武田薬品工業の強みとは:売上収益4兆5,057億円の約半分が米国。消化器系疾患・希少疾患・血漿分画製剤・オンコロジー・ワクチン・ニューロサイエンスの6つの領域。2026年3月期はADHD治療薬の後発品の影響で減収、ROE2.6%。累進配当で年200円、社債・借入金4兆8,818億円
武田薬品工業を、2026年3月期 決算短信〔IFRS〕(連結)(2026年5月13日、東証の適時開示)で分析しました。売上収益4兆5,057億円(−1.7%)、営業利益4,088億円(+19.3%)、会社が重視するCore営業利益1兆1,725億円(+0.8%)、親会社の所有者に帰属する当期利益1,918億円(+77.7%)、ROE2.6%、親会社所有者帰属持分比率50.3%。売上収益の約48%が米国(2兆1,648億円、−9.0%)。領域別は消化器系疾患1兆4,075億円(潰瘍性大腸炎・クローン病の治療薬9,580億円)、血漿分画製剤1兆575億円、希少疾患7,627億円、オンコロジー5,801億円、ニューロサイエンス4,143億円(−26.8%、米国でADHD治療薬の後発品が浸透し2,032億円・−42.0%)、ワクチン596億円。社債及び借入金は4兆8,818億円。配当は年200円(配当性向164.3%)で累進配当を維持、2027年3月期は年204円の予想。会社は「ROE5%を上回る水準の財務上当期利益」を目標に掲げています。第一三共との比較と、見ておくべき数字も。売買をすすめるものではありません。

プレ男武田薬品って、日本の製薬会社だよね。日本で稼いでいるんでしょ?

