B型肝炎ってどんな病気?性行為でうつる肝炎と、ワクチンでの予防をやさしく解説
B型肝炎は、性行為でうつる肝炎です。大人の感染の7割は性的接触。症状・検査・治療と、ワクチンで防ぐ方法をまとめました。

プレ男B型肝炎って、性行為でうつるの?
こんにちは、Dr. Taro です。 今回は B型肝炎のお話です。「肝炎」と聞くと性感染症のイメージはないかもしれませんが、実は日本で大人がB型肝炎に感染する原因のいちばんは、性的接触です。そして、ワクチンで防げる性感染症でもあります。
B型肝炎ってどんな病気?
B型肝炎は、B型肝炎ウイルス(HBV)が肝臓に感染して、肝臓に炎症が起きる病気です。 感染した人の血液や体液(精液など)を通じてうつります。
世界では、約2億4,000万人が慢性的にB型肝炎ウイルスに感染していると推計されています。日本は感染している人の割合が低い国ですが、それでもウイルスを持っている人(キャリア)は約110万人と推定されています。
どうやってうつるの?
主な感染経路は3つです。
- 性的接触
- 血液(注射器の使い回し、針刺し事故など)
- 母子感染(出産のときなど)(B型肝炎と妊娠)
日本で2016〜2022年に届け出られた急性B型肝炎1,410例を見ると、感染経路の70%が性的接触でした。男性に多く(女性の約4.5倍)、男性は25〜29歳、女性は20〜24歳がいちばん多い年代です。
増えている「遺伝子型A」
B型肝炎ウイルスには、遺伝子の型(ジェノタイプ)があり、型によって慢性化のしやすさなどがちがいます。日本にはもともと遺伝子型BとCが多く、慢性B型肝炎の人の大部分もこの2つです。
ところが1990年代から、海外から持ち込まれたと考えられる遺伝子型Aが、とくに若い世代と都市部で増えてきました。
- 急性B型肝炎に占める遺伝子型Aの割合は、1990年代半ばから増え、2010年には全国で約65%(首都圏では約70%、地方でも約60%)になったと報告されています
- 2016〜2022年の急性B型肝炎でも、遺伝子型が分かった例の50%が遺伝子型Aでした
遺伝子型Aがやっかいなのは、次の2点です。
- 大人で感染しても、慢性化しやすい:日本の全国調査(急性B型肝炎212例)では、急性B型肝炎のあとにウイルスが残る(慢性化する)ことと独立して関係していたのは、遺伝子型Aだけでした。ただし、遺伝子型Aの例の多くは、本当の慢性化というより、急性肝炎が長引いた例だったとされています
- 症状が弱く、気づきにくい:そのため、本人も知らないうちに性的接触で広げてしまうことがあると考えられています
実際に、慢性B型肝炎の人に占める遺伝子型Aの割合も、2000年の1.7%から、2005年3.4%、2010年4.1%と増えてきました(2015年は4.0%で横ばい)。 2016年から始まった赤ちゃんへのワクチンの定期接種を受けた世代が大人になる2030年代には、遺伝子型Aが減ることが期待されています。
症状と経過
感染してから症状が出るまで(潜伏期間)は、30〜180日ほど(ふつうは90日ほど)です。
大人になってから初めて感染した場合、経過はおおよそ次のとおりです。
- 多く(70〜80%)は、症状がないまま治ります
- 20〜30%は急性肝炎を発症します。だるさ、食欲がない、吐き気などが続き、白目や皮膚が黄色くなる(黄疸)、尿の色が濃くなるなどの症状が出ます
- 急性肝炎のうち約1%は劇症肝炎になり、劇症肝炎になると6〜7割が亡くなる、とても重い状態になります
- 大人になってからの感染で慢性化するのは、5%未満とまれです(ただし、遺伝子型Aは慢性化しやすいとされています)
一方、赤ちゃんや小さい子どものときに感染すると、約95%が慢性化します。慢性化すると、長い年月をかけて肝硬変や肝がんにつながることがあります。
急性B型肝炎と診断された人の約4割は、黄疸が出ていませんでした。症状がはっきりしないまま、感染に気づいていない人も多いと考えられています。
検査はどうやるの?
B型肝炎は血液検査で調べます。いま感染しているかは、主にHBs抗原という検査で分かります。 HBs抗体・HBc抗体と組み合わせた結果の読み方は、B型肝炎の血液検査の見方の記事にまとめています。
- HBs抗原は、感染の機会から早ければ1〜2週、遅いと11〜12週で検出できるようになります
- 目安として、行為から6週(42日)以降に1回目、12週(84日)以降に2回目の検査をすると、よりはっきりします
タイミングは性行為後にやるべきことチェッカーでも確認できます。
厚生労働省は、これまで肝炎ウイルス検査を受けたことがない人は、必ず一度は受けるようにすすめています。保健所や医療機関で受けられます(費用などは自治体によってちがうので、お住まいの自治体に確認してください)。
治療は?
