PrEP(HIVの曝露前予防)とは?飲み方・効果・始める前の検査をやさしく解説
HIVに感染する前から予防の薬を飲んでおくPrEP。指示どおり飲めば、性行為によるHIV感染のリスクを約99%減らせます。毎日飲む方法とオンデマンド、始める前と続けるあいだの検査、日本での実情をまとめました。

プレ男PrEPって、HIVを予防するために飲む薬なんだよね?

メル美飲み方や、始める前の検査のことも知りたいな。
こんにちは、Dr. Taro です。 「HIVが心配だけど、コンドームを毎回使うのは難しい」——そんな人に知ってほしいのがPrEP(プレップ、曝露前予防)です。前もって薬を飲んでおくことで、HIVの感染を防ぐ方法です。
PrEPってなに?
PrEPは、HIVに感染するリスクがある人が、前もって抗HIV薬を飲んでおくことで感染を防ぐ方法です。
- 米国CDCによると、指示どおりに飲めば、性行為によるHIV感染のリスクを約99%減らせます
- 日本では2024年8月に、エムトリシタビン・テノホビル ジソプロキシルフマル酸塩の配合錠が「HIV-1感染症の曝露前予防」として承認されました
- 承認されている飲み方は、1日1回1錠を毎日飲む方法です
- 予防が目的のため、保険は使えず自費になります
どんな人に向いている?
PrEPの効果の裏付けがいちばんしっかりしているのは、男性と性行為をする男性(MSM)です。このサイトでも、PrEPは主にMSMの人に向けた予防法と考えています。
日本エイズ学会の「PrEP利用の手引き(第2版)」では、過去3か月にこんなリスクがあり、これからも同じようなリスクがある人に、PrEPを処方すべきとしています(一部)。
- HIV陽性で、治療していない・ウイルスが検出されるパートナーと、コンドームなしで性行為をした
- 不特定の男性パートナーと、コンドームなしでアナルセックスをした
- セックスワーカーで、コンドームなしで性行為をした
- 薬物を使った性行為(ケムセックス、キメセクなど)をした
- 直腸の淋菌・クラミジアや、梅毒にかかった
性風俗で働く女性など、女性の場合も、希望があればPrEPを考えることができます(下の「女性のPrEP」もご覧ください)。
また、パートナーがHIV陽性でも、治療でウイルスが検出されない状態(U=U)であれば、性行為でうつらないことが分かっています。それでも、継続的に関係を持つ場合に、安心のためにPrEPを使うことも考えられます。 PEP(もしものときの緊急の予防)をくり返し使っている人も、PrEPへの切り替えを考えましょう。
始める前の検査
PrEPを始める前に、血液検査で次のことを確かめます。
- HIVに感染していないか:HIVに感染したままPrEPの薬を飲むと、薬が効かないウイルス(耐性)ができるおそれがあります
- B型肝炎に感染していないか:PrEPの薬はB型肝炎にも効くため、B型肝炎に感染している人が飲むのをやめると、B型肝炎が悪化するおそれがあります
- 腎臓の働き:薬が腎臓に負担をかけることがあるため、腎臓の働きが落ちていないかを確かめます
飲み方
毎日飲む方法(承認されている飲み方)
1日1回1錠を毎日飲みます。飲み始めてから、効果が最大になるまでには時間がかかります(米国CDC)。
- 受け側のアナルセックス:約7日
- 腟性交:約21日
このサイトでは、効果の裏付けがいちばんしっかりしている「毎日飲む方法」をおすすめしています。
オンデマンドPrEP(性行為の前後だけ飲む方法)
毎日ではなく、性行為の前後だけ飲む「オンデマンドPrEP」という方法もあります。
- 性行為の2〜24時間前に2錠、その24時間後に1錠、48時間後に1錠飲む方法です(「2+1+1」と呼ばれます)
- WHOは2019年に、男性と性行為をする男性に限って、この飲み方を選択肢に加えています。国内の専門施設の手引きでも、シスジェンダーの男性と性行為をする男性、ホルモン療法をしていないトランスジェンダー女性には選択肢とされています
- 効果が確かめられているのは、男性どうしの性行為で、エムトリシタビン・テノホビル ジソプロキシルフマル酸塩(日本でPrEPとして承認されている薬と同じ成分)を使った場合です。腟性交での効果は確かめられていません
- 別の成分の薬(エムトリシタビン・テノホビル アラフェナミド)でのオンデマンドの効果は、確かめられていません
- 米国CDCはオンデマンドを推奨しておらず、日本でも承認されているのは毎日飲む方法だけです。オンデマンドは承認されていない使い方(適応外)で、自費になります
飲み方は、自分の生活に合わせて医師とよく相談して決めてください。
続けるあいだの検査
- 3か月ごとのHIV検査をおすすめします
- 腎臓の検査も定期的に受けます
- PrEPはほかの性感染症を防げないため、梅毒・クラミジア・淋菌などの検査も受けたほうがよいでしょう。検査の頻度は、性行為の状況などによって人それぞれです。医師と相談しましょう
PrEPは「飲むだけ」ではなく、「定期的な検査」とセットの予防法です。3か月ごとの検査で、ほかの性感染症も早く見つけられます。
実際に処方されているPrEPの薬について
日本の医療機関でのPrEPは、価格の理由から、医療機関が海外から輸入した薬(エムトリシタビン・テノホビル アラフェナミドなど)を毎日飲む形で処方されていることが多いのが実情です。
- エムトリシタビン・テノホビル アラフェナミドを毎日飲むPrEPは、米国CDCでも推奨されています(ただし、腟性交による感染を防ぐ目的では推奨されていません)
