
プレ男「累」って、なんて読むの?

メル美「かさね」。殺された妻の名前なの。夫への怨みが、20年たってから…という怪談だよ。
今回は、田中貢太郎の怪談「累物語」(かさねものがたり)です。青空文庫の本文(底本:春陽文庫『怪奇・伝奇時代小説選集14 累物語 他10篇』、底本の親本:改造社『怪談全集 歴史篇』1928年)で読みました。本文中の「」の言葉は、青空文庫の本文からの引用です。
※この作品には、人が殺される場面と、子どもが怨霊にとりつかれる場面があります。作中では、夫が妻の容貌を嫌ったことが動機として語られますが、この記事はその見方に同意するものではありません。
絹川の土橋で
- 承応2年8月11日の夕暮れ。下総の国岡田郡羽生村の与右衛門と妻の累は、朝から引いた豆をたくさん背負って、畑から帰るところでした
- 「わたしの荷は、重くてしようがない、すこし別けて持ってくれてもいいじゃないか」。与右衛門は言います。「絹川の向うまで往ったら、皆、おれがいっしょにして、持ってやる」
- 土手から河原へおりて、土橋にかかったところで、与右衛門はいきなり累の荷に手をかけて、突き飛ばしました。豆の荷のせいで浮かびあがった累を、与右衛門は川に飛びこんで、荷物ごと水の中へ押しこみました
「あやまって河に落ちて」
- 与右衛門は、累があやまって川に落ちて死んだと言いつくろい、亡骸を背負って帰って、旦那寺の法蔵寺の墓地に葬ります
- 与右衛門は、もとは貧しい百姓の息子で、累の家の婿養子でした。累の家には田畑が多く、豊かでした。与右衛門は、累の容貌を嫌い、「やかましい」と疎んじて、ほかの女を後妻に迎えたいばかりに、累を殺したのでした
つぎつぎに死ぬ妻たち
- だれにも知られずにすんだと喜んだ与右衛門は、すぐに後妻を迎えます。ところが、その妻はすぐに病気で死んでしまう
- 三人目の妻も、すぐに病死。四人目、五人目も——
- 六人目の妻だけはすぐには死なず、女の子を生みました。名はお菊。その妻も、寛文11年、お菊が13歳の8月に亡くなります

プレ男迎えた妻が、みんな死んでいく…。こわすぎる。
「わしは累じゃ」
- 年をとった与右衛門は、亡くなった妻の甥・金五郎を養子にして、お菊と夫婦にしました。その翌年の正月から、お菊はあやしい病にかかります
- 23日、お菊は口から泡をふいて床の上をのたうちまわり、気を失い、息をふきかえすと、与右衛門をにらみつけました
- 「おのれは、よくもよくも絹川で、わしを殺したな、わしはお菊じゃない、わしは二十年前に、おのれに殺された累じゃ」「おのれの女房は、皆とり殺した、これからおのれの命をとる番じゃ」
- 与右衛門は法蔵寺へ逃げ、金五郎は実家へ逃げかえりました
村人たちの前で
- お菊は、集まった村人たちにも叫びます。与右衛門は、わしの容貌が悪いからと、わしを絹川へ突き落とした、その怨みを晴らすために来た。法蔵寺に隠れている与右衛門を呼んで、対決させてくれ
- 呼びもどされた与右衛門は「あれは狐か狸が憑いておる」と言いますが、お菊は言います。「おのれのしたことを何人も知らないと思っておるか、たしかな証拠人があるぞ」——「法恩寺村の清右衛門じゃ」
- 与右衛門は何も言えませんでした。村人たちは、与右衛門を出家させて、累の菩提を弔わせることにします
念仏
- 名主がお菊にたずねます。怨みは与右衛門にあるのに、なぜお菊を苦しめるのか。お菊は答えました。与右衛門にとりついてすぐ責め殺したのでは懲らしめにならない、「お菊を悩ますのも、与右衛門に苦痛を見せるためであります」
- 祈祷者が経を読むと、お菊はさえぎります。「そんなお経を幾万遍読んでも駄目じゃ、わしの地獄の業数を救うてくれるなら、念仏を唱えてくれ」
- 26日の夜、法蔵寺の住職が念仏を興行すると、累の怨霊は退散し、お菊は元にもどりました。けれど怨霊はその後も二度ばかり来てお菊を悩ませたので、弘経寺の祐天上人が教化して、成仏させた——と物語は結ばれます

メル美いちばん苦しんだのは、なにも悪くないお菊さんだね…。

田中貢太郎の「累物語」で、絹川で殺された累の怨霊は、20年後に娘のお菊の口をかりて、与右衛門の罪を村人たちの前で語ります。怨霊は、弘経寺の祐天上人の教化によって成仏したと結ばれています。
まとめ
- 「累物語」は田中貢太郎の短い怪談
- 承応2年、下総の羽生村。婿養子の与右衛門は、妻の累を絹川に突き落として殺す
- 後妻たちはつぎつぎに病死。六人目の妻が生んだ娘お菊
- 20年後、お菊の口から「わしは累じゃ」。村人たちの前で罪をあばく
- 念仏で退散し、最後は祐天上人の教化で成仏
- 裏切られた妻の怨霊は四谷怪談、『雨月物語』の吉備津の釜、田中貢太郎のおいてけ堀もどうぞ
参考文献
- 田中貢太郎. 累物語(底本:『怪奇・伝奇時代小説選集14 累物語 他10篇』春陽文庫、春陽堂書店). 青空文庫. https://www.aozora.gr.jp/cards/000154/card42318.html (閲覧日:2026年10月12日)
この記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の診断・治療に代わるものではありません。 気になる症状や不安がある場合は、医療機関にご相談ください。
