梅毒の注射薬が出荷停止中(2026年):持続性ペニシリンの筋肉注射は2027年後半まで出荷再開の見込みなし。いまは飲み薬(アモキシシリン1日3回・28日間)が中心で、注射の残りは妊婦さんを優先。薬は自己判断で減らしたり、やめたりしないで
梅毒の治療に使う持続性ペニシリンの筋肉注射(ベンジルペニシリンベンザチン)が、海外の製造所の機器の故障などのため出荷停止になり、日本性感染症学会によると、出荷再開は2027年後半の見込みです(2026年8月20日時点)。飲み薬のアモキシシリンも一部で限定出荷が続いています。学会は医療関係者に、妊婦さん以外の成人の梅毒ではアモキシシリン1日3回・28日間を第一選択とし、残っている注射薬は妊婦さんを優先するよう呼びかけています。治療を受ける人は、薬を減らさず、最後まで飲みきり、治療後の血液検査を受けましょう。

プレ男梅毒は注射1回で治るって聞いてたのに、病院で「いまは注射がないので飲み薬です」って言われたんだ。大丈夫なのかな……。

メル美薬が足りないってニュース、見たことあるかも。どうなってるんだろう。
こんにちは、Dr. Taro です。 今回は、梅毒の注射薬が出荷停止になっているという話です。日本性感染症学会が医療関係者に向けて出した「ベンジルペニシリンベンザチン水和物製剤およびアモキシシリン水和物製剤 供給制限下における適正使用・適正発注へのご協力のお願い」(2026年8月24日、2026年8月20日時点の情報)をもとに、治療を受ける人が知っておきたいことをまとめました。梅毒そのものについては、梅毒の記事を見てください。
何が起きている?
日本性感染症学会によると、
- 梅毒の治療に使われる持続性ペニシリンの筋肉注射(一般名:ベンジルペニシリンベンザチン、240万単位のシリンジ)は、メーカーの在庫がなくなったあと出荷停止になることが公表されました。出荷再開は、現時点で2027年後半の見込みです
- 60万単位のシリンジも出荷停止が続いていて、再開の時期は未定です
- 原因は、海外の製造所の製造機器の故障と、その後の製造工程の変更にともなう手続きです。同じ製造ラインで各国向けにつくっているため、海外でも同じように不足しています。供給の制限は長く続く可能性があります
- 飲み薬のアモキシシリンも、一部のメーカー・規格で限定出荷が続いていて、注射が使えない間は梅毒の治療でアモキシシリンの需要が増えることが心配されています
医療用医薬品の供給状況は、厚生労働省のサイトで公表されています。
いまの梅毒の治療の考え方
学会が示している、供給が制限されている間の基本的な考え方(成人)は次のとおりです。
| 病気の状態 | 基本的な考え方 |
|---|---|
| 神経梅毒をのぞく成人の梅毒(妊婦さんをのぞく) | アモキシシリン(飲み薬)1日3回・28日間が第一選択。手に入りにくいときは、ミノサイクリン(飲み薬)1日2回・28日間も考える |
| 妊娠中の梅毒 | 残っている持続性ペニシリンの注射が使えるなら、最優先で使う。使えない場合も治療を遅らせず、専門医と相談 |
| 神経梅毒・眼梅毒・耳梅毒 | ペニシリンの点滴(入院を含む) |
- ミノサイクリンは妊婦さんには使いません
- 残っている注射薬は、まず妊婦さんに、そのうえで28日間飲み続けるのがむずかしく、治療の機会を失うおそれが高い人などに使うよう求められています

プレ男注射がなくても、飲み薬でちゃんと治療できるんだね。そのかわり、28日間しっかり飲まないといけないんだ。
治療を受ける人へ:4つのお願い

飲み薬で治療するときは、決められた回数と日数を最後まで守ることがいちばん大切です。症状が消えても、自己判断で減らしたり、やめたりしないでください。
- 決められた量・回数・日数を守る 学会は医療関係者に、薬が足りないことを理由に、量や1日の回数を減らしたり、期間を短くしたりしないよう求めています。飲む側も、症状が消えても自己判断でやめないことが大切です
- 途中で薬がなくならないように 学会は、治療が途中で止まらないよう、必要な薬を最後まで確保できる見通しを確認してから処方するよう求めています。薬が足りなくなりそうなときは、自分で薬局を探しまわる前に、処方した医師や薬局に相談しましょう
- 治療のあとの血液検査を受ける 治療の効果は、同じ方法ではかったRPRなどの数値の推移で確かめます(梅毒の血液検査の見方)
- パートナーも検査・治療を 再感染を防ぐために、パートナーの検査と治療も大切です(性感染症と診断されたら、パートナーにどう伝える?)
ペニシリンアレルギーと言われたことがある人は、ペニシリンアレルギーと言われたことがある人の性感染症の治療も見てください。
妊娠を考えている人へ
- 学会は、もっとも確実な先天梅毒の予防は、妊娠する前に梅毒の治療を終えておくことだとしています
- 妊娠できる年齢の女性とそのパートナーには、梅毒の検査と、早めの治療の完了をすすめています(妊娠中の梅毒)
- 学会によると、持続性ペニシリンの注射で治療を終えたあとにも、先天梅毒になった例が報告されていて、どの治療でも先天梅毒を完全には防げないとされています。妊娠中に治療を受けた人は、赤ちゃんも含めてしっかり経過をみてもらうことが大切です
(更新)2026年10月10日に日本性感染症学会のホームページの「最新ニュース」を確認しました。梅毒の薬の供給についての知らせは、2026年8月24日に掲載された「ペニシリン系抗菌薬を取り扱う医療関係者の皆様へ」が最新で、それより新しい知らせはありませんでした。公開の直前にも、もう一度確認してください
まとめ
- 梅毒の持続性ペニシリン注射は出荷停止。再開は2027年後半の見込み(2026年8月時点)
- いまはアモキシシリン(飲み薬)1日3回・28日間が中心。注射の残りは妊婦さん優先
- 飲み薬は最後まで、減らさず。症状が消えても自己判断でやめない
- 薬が足りなくなりそうなら処方した医師・薬局に相談
- 妊娠を考えているなら、妊娠前に検査と治療を
参考文献
- 一般社団法人日本性感染症学会 梅毒委員会・理事長. ペニシリン系抗菌薬を取り扱う医療関係者の皆様へ:ベンジルペニシリンベンザチン水和物製剤およびアモキシシリン水和物製剤 供給制限下における適正使用・適正発注へのご協力のお願い(2026年8月24日、PDF). https://jssti.jp/pdf/n20260824.pdf (閲覧日:2026年10月10日)
- 厚生労働省. 医療用医薬品供給状況報告. https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/kouhatu-iyaku/04_00003.html (閲覧日:2026年10月10日)
この記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の診断・治療に代わるものではありません。 気になる症状や不安がある場合は、医療機関にご相談ください。
