
プレ男「おいてけ堀」って、変わった名前だね。お化けの話なの?

メル美そう。江戸の本所にあったという池の怪談なの。田中貢太郎の短い話で読んでみよう。
今回は、田中貢太郎の怪談「おいてけ堀」(おいてけぼり)です。青空文庫の本文(底本:春陽文庫『怪奇・伝奇時代小説選集3 新怪談集』、底本の親本:改造社『新怪談集 物語篇』1938年)で読みました。本文中の「」の言葉は、青空文庫の本文からの引用です。池のある場所や言い伝えは、作中の話として紹介します。
本所の七不思議
- 作中によれば、本所の「お竹蔵」から東、四つ目通のあたりに大きな池があって、それが「本所の七不思議」のひとつ、「おいてけ堀」でした
- 池には鮒や鯰がたくさんいて、釣りに行く人がいます。ところが、一日釣って帰ろうとすると、どこからか「おいてけ、おいてけ」と声がする
- 気の弱い人は、魚を魚籃から出して逃げてくる。気の強い人が、風のぐあいだろうと平気で帰ろうとすると、三つ目小僧、一つ目小僧、ときにはろくろ首や一本足の唐傘のお化けが出て、道をふさぐ——と言われていました
「ついでに、それも釣ってくるさ」
- 釣り好きの若者・金太は、おいてけ堀に鮒が多いと聞いて出かけます。両国橋をわたったところで、知りあいの老人に会いました
- 「彼処には、怪物がいるぜ」と止める老人に、金太は笑って言います。「いたら、ついでに、それも釣ってくるさ。今時、唐傘のお化でも釣りゃ、良い金になるぜ」
- 「おいらにゃ、神田明神がついてるのだ」。老人は言いました。「其のかわり、暗くなるまでいちゃいけねえぜ」

プレ男お化けを釣ってお金にする!金太、強気すぎる…。
「おい、てけ、おい、てけ」
- 池では、鮒があとからあとから釣れて、金太はお化けのことなどすっかり忘れて夢中になります。気がつくと、近くの寺の鐘。十日ごろの月が、池の西の蘆の上に出ていました
- 一貫匁あまりの魚の入った魚籃を持って帰ろうとすると、どこからか人の声のようなものが聞こえます。「おい、てけ、おい、てけ」
- 金太はあざ笑います。「こんな旨い鮒をおいてってたまるものけい、ふざけやがるな。狸か、狐か、口惜けりゃ、一本足の唐傘にでもなって出て来やがれ」
のっぺらぼう
- すると、目の前にひょいと人があらわれました。にぶい月の光に見えたのは、「眼も鼻もないのっぺらの蒼白い顔」。「わたしだよ、金太さん」
- 金太は、魚籃と釣竿を落とさないようにしっかりにぎって走ります。後ろから、また「おいてけ」の声
茶店の老人
- 池の縁をはなれると、来るときには気づかなかった一軒の茶店がありました。金太はほっとして入り、茶をたのみます
- 「其所の池へ釣に往ったが、爺さん、へんな物を見たぜ」「お妖怪だよ、眼も鼻もない、のっぺらぼうだよ」
- 老人は言いました。「へえェ、眼も鼻もないのっぺらぼう。それじゃ、こんなので」——片手でつるりと顔をなでると、その顔は、目も鼻もないのっぺらぼうになっていました
- 金太は悲鳴をあげて逃げました。魚籃も、釣竿も、そのままにして

メル美結局、ぜんぶ「おいてけ」になっちゃった!

田中貢太郎の「おいてけ堀」で、金太はのっぺらぼうから魚籃と釣竿をにぎりしめて逃げますが、逃げこんだ茶店の老人も顔をつるりとなでてのっぺらぼうになり、金太は魚籃も釣竿も置いて逃げだします。
まとめ
- 「おいてけ堀」は田中貢太郎の短い怪談。題材は「本所の七不思議」のひとつ
- 鮒や鯰がよく釣れる池で、帰ろうとすると「おいてけ、おいてけ」の声
- 年寄りの忠告を笑った釣り好きの金太の前に、のっぺらぼう
- 逃げこんだ茶店の老人も「それじゃ、こんなので」——金太は魚籃も釣竿も置いて逃げる
- 顔のない妖怪はのっぺらぼう、ろくろ首、小泉八雲の耳無芳一の話もどうぞ
参考文献
- 田中貢太郎. おいてけ堀(底本:『怪奇・伝奇時代小説選集3 新怪談集』春陽文庫、春陽堂書店). 青空文庫. https://www.aozora.gr.jp/cards/000154/card4949.html (閲覧日:2026年10月12日)
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