セイコーエプソンの強みとは:インクジェットプリンターなどのプリンティングソリューションズがセグメント利益の約8割、プロジェクター・ロボット・ウオッチ・水晶デバイスも。2026年3月期は事業利益838億円(−6.5%)、米国関税とFieryののれんの減損で当期利益は−67.0%
セイコーエプソンを、2026年3月期 決算短信〔IFRS〕(連結)(2026年5月1日、東証の適時開示)で分析しました。売上収益1兆4,133億円(+3.7%)、事業利益838億円(−6.5%、事業利益率5.9%、米国関税の影響などで費用増)、営業利益496億円(−34.0%、連結子会社Fieryののれんの減損損失259億円)、親会社の所有者に帰属する当期利益182億円(−67.0%)、ROE2.2%、親会社所有者帰属持分比率55.6%。セグメント利益は、プリンティングソリューションズ1,206億円(−3.4%、大容量インクタンクモデルが新興国で増加、インクカートリッジは減少)、ビジュアルコミュニケーション123億円(−57.8%、プロジェクター)、マニュファクチャリング関連・ウエアラブル108億円(前期は損失、水晶デバイスなど)。年74円の配当(配当性向130.3%)、2027年3月期は事業利益900億円・当期利益590億円・年80円の予想。キヤノンとの比較と、見ておくべき数字も。売買をすすめるものではありません。