メル美決算短信を見ると、日本の売上は1割くらいで、いちばん大きいのは米国みたいよ
企業分析の連載、87社目は武田薬品工業です。2026年3月期 決算短信〔IFRS〕(連結)(2026年5月13日)で確認しました。会社のサイトは今回の確認方法では読めなかったため、東京証券取引所の適時開示に載っている同じ決算短信を使っています。比較には、この連載の第一三共の強みとはで確認した数字を使っています。
この記事は会社のしくみと数字の解説で、武田薬品工業株の売買をすすめるものではありません。目標株価や「買い時」も書きません。投資判断はご自身の責任でお願いします。特定の薬をすすめるものでもありません。薬は商品名を使わず、治療の対象で書いています。
1. ひとことで言うと
消化器系・炎症性疾患、ニューロサイエンス、オンコロジー(がん)を重点に、血漿分画製剤やワクチンも世界で売る製薬会社。売上のいちばん大きい国は米国
| 項目(IFRS・連結) | 2026年3月期 | 前期比 |
|---|---|---|
| 売上収益 | 4兆5,057億円 | −1.7% |
| 営業利益 | 4,088億円 | +19.3% |
| Core営業利益(会社が重視する指標) | 1兆1,725億円 | +0.8% |
| 親会社の所有者に帰属する当期利益 | 1,918億円 | +77.7% |
| ROE(親会社所有者帰属持分当期利益率) | 2.6% | 前期 1.5% |
| 親会社所有者帰属持分比率 | 50.3% | 前期 48.7% |
| 配当 | 年200円(配当性向164.3%) | 前期 196円 |
- 「Core営業利益」は、会社が独自に定義したIFRSに準拠しない指標です(定義は会社の財務補足資料)
- 営業利益が増えたのは、主にADHD治療薬に関する無形資産の償却が終わったことなどによります
2. 何で稼いでいるか
6つのビジネスエリア
| 領域 | 売上収益 | 前期比 |
|---|---|---|
| 消化器系疾患 | 1兆4,075億円 | +3.7% |
| 血漿分画製剤 | 1兆575億円 | +2.4% |
| 希少疾患 | 7,627億円 | +1.3% |
| オンコロジー | 5,801億円 | +3.5% |
| ニューロサイエンス | 4,143億円 | −26.8% |
| ワクチン | 596億円 | +7.6% |
- 最大の製品は、潰瘍性大腸炎・クローン病の治療薬で、売上は9,580億円(+4.8%)です。皮下注射の製剤が伸びました
- ニューロサイエンスは、米国でADHD治療薬の後発品(ジェネリック)が浸透し、この薬の売上は2,032億円(−42.0%)に減りました
地域別
| 地域 | 売上収益 | 前期比 |
|---|---|---|
| 米国 | 2兆1,648億円 | −9.0% |
| 欧州およびカナダ | 1兆1,462億円 | +8.6% |
| 日本 | 4,331億円 | +3.5% |
| 中南米 | 2,541億円 | +7.8% |
| 中国 | 1,951億円 | +1.8% |
- 売上収益の約48%が米国、日本は約10%です
3. 強み
会社の資料で確かめられる事実から、強みと考えられる点を挙げます。
① 消化器系疾患の大型製品
- 潰瘍性大腸炎・クローン病の治療薬は9,580億円で、欧州・カナダでは皮下注射の製剤の使用拡大で+12.9%でした
② 血漿分画製剤
- 1兆円を超える売上の、2番目に大きい領域です
③ 強い現金創出力
- 営業活動によるキャッシュ・フローは1兆414億円です。会社は「強い現金創出力」を持つとしています
4. 弱み・リスク
① 特許切れと後発品
- 米国でADHD治療薬の後発品が浸透し、ニューロサイエンスは26.8%減でした。慢性特発性便秘症の治療薬も、2025年1月から米国で複数の後発品が参入して62.7%減でした。主力の薬の独占販売期間が終わると、売上が急に減ります
② 米国の制度
- 一部の製品は、米国のメディケア・パートDの再設計や340Bプログラムの拡大の影響を受けたとしています
③ 低いROEと大きな借入
- ROEは2.6%。社債及び借入金は4兆8,818億円です。会社は、事業構造再編費用などの削減と有利子負債の返済で、まず「配当の持続性を確保する、ROE5%を上回る水準の財務上当期利益」を目標にしています
- 配当性向は164.3%で、当期利益より多くの配当を払っています(→配当方針の読み方)
5. ライバルとの比較
同じ日本の大手製薬、第一三共と比べます。どちらもIFRS・2026年3月期です(「コア営業利益」は各社の定義が違います)。
| 武田薬品工業 | 第一三共 | |
|---|---|---|
| 売上収益 | 4兆5,057億円(−1.7%) | 2兆1,230億円(+12.6%) |
| 営業利益 | 4,088億円(+19.3%) | 2,291億円(−31.0%) |
| ROE | 2.6% | 15.8% |
| 配当 | 年200円 | 年78円 |
6. 投資プレイヤー的チェックポイント
武田薬品の決算を見るときに、毎回確かめておきたい数字です(売買の判断基準ではありません)。
| 見ておく数字 | 2026年3月期 | どこに書いてある |
|---|---|---|
| 領域別・製品別の売上収益 | 消化器系疾患1兆4,075億円など | 決算短信(売上収益) |
| 米国の売上収益 | 2兆1,648億円(−9.0%) | 決算短信(地域別) |
| 社債及び借入金 | 4兆8,818億円 | 決算短信(財政状態) |
| 会社の業績予想 | 2027年3月期 売上収益4兆6,400億円、営業利益4,200億円、Core営業利益1兆1,600億円 | 決算短信のサマリー |
| 配当 | 年200円、2027年3月期予想204円 | 決算短信 |
- 会社は、今後12か月の間に複数の新薬の上市を予定しているとしています
- 指標の読み方はPER・PBR・ROE・配当利回りの見方へ

メル美大きな薬の特許が切れると、売上が一気に減るのね。新しい薬がそれを補えるかと、借入の返済を見ておきたいな
まとめ
- 武田薬品は、6つの領域の薬を世界で売る製薬会社。売上収益の約48%が米国
- 2026年3月期は売上収益4兆5,057億円(−1.7%)、Core営業利益1兆1,725億円
- 最大の製品は潰瘍性大腸炎・クローン病の治療薬(9,580億円)
- ADHD治療薬の後発品でニューロサイエンスが26.8%減
- ROEは2.6%、借入は4兆8,818億円。会社はROE5%超と累進配当を目標に
参考文献
- 武田薬品工業. 2026年3月期 決算短信〔IFRS〕(連結)(2026年5月13日). https://www2.jpx.co.jp/disc/45020/140120260513528342.pdf (閲覧日:2026年10月10日)
- 第一三共. 2026年3月期 決算短信〔IFRS〕(連結)(2026年5月11日). https://www.daiichisankyo.co.jp/files/investors/library/quarterly_result/2025/FY2025Q4_Financial_Results_J.pdf (閲覧日:2026年10月10日)
この記事は投資についての一般的な情報提供を目的としたもので、特定の銘柄・金融商品の売買をすすめるものではありません。投資判断はご自身の責任でお願いします。