HIVの薬が効かなくなる「薬剤耐性」:いちばんの予防は、ウイルスをおさえ続けること=薬を飲み続けること。PrEPを始めるのは、HIVに感染していないことを確かめてから(気づかない感染中に始めると耐性が10倍以上に)
HIVの治療薬は、ウイルスの遺伝子が変わることで効きにくくなることがあります。これを薬剤耐性といいます。WHO(2026年)によると、ウイルスを検出できないくらいにおさえ続けることが、耐性を防ぐ大きな力になります。治療中の人は、飲み続けることがいちばん大切です。また、PrEP(曝露前予防)を使っている人がHIVに感染した場合、薬剤耐性がよくみられ、気づかないうちに感染していた時期にPrEPを始めると、耐性の割合が10倍以上になるとされています。PrEPを始める前には、必ずHIVの検査を受けましょう。

プレ男HIVの治療中の知り合いが、「飲み忘れが続くと薬が効かなくなるから」って、すごく気をつけてるんだ。薬が効かなくなるって、どういうこと?

メル美抗菌薬が効かない菌みたいに、HIVにもそういうことがあるのかな。
こんにちは、Dr. Taro です。 今回は、HIVの薬剤耐性の話です。WHO(世界保健機関)のファクトシート「HIV drug resistance」(2026年7月)と、国立健康危機管理研究機構エイズ治療・研究開発センター(ACC)の手引きをもとにまとめました。HIVの治療の始め方についてはHIVの治療はいつ始める?を見てください。
薬剤耐性とは
WHOによると、
- HIVの薬剤耐性は、HIVの遺伝子のつくりが変わることで、薬がウイルスのふえるのをおさえにくくなることです
- 新しい種類の薬もふくめ、すべての抗HIV薬に、耐性ができて効きにくくなるおそれがあります
- 抗HIV療法が広まり、2025年末には世界で3,210万人が治療を受けています。治療が広がるとともに、薬剤耐性も問題になってきました
いちばんの予防は「ウイルスをおさえ続ける」こと
WHOによると、
- 治療の目標であるウイルスの抑制を達成し、保ち続けると、薬剤耐性のHIVはあらわれにくくなります
- 世界で第一にすすめられている治療薬(ドルテグラビルをふくむ組み合わせ)は効果が高く、飲み続けていれば90%以上の人でウイルスがおさえられ続けるとされています
- 一方、ウイルスがおさえられていない人、とくに以前に多くの治療を受けた人では、耐性が見つかる割合が高いと報告されています
- 薬剤耐性を防ぐには、よい薬を使えるようにする、治療を続け、飲み続けられるよう支える、ウイルス量の検査を受けやすくする、治療がうまくいかないとわかったら早めに薬を変えることが大切だとしています
ACCの手引きでも、抗HIV療法の目標はウイルスを検出できないくらいにおさえ「続ける」ことで、それができるかはきちんと飲み続けられるかにかかっているとしています。また、治療がうまくいかない原因は必ずしも薬剤耐性とはかぎらず、飲み続けられていない状態で薬だけを変えても、またうまくいかない可能性があるとしています。

HIVの薬は、飲み続けることでウイルスをおさえ、耐性もできにくくなります。飲み忘れが続く、副作用がつらいなど、困っていることがあれば、自己判断でやめずに主治医に相談してください。
治療を始める前から耐性があることも
WHOによると、
- 治療を始める前から薬剤耐性が見つかる人もいます。感染したときに耐性のウイルスがうつった場合や、以前の治療で耐性ができた場合です
ACCの手引きでは、感染してまもない時期(急性HIV感染症)には、耐性のウイルスに重ねて感染している可能性も考えて、治療を始めるかどうかにかかわらず薬剤耐性の検査を行うことがすすめられています。
PrEPを使う人は:始める前に必ずHIV検査を
WHOによると、
- PrEP(曝露前予防)を使っている人がHIVに感染することはまれですが、感染した場合には薬剤耐性がよくみられます。PrEPと治療に使う薬は重なるので、治療の選択肢がせまくなることがあります
- 2020〜2023年の報告をまとめた分析では、テノホビルをふくむ飲み薬のPrEPを使っている間にHIVに感染した310人のうち、20%にテノホビルかラミブジンへの耐性がありました
- とくに、気づかないうちにHIVに感染していた時期にPrEPを始めた場合は、耐性の割合が10倍以上高かったとされています