メル美エプソンって、家にあるプリンターの会社だよね

プレ男決算短信を見ると、インクを詰め替える大容量インクタンクのプリンターが、新興国で売れているんだって。プロジェクターやロボット、腕時計もつくっているみたい
企業分析の連載、146社目はセイコーエプソンです。2026年3月期 決算短信〔IFRS〕(連結)(2026年5月1日)で確認しました。会社のサイトは今回の確認方法では読めなかったため、東京証券取引所の適時開示に載っている同じ決算短信を使っています。比較には、この連載のキヤノンの強みとはで確認した数字を使っています。
この記事は会社のしくみと数字の解説で、セイコーエプソン株の売買をすすめるものではありません。目標株価や「買い時」も書きません。投資判断はご自身の責任でお願いします。特定の商品をすすめるものでもありません。
1. ひとことで言うと
オフィス・ホーム用や商業・産業用のインクジェットプリンター、プリントヘッド、消耗品を中心に、液晶プロジェクター、産業用ロボット、ウオッチ、水晶デバイス・半導体なども手がける会社
| 項目(IFRS・連結) | 2026年3月期 | 前期比 |
|---|---|---|
| 売上収益 | 1兆4,133億円 | +3.7% |
| 事業利益(会社の指標) | 838億円 | −6.5% |
| 事業利益率 | 5.9% | 前期 6.6% |
| 営業利益 | 496億円 | −34.0% |
| 親会社の所有者に帰属する当期利益 | 182億円 | −67.0% |
| ROE(親会社所有者帰属持分当期利益率) | 2.2% | 前期 6.8% |
| 親会社所有者帰属持分比率 | 55.6% | 前期 55.3% |
| 配当 | 年74円(配当性向130.3%) | 前期 74円 |
- 事業利益は、売上収益から売上原価と販売費及び一般管理費を引いた、会社の指標です
- 事業利益は、増収や為替のプラス影響があった一方、米国関税の影響などで費用が増え、減りました
- 営業利益は、商業・産業プリンティング事業に含まれる連結子会社Fieryののれんの減損損失259億円などで大きく減りました。会社は、商業印刷・産業印刷の市場で、米国の関税政策の影響などで設備投資の抑制が進み、市場が想定以上に悪化したためとしています
2. 何で稼いでいるか
| セグメント | 主な製品(決算短信の記載) | 売上収益 | セグメント利益 |
|---|---|---|---|
| プリンティングソリューションズ | オフィス・ホーム用インクジェットプリンター、商業・産業用インクジェットプリンター、プリントヘッド、POS関連製品、消耗品など | 1兆295億円(+5.0%) | 1,206億円(−3.4%) |
| ビジュアルコミュニケーション | 液晶プロジェクター、スマートグラスなど | 1,814億円(−11.0%) | 123億円(−57.8%) |
| マニュファクチャリング関連・ウエアラブル | 産業用ロボット、ウオッチ、水晶デバイス、半導体、金属粉末など | 2,061億円(+13.6%) | 108億円(前期は32億円の損失) |
- 3つのセグメント利益の合計1,437億円のうち、プリンティングソリューションズが約84%です(計算値)
3. 強み
会社の資料にある事実から、この連載で強みと考えた点です。
① 大容量インクタンクモデル
- インクカートリッジモデルの本体は減った一方、大容量インクタンクモデルの本体は中東・アフリカの新興国市場やアジア、南米などを中心に増えました。消耗品では、インクボトルとオフィス共有インクジェットプリンターの消耗品の販売が増えました
② 商業・産業用とプリントヘッド
- 商業・産業用インクジェットプリンターは、案件の獲得や新製品の投入で増収でした。プリントヘッドの外販ももっています
③ ロボット・水晶デバイスの回復
- マニュファクチャリング関連・ウエアラブルは、ロボットなどのマニュファクチャリングソリューションズやマイクロデバイス(水晶デバイスなど)の増収で、黒字に転換しました
4. 弱み・リスク
① 米国関税
- プリンティングソリューションズは、増収や為替のプラスがあった一方、米国関税のマイナス影響が大きく減益でした
② インクカートリッジの減少
- 大容量インクタンクモデルへのシフトもあり、インクカートリッジの販売が減りました
③ プロジェクターと減損
- ビジュアルコミュニケーションは、中国市場の悪化や欧米での販売減で利益が57.8%減りました。Fieryののれんのほか、マニュファクチャリングソリューションズでも減損損失(13億円)を計上しました
5. ライバルとの比較
プリンター・複合機のキヤノンと並べます。決算期(キヤノンは12月期)、会計基準(キヤノンは米国基準)、事業の範囲が違うので、おおまかな比較です。
| セイコーエプソン(2026年3月期) | キヤノン(2025年12月期) | |
|---|---|---|
| 売上 | 1兆4,133億円(+3.7%) | 4兆6,247億円(+2.5%) |
| 利益(事業/営業) | 838億円(事業利益、−6.5%) | 4,554億円(営業利益、+62.8%) |
| 利益率 | 5.9% | 9.8% |
| ROE | 2.2% | 9.7% |
| 自己資本(帰属持分・株主資本)比率 | 55.6% | 56.9% |
- 規模・利益率ともキヤノンが上回ります(→キヤノンの強みとは)。印刷・画像の技術をもつ会社は富士フイルムホールディングスの強みとはも
6. 投資プレイヤー的チェックポイント
エプソンの決算を見るときに、毎回確かめておきたい数字です(売買の判断基準ではありません)。
| 見ておく数字 | 2026年3月期 | どこに書いてある |
|---|---|---|
| プリンティングソリューションズのセグメント利益 | 1,206億円 | 決算短信(報告セグメントごとの業績) |
| 事業利益と営業利益の差(減損など) | 838億円と496億円 | 決算短信のサマリー |
| 会社の業績予想 | 2027年3月期 売上収益1兆4,500億円、事業利益900億円、当期利益590億円 | 決算短信のサマリー |
| 配当 | 年74円、2027年3月期予想80円 | 決算短信 |
- 指標の読み方はPER・PBR・ROE・配当利回りの見方へ

メル美プリンターが利益の中心だけど、関税と減損で利益が減ったのね。来年に当期利益がどこまで戻るかを見ておきたいな
まとめ
- エプソンは、インクジェットプリンターが中心で、プロジェクター・ロボット・ウオッチ・水晶デバイスも手がける会社
- 2026年3月期は事業利益838億円(−6.5%)、当期利益182億円(−67.0%)
- セグメント利益の約84%がプリンティングソリューションズ
- 米国関税と、Fieryののれんの減損259億円が逆風
- 2027年3月期は事業利益900億円・年80円の予想
参考文献
- セイコーエプソン. 2026年3月期 決算短信〔IFRS〕(連結)(2026年5月1日). https://www2.jpx.co.jp/disc/67240/140120260429514136.pdf (閲覧日:2026年10月12日)
- キヤノン. 2025年12月期 決算短信〔米国基準〕(連結)(2026年1月29日). https://global.canon/ja/ir/results/2025/rslt2025j.pdf (閲覧日:2026年10月12日)
この記事は投資についての一般的な情報提供を目的としたもので、特定の銘柄・金融商品の売買をすすめるものではありません。投資判断はご自身の責任でお願いします。