梅毒ってどんな病気?症状・検査・治療をやさしく解説
日本で大きく増えた梅毒。症状が「消える」ことがあるやっかいな特徴や、検査・治療、赤ちゃんへの影響をまとめました。
目次

プレ男梅毒って、最近ニュースでよく聞くよね。

メル美しこりや発疹が消えても、治ったわけじゃないって本当?
こんにちは、Dr. Taro です。 今回は、ここ10年ほどで日本で大きく増えた性感染症、梅毒(ばいどく)のお話です。
梅毒ってどんな病気?
梅毒は、梅毒トレポネーマという細菌による性感染症です。 皮膚や粘膜の小さな傷から入り込み、血液にのって全身に広がるため、体のいろいろな場所にさまざまな症状が出ます。ほかの病気とまぎらわしい症状が多いことから、「偽装の達人(The great imitator)」とも呼ばれています。
日本では大きく増えている
梅毒は、診断した医師がすべて保健所に届け出る「全数把握」の病気です。一部の医療機関だけが報告するクラミジアや淋菌(定点把握)とちがい、全国で診断された人の数がまとまっています。 ※ただし、検査を受けていない人や、気づいていない人は数に入りません。
2010年には621人だった報告数が、2023年には15,058人と過去最多になりました。2024年は14,829人、2025年は13,530人(速報値)と少し減っていますが、2022年以降は毎年1万人を超えています。 ※2025年は速報値のため、今後変動する可能性があります。
年齢でみると、男性は20〜50代、女性は20代に多く、近年は異性間の性的接触による報告が増えています。
どうやってうつるの?
梅毒の病変(しこりや潰瘍、発疹など)に、粘膜や皮膚が直接ふれることでうつります。
- 性器と性器
- 性器と肛門(アナルセックス)
- 性器と口(オーラルセックス)
また、妊娠中の人が感染していると、胎盤を通じて赤ちゃんに感染することがあります。
症状は?—「消える」けど、治っていない
梅毒のいちばんやっかいなところは、症状が出ても、治療しないうちに自然に消えてしまうことです。治ったわけではなく、ひそかに進行します。
治療しなかった場合の、典型的な経過は次のとおりです。
Ⅰ期(感染から数週間)
- 感染した場所(口の中、肛門、性器など)にしこりや潰瘍ができる
- 足の付け根のリンパ節が腫れることも
- 痛くないことが多く、治療しなくても自然に消えてしまう
Ⅱ期(感染から約3か月)
- 菌が血液にのって全身に広がる
- 手のひら・足の裏、体などに、「バラ疹(ばらしん)」と呼ばれる淡い赤い発疹が出ることがある
- 発疹も数週間で自然に消えるが、治ったわけではなく、また出てくることもある
晩期(感染から数年)
- 皮膚や筋肉、骨に「ゴム腫」ができたり、心臓や血管、脳・脊髄に障害が出たりする
- ただし、抗菌薬が普及した今ではまれです
神経梅毒
- 感染が脳や脊髄におよぶもので、どの時期でも起こりうるとされています。目や耳に及ぶこともあります(梅毒が目・耳・神経に及ぶとき)
しこりや発疹が消えても、梅毒が治ったわけではありません。心当たりがあれば、症状が消えていても検査を受けましょう。
赤ちゃんへの影響(先天梅毒)
妊娠中の人が梅毒にかかると、胎盤を通して赤ちゃんに感染し、死産・早産・新生児死亡が起きたり、生まれた赤ちゃんが先天梅毒になったりすることがあります。
先天梅毒の報告は増えていて、2012年は4人でしたが、2023年は37人、2024年は30人でした。 妊娠中に梅毒と診断される人も増えています(妊娠中の梅毒)。
妊婦健診では梅毒の検査が行われます。妊娠中や妊娠を考えている人、そのパートナーも、心当たりがあれば早めに検査を受けることが大切です。
検査はどうやるの?
梅毒は、主に血液検査(抗体検査)で調べます。ほとんどの医療機関で受けられ、地域によっては保健所で匿名・無料の検査もあります。 しこりや潰瘍がある場合は、そこから検体をとって調べることもあります。
いつ検査すればいいかは、行為から4週間(28日)以降が最初の目安です。陰性でも、12週(84日)以降にもう一度検査すると、よりはっきりします。 タイミングは性行為後にやるべきことチェッカーでも確認できます。
※梅毒の抗体(TP抗体)は、治ったあとも陽性のまま残ることがあります。過去にかかったことがある人は、そのことを医師に伝えてください。 検査結果の読み方は、梅毒の血液検査の見方の記事にまとめています。
治療は?
梅毒はペニシリン系の抗菌薬で治療します。日本で主に使われるのは次の2つです。
- アモキシシリン(飲み薬):1日3回、4週間飲み続ける
- ベンジルペニシリンベンザチン(筋肉注射):早期の梅毒なら1回(進んだ梅毒では週1回・計3回)。梅毒治療の世界的な標準薬で、日本でも2022年から使えるようになりました
- 注射薬の供給の状況は、梅毒の注射薬の供給についてを見てください
どちらを使うか、どのくらい続けるかは、病期などに合わせて医師が決めます。飲み薬の場合は、症状がよくなっても自己判断でやめず、医師の許可が出るまで飲み続けましょう。
「ペニシリンアレルギー」と言われたことがある人は、ペニシリンアレルギーと言われたことがある人の性感染症の治療も見てください。
治療で知っておきたいことが4つあります。
- 治療のはじめに熱が出ることがある 治療を始めて24時間以内に、発熱・頭痛・筋肉痛などが出ることがあります(ヤーリッシュ・ヘルクスハイマー反応)。菌が一気に死ぬことで起きる反応で、薬のアレルギーではありません。飲み薬では、8日目ごろから薬疹(発疹)が出ることもあるので、気になる症状が出たら医師に相談しましょう。
- パートナーも一緒に検査・治療する 米国CDCは、早期の梅毒と診断された人と90日以内に性的接触があったパートナーは、検査が陰性でも治療することをすすめています。
- 医師が安全と判断するまで、セックスはお休み
- 治療後も血液検査を続ける 治療後はおおむね4週間ごとに血液検査をして、数値(RPR など)がしっかり下がっていくかを確認します。
一度治っても、またかかる
梅毒は、一度治っても、その後の感染を防げるわけではありません。コンドームの使用やパートナーの治療などの対策をしなければ、またかかる可能性があります。
パートナーに伝えるのが気まずい…
わかります。すごく気まずいですよね。 でも梅毒は、症状が出ても消えてしまったり、気づかなかったりするので、いつ、誰からうつったのかは分からないことが多いんです。 「検査で見つかったから、一緒に調べて治そう」でOK。

