは、血液・精液・腟分泌液・母乳などに多く含まれ、粘膜(腸・腟・口の中など)や、血管に達するような傷から入って感染します。主な感染経路は3つです。
- 性的接触(日本の新しい感染のほとんど)
- 血液(注射器の使い回しなど)
- 母子感染(妊娠・出産・授乳)(HIVと妊娠)
一方で、唾液・涙・尿には、ほかの人に感染させるだけのウイルスは含まれていません。また、傷のない皮膚からは感染しません。握手やふつうの生活でうつることはない、ということです。
症状と経過
治療しなかった場合、HIV感染症は次のように進みます。
- 急性期(感染から2〜4週間ほど):発熱、のどの痛み、発疹、リンパ節の腫れなど、かぜやインフルエンザのような症状が出ることがあります
- 症状のない時期(数年〜十数年):症状はほとんどありませんが、免疫の細胞(CD4陽性リンパ球)がだんだん減っていきます
- エイズ発症:免疫が弱くなり、エイズ指標疾患を発症します。エイズを発症して治療しない場合、その後の見通しは2〜3年とされています
検査はどうやるの?
HIVは血液検査で調べます。 全国の保健所などで、無料・匿名で検査を受けられます。その日のうちに結果が分かる「即日検査」をしているところもあります。
- 抗体検査は、感染の機会から1か月以上たっていれば、感染している場合に陽性になる可能性が高いです
- ただし個人差があるので、陰性だった場合も、3か月以降にもう一度検査すると確実です
- 即日検査で「陽性(要確認)」と言われても、まだ確定ではありません。結果の意味はHIV検査で「陽性」と言われたらの記事にまとめています
タイミングは性行為後にやるべきことチェッカーでも確認できます。
治療は?—「毎日の薬」でふつうに暮らせる
HIVを体から完全に消す治療法は、まだありません。 でも、抗HIV薬でウイルスが増えるのを抑えれば、エイズの発症を防ぎ、長いあいだ健康なときと変わらない生活を送ることができます。HIVを持っていない人と変わらないくらいの寿命が期待できるとされています。
- 今は1日1回1錠(1錠に3〜4種類の成分が入った薬)で治療できることが多くなっています
- ただし、きちんと飲み続けないと薬が効かなくなる(耐性)ことがあるので、治療はずっと続けます
治療でウイルスが抑えられていれば、うつらない(U=U)
治療を続けて血液中のウイルスが検出できないくらい少なくなっている人は、性行為でパートナーにHIVをうつさないことが分かっています。これを「U=U(Undetectable = Untransmittable:検出限界未満なら、感染しない)」といいます。 早く見つけて治療することは、自分の健康だけでなく、大切な人を守ることにもつながるのです。
予防するには
梅毒・淋菌・クラミジアなど、ほかの性感染症にかかっているとHIVにうつりやすくなります。くわしくはほかの性感染症があると、HIVにうつりやすいの記事を見てください。
- コンドームを正しく使う
- PrEP(プレップ):HIVに感染する前から予防の薬を飲む方法
- PEP(ペップ):感染したかもしれない行為のあと、すぐに薬を飲み始める方法
PrEP(曝露前予防):前もって飲んで防ぐ
HIVに感染するリスクがある人が、前もって抗HIV薬を飲んでおくことで感染を防ぐ方法です。
- 日本では2024年8月に、エムトリシタビン・テノホビル ジソプロキシルフマル酸塩の配合錠が「HIV-1感染症の曝露前予防」として承認されました
- 承認されている飲み方は、1日1回1錠を毎日飲む方法です
- HIVに感染したままPrEPを飲むと、薬が効かないウイルス(耐性)ができるおそれがあるため、飲み始める前にHIV陰性を確認し、飲んでいる間も少なくとも3か月ごとにHIV検査を受けます
- 腎臓の検査や、B型肝炎の検査なども必要です
- 予防が目的のため、保険は使えず自費になります
オンデマンドPrEP(性行為の前後だけ飲む方法)について
毎日ではなく、性行為の前後だけ飲む「オンデマンドPrEP」という方法もあります。
- 性行為の2〜24時間前に2錠、その24時間後に1錠、48時間後に1錠飲む方法です(「2+1+1」と呼ばれます)
- WHOは2019年に、男性と性行為をする男性に限って、この飲み方を選択肢に加えています。国内の専門施設の手引きでも、シスジェンダーの男性と性行為をする男性、ホルモン療法をしていないトランスジェンダー女性には選択肢とされています
- 効果が確かめられているのは、男性どうしの性行為で、エムトリシタビン・テノホビル ジソプロキシルフマル酸塩(日本でPrEPとして承認されている薬と同じ成分)を使った場合です。腟性交での効果は確かめられていません
- 別の成分の薬(エムトリシタビン・テノホビル アラフェナミド)でのオンデマンドの効果は、確かめられていません
- 米国CDCはオンデマンドを推奨しておらず、日本でも承認されているのは毎日飲む方法だけです。オンデマンドは承認されていない使い方(適応外)で、自費になります
このサイトでは、効果の裏付けがいちばんしっかりしている「毎日飲む方法」をおすすめしています。飲み方は、自分の生活に合わせて医師とよく相談して決めてください。
実際に処方されているPrEPの薬について
日本の医療機関でのPrEPは、価格の理由から、医療機関が海外から輸入した薬(エムトリシタビン・テノホビル アラフェナミドなど)を毎日飲む形で処方されていることが多いのが実情です。
- エムトリシタビン・テノホビル アラフェナミドを毎日飲むPrEPは、米国CDCでも推奨されています(ただし、腟性交による感染を防ぐ目的では推奨されていません)
- 一方で、日本ではこの薬のPrEPとしての承認はなく、海外から輸入された薬は、日本の法律に基づく品質・有効性・安全性の確認がされていません
- とくに、インターネットなどで自分で輸入するのは、偽造品などのおそれもあるため避けましょう。PrEPは、定期的なHIV検査とあわせて、医療機関で相談しながら使うことが大切です
PrEPはHIVを防ぐ薬で、ほかの性感染症(梅毒・クラミジア・淋菌など)は防げません。コンドームとの組み合わせや、定期的な性感染症の検査も大切です。
PrEPについて、くわしくは PrEPのページをご覧ください。
