第一三共の強みとは:抗体に薬をつないだ「ADC(抗体薬物複合体)」のがんの薬を世界で売る。2026年3月期は売上収益2兆1,230億円(+12.6%)、コア営業利益3,600億円(+15.1%)。製造委託先への損失補償などで営業利益は2,291億円(−31.0%)
第一三共を、2026年3月期 決算短信〔IFRS〕(連結)(2026年5月11日)で分析しました。売上収益2兆1,230億円(+12.6%)、会社が重視するコア営業利益3,600億円(+15.1%)、営業利益2,291億円(−31.0%)、親会社の所有者に帰属する当期利益2,599億円(−12.1%)、ROE15.8%。主力は抗HER2のADC(一般名:トラスツズマブ デルクステカン)などで、ADC(抗体薬物複合体)を5つ開発する「5DXd ADCs and Next Wave」戦略を進めています。ユニット別の売上収益は、欧米のがん領域のオンコロジービジネスユニット6,088億円(+31.3%)、ジャパンビジネスユニット4,858億円、中国・ブラジルなどのASCA2,510億円。研究開発費は4,621億円、アストラゼネカとのプロフィット・シェアの増加で販管費も増えました。営業利益の減少は、製造委託先への損失補償などの一過性の費用によるものです。2027年3月期はコア営業利益3,600億円・年100円の予想。中外製薬との比較と、見ておくべき数字も。医薬品は一般名で書いています。売買をすすめるものではありません。

プレ男第一三共って、がんの新しい薬で世界的に有名になったって聞いたよ。どんな薬なの?