プレ男性病になるより、修羅場になる方がヤバい!

メル美責め合うより、2人で一緒に治すのがいちばんの近道です。
予防するには
- コンドームを正しく使う。ただし、コンドームで覆われない部分から感染することもあるので、100%は防げません
- 皮膚や粘膜にしこり・潰瘍・発疹などいつもとちがう様子があるときは、性的な接触を控えて早めに受診する
- パートナーが変わったとき、気になることがあったときは検査を受ける
Doxy-PEP(ドキシサイクリンによる予防内服)について
コンドームなしの性行為のあと72時間以内に抗菌薬のドキシサイクリンを飲んで、梅毒・クラミジア・淋菌の感染を減らすことをねらう予防法です。
- 米国の試験(DoxyPEP 試験)では、梅毒の感染が約75〜90%減りました。
- 米国CDCは2024年に、男性と性行為をする男性やトランスジェンダー女性で、過去1年に梅毒・クラミジア・淋菌にかかったことがある人を対象とした指針を出しています。それ以外の人での効果は、十分に確かめられていません。
- 日本ではこの目的での使用は承認されていない使い方(適応外)のため、保険は使えず自費診療になります。副作用や耐性菌が増える心配もあります。
使うかどうかは、自己判断で飲まずに、性感染症を扱う医療機関で医師に相談してください。
くわしくは、Doxy-PEPのページをご覧ください。
まとめ
- 梅毒は日本で大きく増え、2023年に過去最多(15,058人)。先天梅毒も増えている
- しこりや発疹は自然に消えるが、治っていない。放っておくと進行する
- 検査は血液検査。行為から4週間以降、陰性でも12週以降にもう一度
- 治療はペニシリン系の抗菌薬(飲み薬4週間か、注射)。パートナーと一緒に治す
- 一度治っても、またかかることがある
参考文献
- 厚生労働省. 梅毒に関するQ&A. https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/syphilis_qa.html (閲覧日:2026年9月24日)
- 国立健康危機管理研究機構. 梅毒とは. https://id-info.jihs.go.jp/infectious-diseases/syphilis/detail/index.html (閲覧日:2026年9月24日)
- 国立健康危機管理研究機構. 感染症発生動向調査年別一覧(全数把握 五類)-2024-(2024年は2025年11月15日現在報告数。梅毒・先天梅毒の数はこの表による). https://id-info.jihs.go.jp/surveillance/idwr/idwr/2024/year-data/05/index.html (閲覧日:2026年9月24日)
- 国立健康危機管理研究機構. IDWR速報データ 2025年第52週(全数報告 累積報告数、2026年1月6日作成). https://id-info.jihs.go.jp/surveillance/idwr/provisional/2025/52/index.html (閲覧日:2026年9月24日)
- 日本性感染症学会. 性感染症 診断・治療ガイドライン改訂原稿(案)梅毒(2023年4月15日). https://jssti.jp/pdf/baidoku_guideline_230415.pdf (閲覧日:2026年9月24日)
- Centers for Disease Control and Prevention. Sexually Transmitted Infections Treatment Guidelines, 2021: Syphilis. https://www.cdc.gov/std/treatment-guidelines/syphilis.htm (閲覧日:2026年9月24日)
- Luetkemeyer AF, et al. Postexposure Doxycycline to Prevent Bacterial Sexually Transmitted Infections. N Engl J Med. 2023;388(14):1296-1306. https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa2211934 (閲覧日:2026年9月24日)
- Bachmann LH, et al. CDC Clinical Guidelines on the Use of Doxycycline Postexposure Prophylaxis for Bacterial Sexually Transmitted Infection Prevention, United States, 2024. MMWR Recomm Rep 2024;73(No. RR-2). https://www.cdc.gov/mmwr/volumes/73/rr/rr7302a1.htm (閲覧日:2026年9月24日)
- 日本性感染症学会(編). 性感染症 診断・治療ガイドライン2026. 診断と治療社, 2025年12月18日発行.
この記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の診断・治療に代わるものではありません。 気になる症状や不安がある場合は、医療機関にご相談ください。