プレ男だからPrEPを始める前に、HIVに感染していないかを検査で確かめるんだね。
PrEPの使い方と、始める前の検査については、PrEPを見てください。感染してまもない時期は検査で見つけにくいことがあるので、こんなときはHIV検査をも見てください。
(更新)研究班の「抗HIV治療ガイドライン」(2026年3月)の「治療失敗時の薬剤変更」の項によると、AMEDの研究班の調査で、2003〜2023年に診断された新しい未治療の11,414人のうち、薬剤耐性変異をもつ人は8.6%でした(核酸系逆転写酵素阻害薬に関するもの4.9%、インテグラーゼ阻害薬に関するもの0.5%など)。ラミブジン・エムトリシタビンに強い耐性となる変異(M184V/I)は、2019年までの0.3%から2020年以降は0.9%にふえ、その約半数にPrEPを使ったことがあったとされています。
(更新)国立健康危機管理研究機構のIASR(2025年10月号)によると、2024年に解析した新規未治療のHIV-1感染者380例(同年の報告数の約38%)のうち、治療前から薬剤耐性変異(サーベイランス用の耐性変異)をもっていた人は8.5%(32/378)でした。薬の種類別では、核酸系逆転写酵素阻害薬5.8%、非核酸系1.3%、プロテアーゼ阻害薬1.1%、インテグラーゼ阻害薬0.5%でした。ラミブジン・エムトリシタビンへの耐性変異(M184V/I)は3件で、そのうち2件にPrEPの利用歴があり、PrEPを始める前と、使っている間の定期的なHIV検査の大切さが指摘されています。
治療中にウイルス量が少し上がったときのことは、HIVの治療中に、ウイルス量が少し上がったら(ブリップ)を見てください。
まとめ
- 薬剤耐性は、HIVの遺伝子が変わって薬が効きにくくなること
- いちばんの予防は、ウイルスをおさえ続けること。つまり薬を飲み続けること
- 治療がうまくいかないときも、自己判断でやめず主治医に相談
- PrEPを始める前には必ずHIV検査。気づかない感染中に始めると、耐性が10倍以上に
参考文献
- World Health Organization. HIV drug resistance(Fact sheet). https://www.who.int/news-room/fact-sheets/detail/hiv-drug-resistance (閲覧日:2026年10月10日)
- 国立健康危機管理研究機構 エイズ治療・研究開発センター(ACC). 抗HIV治療ガイドライン・治療の手引き:抗HIV療法の開始時期と薬剤選択(Last updated: 2022-09-29). https://www.acc.jihs.go.jp/medics/treatment/handbook/part3/sec01.html (閲覧日:2026年10月10日)
- 国立健康危機管理研究機構 エイズ治療・研究開発センター(ACC). 抗HIV治療ガイドライン・治療の手引き:急性HIV感染症(Last updated: 2022-09-29). https://www.acc.jihs.go.jp/medics/treatment/handbook/part2/no19.html (閲覧日:2026年10月10日)
- 国立健康危機管理研究機構 国立感染症研究所. 2024年の日本の新規未治療HIV-1感染者における薬剤耐性変異の動向(IASR Vol.46 p203-205、2025年10月号). https://id-info.jihs.go.jp/surveillance/iasr/pathogens/vol46/548/548r07.html (閲覧日:2026年10月12日)
- HIV感染症および血友病におけるチーム医療の構築と医療水準の向上を目指した研究班. 抗HIV治療ガイドライン(2026年3月) 「治療失敗」の原因. https://hiv-guidelines.jp/2026/part07-2.htm (閲覧日:2026年10月12日)
この記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の診断・治療に代わるものではありません。 気になる症状や不安がある場合は、医療機関にご相談ください。