- 急性B型肝炎:症状をやわらげる治療(対症療法)が中心です
- 慢性B型肝炎:抗ウイルス薬(核酸アナログ製剤)などで、ウイルスが増えるのをおさえ、肝硬変や肝がんへの進行を防ぎます。ただし、ウイルスを完全に体から消すことはまだできず、多くの人は薬を長く続ける必要があります
慢性化している人は、症状がなくても、肝臓の状態を定期的に専門の医療機関でチェックすることが大切です。
予防するには—ワクチンがある
B型肝炎は、ワクチンで予防できる性感染症です。
- 0歳の赤ちゃん:2016年10月から、すべての赤ちゃんが対象の定期接種になっています
- 大人:任意接種です。3回接種します。抗体(免疫)がつく割合は、40歳までで95%、40〜60歳で90%、60歳以上では65〜70%と、若いほど高くなります
- 3回接種したあとの予防効果は、20年以上続くと考えられています
- 1割ほどの人は、3回接種しても抗体が十分につかないことがあり、その場合は追加の接種などを検討します
一度抗体がついたら、追加の接種は必要?
米国の予防接種諮問委員会(ACIP)の勧告では、免疫が正常な人で、3回接種を終えて一度しっかり抗体がついた人(接種を終えて1〜2か月後の抗体〈HBs抗体〉が10 mIU/mL以上)は、あとで抗体の値が下がっても予防効果は続いているとされています。そのため、追加の接種(ブースター)は一般にはすすめられていません。
ただし、透析を受けている人や、免疫が弱くなっている人(HIVに感染している人、抗がん剤治療中の人など)は、定期的な抗体検査や追加接種が必要になることがあります。自分がどれにあてはまるかは、医師に相談してください。
性的なパートナーが多い人や、パートナーがB型肝炎ウイルスを持っている人は、ワクチンを考えてみましょう。 ワクチンについて、くわしくは B型肝炎ワクチンのページをご覧ください。
そのほか、
- コンドームを使う(性的接触による感染を防ぐのに有効です)
- 血液や体液との接触を避ける
感染したかもしれないときは
B型肝炎ウイルスに感染したかもしれないとき、7日以内(できれば48時間以内)に「抗HBs人免疫グロブリン(HBIG)」という注射をすると、感染を防げる可能性があります。
ただ、この注射はとても高額です。そのため、主に医療従事者の針刺し事故(労災)や、B型肝炎ウイルスを持つお母さんから生まれた赤ちゃんに使われていて、性行為による感染の予防としては、現実的な選択肢とはいえません。

メル美だからこそ、前もってワクチンを打っておくのがいちばんなんだね。
パートナーにも検査とワクチンを
B型肝炎と分かったら、パートナーにも検査をすすめることが大切です。 パートナーがまだ感染していなければ、ワクチンで予防できます。感染していても、早く分かれば、適切な検査や治療につなげられます。
HIVとB型肝炎の両方に感染している場合の注意は、HIVとB型肝炎の重複感染の記事にまとめています。
B型肝炎の人にだけ重なって感染するD型肝炎については、D型肝炎にまとめています。
まとめ
- B型肝炎は、血液や体液でうつる肝炎。日本の大人の感染の7割は性的接触
- 大人の感染の多くは治るが、急性肝炎・劇症肝炎になることも。遺伝子型Aは慢性化しやすい
- 検査は血液検査(HBs抗原)。肝炎ウイルス検査は一生に一度は受けよう
- ワクチンで予防できる。大人は3回の任意接種
- 感染してからの予防は高額で現実的ではない。前もってワクチンを打っておくのがいちばん
参考文献
- 国立健康危機管理研究機構. B型肝炎. https://id-info.jihs.go.jp/infectious-diseases/hepatitis-b/index.html (閲覧日:2026年9月25日)
- 国立健康危機管理研究機構. B型肝炎(詳細版). https://id-info.jihs.go.jp/infectious-diseases/hepatitis-b/detail/index.html (閲覧日:2026年9月25日)
- 国立健康危機管理研究機構. IASR 44(3), 2023【特集】急性B型肝炎 2016〜2022年. https://id-info.jihs.go.jp/surveillance/iasr/pathogens/vol44/517/517t.html (閲覧日:2026年9月25日)
- World Health Organization. Hepatitis B — Fact sheet(2026年7月28日更新). https://www.who.int/news-room/fact-sheets/detail/hepatitis-b (閲覧日:2026年9月25日)
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- 厚生労働省. ウイルス肝炎について(一般向け). https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou09/04.html (閲覧日:2026年9月25日)
- 国立健康危機管理研究機構. IASR「わが国における急性B型肝炎の現状」. https://id-info.jihs.go.jp/niid/ja/typhi-m/iasr-reference/6675-438r02.html (閲覧日:2026年9月25日)
- 国立健康危機管理研究機構. IASR 44(3), 2023「本邦における慢性B型肝炎患者の遺伝子型の推移」. https://id-info.jihs.go.jp/surveillance/iasr/pathogens/vol44/517/517r02.html (閲覧日:2026年9月25日)
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- Schillie S, et al. Prevention of Hepatitis B Virus Infection in the United States: Recommendations of the Advisory Committee on Immunization Practices. MMWR Recomm Rep 2017;67(No. RR-1):1-31. https://www.cdc.gov/mmwr/volumes/66/rr/rr6701a1.htm (閲覧日:2026年9月25日)
- 日本性感染症学会(編). 性感染症 診断・治療ガイドライン2026. 診断と治療社, 2025年12月18日発行.
この記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の診断・治療に代わるものではありません。 気になる症状や不安がある場合は、医療機関にご相談ください。