メル美売上は伸びてるのに、営業利益は減ったってニュースもあったよね
企業分析の連載、38社目は第一三共です。2026年3月期 決算短信〔IFRS〕(連結)(2026年5月11日)で確認しました。比較には、この連載の中外製薬の強みとはで確認した中外製薬の数字を使っています。
この記事は会社のしくみと数字の解説で、第一三共株の売買をすすめるものではありません。目標株価や「買い時」も書きません。投資判断はご自身の責任でお願いします。このサイトの決まりで、医療用医薬品は商品名ではなく一般名で書いています。また、薬の効果や使い方を説明する記事ではありません。
1. ひとことで言うと
抗体に薬をつないだ「ADC(抗体薬物複合体)」という種類のがんの薬を中心に、世界で医薬品を売る製薬会社
| 項目(IFRS・連結) | 2026年3月期 | 前期比 |
|---|---|---|
| 売上収益 | 2兆1,230億円 | +12.6% |
| コア営業利益(会社が重視する指標) | 3,600億円 | +15.1% |
| 営業利益 | 2,291億円 | −31.0% |
| 親会社の所有者に帰属する当期利益 | 2,599億円 | −12.1% |
| ROE(親会社所有者帰属持分当期利益率) | 15.8% | 前期 17.9% |
| 親会社所有者帰属持分比率 | 41.5% | 前期 47.0% |
| 配当 | 年78円(配当性向55.5%) | 前期 60円 |
- コア営業利益は、営業利益から、固定資産の売却損益、減損損失、損害賠償や和解に伴う損益などの一過性の損益を除いた利益です
- 営業利益が減ったのは、製造委託先への損失補償などを一過性の費用として計上したためです
ADCとは(決算短信の説明)
- ADC(Antibody Drug Conjugate、抗体薬物複合体)は、抗体医薬と薬物(低分子医薬)をつないだもので、がん細胞への攻撃力を高めた薬剤だとしています。会社独自の薬物とリンカーを使ったものを「DXd ADC」と呼んでいます
2. 何で稼いでいるか
ユニット別の売上収益(2026年3月期)です。
| ユニット | 中身(決算短信の記載から) | 売上収益 | 前期比 |
|---|---|---|---|
| オンコロジー | 米国・欧州のがんの製品 | 6,088億円 | +31.3% |
| ジャパン | 日本の医療用医薬品・ワクチン | 4,858億円 | +1.9% |
| ASCA | 中国・ブラジルなどアジア・中南米 | 2,510億円 | +18.8% |
| ヘルスケア | 一般用医薬品など | 907億円 | +4.7% |
- 伸びのもとは、抗HER2のADC(一般名:トラスツズマブ デルクステカン)などの伸長と、ダトポタマブ デルクステカンの売上の寄与、円安(増収影響218億円)です
3. 強み
会社の資料で確かめられる事実から、強みと考えられる点を挙げます。
① ADCの技術
- 5つのDXd ADC(トラスツズマブ デルクステカン、ダトポタマブ デルクステカン、パトリツマブ デルクステカン、イフィナタマブ デルクステカン、ラルドタツグ デルクステカン)を軸にした「5DXd ADCs and Next Wave」戦略を進めています
② 世界での販売
- オンコロジービジネスユニット(米国・欧州)の売上は+31.3%。中国・ブラジルでも伸びています
③ 研究開発への投資
- 研究開発費は4,621億円(+6.8%)で、売上収益の約2割です
4. 弱み・リスク
① 特定の薬への依存
- 成長の多くが、特定のADCに支えられています
② 提携先との利益の分け合い
- 販管費は、アストラゼネカとのプロフィット・シェアの増加などで1,348億円増えました。提携で開発・販売する薬では、利益の一部を提携先と分け合います
③ 一過性の費用と開発の不確実さ
- 2026年3月期は製造委託先への損失補償などで営業利益が減りました。新しい薬の開発には失敗もあります
5. ライバルとの比較
中外製薬と比べます。決算期(中外は12月期)が違うので、おおまかな比較です。
| 第一三共(2026年3月期) | 中外製薬(2025年12月期) | |
|---|---|---|
| 売上収益 | 2兆1,230億円(+12.6%) | 1兆2,579億円(+7.5%) |
| 営業利益 | 2,291億円(10.8%) | 5,988億円(47.6%) |
| 会社のコア営業利益 | 3,600億円 | 6,232億円 |
| 稼ぎ方 | 自社のADCを提携先と世界で販売 | 自社の抗体医薬をロシュを通じて販売 |
- 売上は第一三共が大きく、利益と利益率は中外製薬が大きく上回ります(→中外製薬の強みとは)
6. 投資プレイヤー的チェックポイント
第一三共の決算を見るときに、毎回確かめておきたい数字です(売買の判断基準ではありません)。
| 見ておく数字 | 2026年3月期 | どこに書いてある |
|---|---|---|
| コア営業利益 | 3,600億円 | 決算短信 |
| オンコロジーの売上収益 | 6,088億円 | 決算短信(ユニット別) |
| 研究開発費 | 4,621億円 | 決算短信 |
| 会社の業績予想 | 2027年3月期 売上収益2兆2,800億円、コア営業利益3,600億円、営業利益3,150億円 | 決算短信のサマリー |
| 配当 | 年78円、2027年3月期予想100円 | 決算短信 |
- コア営業利益と営業利益の差(一過性の費用)を確かめることが大切です
- 指標の読み方はPER・PBR・ROE・配当利回りの見方へ

メル美売上は伸びているけど、一度きりの費用で営業利益が減った。会社の「コア」の数字と、ふつうの営業利益を分けて見るのね
売上収益の約半分が米国の製薬会社は武田薬品工業の強みとはも参考にしてください。
まとめ
- 第一三共は、ADC(抗体薬物複合体)のがんの薬が柱の製薬会社
- 2026年3月期は売上収益2兆1,230億円(+12.6%)、コア営業利益3,600億円(+15.1%)
- 営業利益は製造委託先への損失補償などで2,291億円(−31.0%)
- 伸びたのは欧米のがん領域(+31.3%)と中国・ブラジル
- リスクは特定の薬への依存、提携先との利益の分け合い、開発の不確実さ
参考文献
- 第一三共. 2026年3月期 決算短信〔IFRS〕(連結)(2026年5月11日). https://www.daiichisankyo.co.jp/files/investors/library/quarterly_result/2025/FY2025Q4_Financial_Results_J.pdf (閲覧日:2026年10月10日)
- 中外製薬. 2025年12月期 決算短信〔IFRS〕(連結)(2026年1月29日). https://www.chugai-pharm.co.jp/ir/reports_downloads/tanshin.html (閲覧日:2026年10月10日)
この記事は投資についての一般的な情報提供を目的としたもので、特定の銘柄・金融商品の売買をすすめるものではありません。投資判断はご自身の責任でお願いします。