- 一方で、日本ではこの薬のPrEPとしての承認はなく、海外から輸入された薬は、日本の法律に基づく品質・有効性・安全性の確認がされていません
- とくに、インターネットなどで自分で輸入するのは、偽造品などのおそれもあるため避けましょう。PrEPは、定期的なHIV検査とあわせて、医療機関で相談しながら使うことが大切です
国内で承認されている薬(エムトリシタビン・テノホビル ジソプロキシルフマル酸塩)は費用が高く、現実的な選択肢になりにくいのが実情です。
女性のPrEP
医療機関で処方されることが多い薬(エムトリシタビン・テノホビル アラフェナミド)を女性が毎日飲むPrEPについては、まだ根拠が十分とは言えません。
- 米国CDCは、この薬を腟性交による感染を防ぐ目的では推奨していません
- 一方で、日本エイズ学会の手引きでは、シスジェンダー女性を対象にした海外の試験で、きちんと飲めていた人(週2〜3回以上)では、あまり飲めていなかった人に比べて、HIV感染のリスクが89%低かったことが紹介されています。この試験で感染した人のほとんどは、薬をまったく飲んでいませんでした
女性がPrEPを希望する場合は、こうした点をふまえて、医師とよく相談して決めましょう。
注射のPrEP
海外では、2か月ごとに注射するPrEPが使われています。また、米国では2025年6月に、半年に1回の注射で予防できるPrEPも承認されました。 ただし、日本では注射のPrEPは費用がとても高く、現実的な選択肢ではありません。将来、半年に1回の注射で予防できる日が来るかもしれません。
PrEPで防げないもの
PrEPはHIVを防ぐ薬で、ほかの性感染症(梅毒・クラミジア・淋菌など)や妊娠は防げません。コンドームとの組み合わせや、定期的な性感染症の検査も大切です。
まとめ
- PrEPは、前もって抗HIV薬を飲んでHIVを防ぐ方法。指示どおり飲めば約99%リスクを減らせる
- 主にMSMの人に向けた予防法。女性も希望があれば医師と相談を
- 始める前にHIV・B型肝炎・腎臓の働きを確認し、続けるあいだも3か月ごとにHIV検査
- ほかの性感染症や妊娠は防げない。コンドームや定期検査と組み合わせて
参考文献
- Centers for Disease Control and Prevention. Clinical Guidance for PrEP. https://www.cdc.gov/hivnexus/hcp/prep/index.html (閲覧日:2026年9月25日)
- Centers for Disease Control and Prevention. Pre-Exposure Prophylaxis (PrEP). https://www.cdc.gov/hiv/prevention/prep.html (閲覧日:2026年9月25日)
- エムトリシタビン・テノホビル ジソプロキシルフマル酸塩配合錠 医薬品インタビューフォーム(2024年8月改訂 第11版). https://pins.japic.or.jp/pdf/medical_interview/IF00007130.pdf (閲覧日:2026年9月24日)
- 日本エイズ学会. 日本におけるHIV感染予防のための曝露前予防(PrEP)利用の手引き 第2版(2025年4月14日現在). https://jaids.jp/pdf/HIV-PrEP_tebiki2.pdf (閲覧日:2026年9月25日)
- 国立健康危機管理研究機構 エイズ治療・研究開発センター. HIV感染症とその合併症「診療と治療のハンドブック」曝露前・曝露後の予防内服(oPEP/nPEP/PrEP). https://www.acc.jihs.go.jp/medics/treatment/handbook/part3/sec03.html (閲覧日:2026年9月24日)※PrEP の国内承認(2024年8月)より前の記載を含む
- World Health Organization. What’s the 2+1+1? Event-driven oral pre-exposure prophylaxis to prevent HIV for men who have sex with men: update to WHO’s recommendation on oral PrEP. Technical brief(2019年7月). https://apps.who.int/iris/handle/10665/325955 (閲覧日:2026年9月24日)
- FDA Approves First Twice-Yearly PrEP for Long-Acting HIV Prevention. JAMA. 2025. https://jamanetwork.com/journals/jama/fullarticle/2836644 (閲覧日:2026年9月25日)
- 厚生労働省. 医薬品等を海外から購入しようとされる方へ. https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iyakuhin/kojinyunyu/index.html (閲覧日:2026年9月24日)
この記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の診断・治療に代わるものではありません。 気になる症状や不安がある場合は、医療機関にご相談ください。