PEP(曝露後予防):もしものときの緊急の予防
コンドームなしの性行為など、HIVに感染したかもしれない行為のあと、72時間以内に抗HIV薬を飲み始めて、感染するリスクを下げる方法です。
- 飲み始めたら、28日間続けます
- 早く始めるほどよいとされています。心当たりがあれば、すぐにHIVを扱う医療機関に相談してください
- 性行為のあとのPEPは、日本では承認されていない使い方(適応外)のため、自費で、費用も高くなります
- 医療従事者の針刺し事故などによるPEPは、労災保険の対象になります
くわしくは、PEPのページをご覧ください。
PEPは時間との勝負です。 「72時間以内」を過ぎると使えないので、心当たりがあれば迷わず、すぐに相談してください。
Doxy-PEP ではHIVは防げない
最近話題の Doxy-PEP(ドキシサイクリンによる予防内服)は、梅毒・クラミジア・淋菌を減らすことをねらう方法です。HIVは予防できません。
パートナーにも検査を
HIVに感染していることがわかったら、パートナーにも検査をすすめることがとても大切です。 パートナーが感染していた場合も、早く見つかれば早く治療を始められ、エイズの発症を防ぐことができます。
また、治療を続けてウイルスが抑えられていれば、パートナーにうつすことはありません(U=U)。 誰にどう伝えるか悩んだときは、ひとりで抱え込まず、治療を受けている医療機関や保健所に相談してください。
仕事への影響が心配な人は、HIVと仕事の記事も見てください。国のガイドラインでは、HIV感染そのものは解雇の理由にならないとされています。
まとめ
- HIVとエイズはちがう。早く見つけて治療すればエイズは防げる
- 日本では新しく報告された人の約3割が、エイズを発症してから見つかっている
- 検査は保健所などで無料・匿名でも受けられる。1か月以降、陰性でも3か月以降にもう一度
- 治療は1日1回1錠が中心。ウイルスが抑えられていれば性行為でうつらない(U=U)
- 予防はコンドームに加えて、PrEP(前もって毎日飲む・承認済み)と、PEP(72時間以内・28日間)
参考文献
- 国立健康危機管理研究機構. HIV感染症/AIDS(後天性免疫不全症候群). https://id-info.jihs.go.jp/infectious-diseases/hiv-infection-and-aids/index.html (閲覧日:2026年9月24日)
- 厚生労働省エイズ動向委員会. 令和7(2025)年エイズ発生動向 ―分析結果―. https://api-net.jfap.or.jp/status/japan/data/2025/nenpo/bunseki.pdf (閲覧日:2026年9月27日)
- 厚生労働省. HIV検査・相談マップ「HIV/エイズとは」. https://www.mhlw.go.jp/hivkensa/knowledge/whatis (閲覧日:2026年9月24日)
- 厚生労働省. HIV検査・相談マップ「HIV検査まめ知識」. https://www.mhlw.go.jp/hivkensa/knowledge/mame (閲覧日:2026年9月24日)
- World Health Organization. HIV and AIDS — Fact sheet(2026年7月27日更新). https://www.who.int/news-room/fact-sheets/detail/hiv-aids (閲覧日:2026年9月24日)
- エムトリシタビン・テノホビル ジソプロキシルフマル酸塩配合錠 医薬品インタビューフォーム(2024年8月改訂 第11版). https://pins.japic.or.jp/pdf/medical_interview/IF00007130.pdf (閲覧日:2026年9月24日)
- 国立健康危機管理研究機構 エイズ治療・研究開発センター. 抗HIV薬の曝露後予防内服(PEP)(2022年11月29日更新). https://www.acc.jihs.go.jp/general/pep_jpn.html (閲覧日:2026年9月24日)
- 国立健康危機管理研究機構 エイズ治療・研究開発センター. HIV感染症とその合併症「診療と治療のハンドブック」曝露前・曝露後の予防内服(oPEP/nPEP/PrEP). https://www.acc.jihs.go.jp/medics/treatment/handbook/part3/sec03.html (閲覧日:2026年9月24日)※PrEP の国内承認(2024年8月)より前の記載を含む
- World Health Organization. What’s the 2+1+1? Event-driven oral pre-exposure prophylaxis to prevent HIV for men who have sex with men: update to WHO’s recommendation on oral PrEP. Technical brief(2019年7月). https://apps.who.int/iris/handle/10665/325955 (閲覧日:2026年9月24日)
- Centers for Disease Control and Prevention. Clinical Guidance for PrEP(2026年4月30日確認). https://www.cdc.gov/hivnexus/hcp/prep/index.html (閲覧日:2026年9月24日)
- 厚生労働省. 医薬品等を海外から購入しようとされる方へ. https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iyakuhin/kojinyunyu/index.html (閲覧日:2026年9月24日)
この記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の診断・治療に代わるものではありません。 気になる症状や不安がある場合は、医療機関にご相談ください。
