疲れやすい・寒がり・性欲低下やED…いくつものホルモンが足りなくなる「下垂体前葉機能低下症」:脳の下の小さな器官、下垂体のホルモンが十分出ない。原因は腫瘍・炎症・手術など。足りないホルモンを補えば健康な人と同じ生活が送れる
難病情報センター「下垂体前葉機能低下症」(令和7年10月更新、間脳下垂体機能障害に関する調査研究班)によると、下垂体前葉機能低下症は、脳の下にある下垂体の前葉から出る6種類のホルモンの一部またはすべてが十分に出ず、その調節を受ける副腎皮質・甲状腺・性腺などのホルモンも足りなくなる病気です。受給者証をもつ人は20,336人(令和5年度)で、実際はもっと多いと考えられます。原因は腫瘍、炎症、手術後が多く、最近は一部のがんの薬(免疫チェックポイント阻害薬)に関連したものも増えています。足りないホルモンによって、疲れやすさ・低血圧・食欲不振(副腎)、寒がり・肌の乾燥・記憶力の低下(甲状腺)、体脂肪の増加・筋肉の減少・気力の低下(成長ホルモン)、成人男性では性欲低下・ED・男性不妊(性ホルモン)などが出ます。足りないホルモンを補充すれば、多くは健康な人と同じ生活を送れますが、補充は生涯続くことが多く、発熱などのときは副腎のホルモンを増やす必要があります。

プレ男先輩が、性欲が落ちてEDになって、ずっとだるくて寒がりになったんだって。テストステロンを調べたら低くて、さらに調べたら「下垂体」の病気だったらしい。

メル美男性ホルモンが低い原因が、脳のほうにあることもあるんだね。
こんにちは、Dr. Taro です。 今回は、下垂体前葉機能低下症の話です。難病情報センターの「下垂体前葉機能低下症」(令和7年10月更新、間脳下垂体機能障害に関する調査研究班)をもとにまとめました。
どんな病気?
- 下垂体は、脳の下にぶら下がるようにある小さな器官です。その前葉からは、6種類のホルモンが出ていて、副腎、甲状腺、精巣・卵巣(性腺)など、全身のホルモンの出方を調節しています
- 下垂体前葉機能低下症は、このホルモンの一部またはすべてが十分に出なくなり、下垂体のホルモンと、その調節を受ける副腎・甲状腺・性ホルモンなどが足りなくなる病気です
どのくらいの人に?
- 受給者証をもつ人は20,336人(令和5年度)ですが、原因やホルモンの種類がさまざまなため、実際の患者数はもっと多いと考えられています
原因
- 下垂体やその上の間脳に障害が起きたときに起こります。腫瘍、炎症、手術後が最も多い原因です
- 最近は、一部のがんの薬(免疫チェックポイント阻害薬)に関連したものも増えています
- ほとんどの場合、遺伝とは無関係です
症状(足りなくなるホルモンによってちがう)
| 足りなくなるホルモン | 出やすい症状(成人) |
|---|---|
| 副腎皮質ホルモン | 疲れやすい、血圧が低い、食欲がなくやせる、血糖やナトリウムが低く頭がぼーっとする・意識がなくなる |
| 甲状腺ホルモン | 寒がり、低体温、脱毛、皮膚の乾燥、脈が遅い、声が低くゆっくり話す、記憶力・集中力の低下 |
| 成長ホルモン | 体脂肪の増加、筋肉の減少、骨粗しょう症、気力・体力の低下 |
| 性ホルモン | 成人男性:性欲低下、ED、男性不妊。成人女性:無月経、不妊 |

プレ男だるさ、寒がり、性欲低下やED…ホルモンが何種類も足りなくなると、症状もいろいろ重なるんだ。
治療と経過
- 原因の病気(腫瘍や炎症など)があれば、まずその治療を行います。そのうえで、足りないホルモンを補充します
- 命の維持に必要なのは副腎皮質ホルモンと甲状腺ホルモンで、足りなければ飲み薬で補います
- 性ホルモンが足りないときは、飲み薬や注射で補います。これから子どもを望む人は治療法がちがうので、内分泌内科、泌尿器科、婦人科などの専門医に相談することがすすめられています
- 成人の成長ホルモンの補充も、代謝の改善や生活の質の向上に役立つことがわかり、自己注射で行われています
- 元の病気の治療が終わったり、病状が安定したりしていれば、足りないホルモンを補うことで、健康な人と同じ生活を送ることができます
日常生活の注意
- 下垂体の機能が自然に回復することはまれで、補充は長期間(多くは生涯)続ける必要があります。自己判断でやめたり量を変えたりしないでください
- 感染症、発熱、けがなどのストレスのときは、副腎皮質ホルモンを2〜3倍に増やすことが必要になります。急に副腎のホルモンが足りなくなったときのための自己注射もあります
- 万一のときのために、副腎皮質ホルモンを飲んでいることを示すカードを持ち歩くことがすすめられています(主治医に相談しましょう)

下垂体前葉機能低下症では、成人男性で性欲低下やED、男性不妊が起こることがあります。足りないホルモンを補充すれば、多くは健康な人と同じ生活を送れますが、補充は長く続ける必要があり、発熱などのときは副腎のホルモンを増やす必要があります。
- テストステロンの検査とLHについてはテストステロンの血液検査、下垂体の別の病気は性欲低下・EDの原因になるプロラクチノーマ、副腎のホルモン不足はアジソン病の記事もどうぞ

メル美原因がわかって補充すれば、ふつうの生活に戻れることが多いんだね。
まとめ
- 下垂体前葉のホルモンが十分出ず、副腎・甲状腺・性ホルモンなども足りなくなる
- 原因は腫瘍・炎症・手術後が多い。がんの薬に関連したものも増加
- 疲れやすい・低血圧・寒がり・記憶力低下・筋肉の減少、男性は性欲低下・ED・不妊
- 足りないホルモンを補充すれば、多くは健康な人と同じ生活
- 補充は長く(多くは生涯)。発熱などのときは副腎のホルモンを増やす
参考文献
- 難病情報センター. 下垂体前葉機能低下症(指定難病78)(情報更新日:令和7年10月、間脳下垂体機能障害に関する調査研究班). https://www.nanbyou.or.jp/entry/4017 (閲覧日:2026年10月12日)
この記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の診断・治療に代わるものではありません。 気になる症状や不安がある場合は、医療機関にご相談ください。