
プレ男狐と狸が、物知りの学者に議論で勝負をいどむ話なんだって。おもしろそう!

メル美中国の怪談をもとにしたお話だよ。止めてくれた神さまの言うことを聞いていればよかったのに…。
今回は、田中貢太郎の怪談「狐と狸」(きつねとたぬき)です。青空文庫の本文(底本:河出文庫『中国の怪談(一)』、底本の親本:桃源社『支那怪談全集』)で読みました。本文中の「」の言葉は、青空文庫の本文からの引用です。
千年の狐と狸
- 燕の恵王の墓の上に、一匹の狐と一匹の狸が棲んでいました。二匹とも、千年あまりを経た妖獣でした
- 二匹は、晋の司空・張華が博学多才であると知って、へこませてやろうと、少年の書生に化け、馬に乗って出かけようとします
止めた鳥居の神
- すると、墓の前にある鳥居の神——華表神——が呼びとめました。「君達はどこへ往くのか」
- 狸は答えます。「司空の張華と、議論しに往くところだ」
- 華表の木の精は言いました。「張司空は才人であるから、二人が命を失うばかしでなく、その禍が俺たちにもかかってくる、どうかやめてくれ」
- けれど、狐と狸は聞かずに出かけていきました

プレ男「俺たちにも禍がかかる」って…。神さまのほうが、先が見えてたんだ。
議論と猟犬
- 二人の書生は、張華と議論をはじめます。その議論には、さすがの張華も弱らされました
- この少年たちは人間ではない、と考えた張華に、知り合いの雷孔章は言います。自分より議論がえらいからといって妖怪あつかいするのはけしからん。けれど本当にあやしいなら、猟犬をけしかけたらいい
- 張華が猟犬をつれて部屋に入っても、少年たちは平気でした。「僕達の才智は、天から与えられたものだ」
千年の神木の火
- 張華は言いました。「百年の精なれば、猟犬を見れば形を現わすが、千年の妖なら、千年の神木の火で見ればきっと形を現わす」
- その神木はどこに、と問われ、張華は答えます。「燕の恵王の塚の前の華表木が千年を経ているということだ」
- 使いの者が木を取りにいくと、空に青い着物を着た子どもがあらわれました。「あの古狸が馬鹿で、わしの詞を聞かなかったから、わしにも禍が及んできた」と言って泣きだし、すぐに見えなくなりました
- 華表木を伐ると、木のなかから血が流れました
- その木を持ちかえって火をつけると、狸と狐の姿があらわれ、張華は二匹をつかまえた、と物語は結ばれます

メル美止めてくれた神木まで、伐られてしまった…。いちばんかわいそうなのは、鳥居の神さまかもしれないね。

田中貢太郎の「狐と狸」で、千年の狐と狸の正体をあらわしたのは、二匹を止めた鳥居の神が宿る、千年の華表木の火でした。神は「わしの詞を聞かなかったから、わしにも禍が及んできた」と泣いて消えます。
まとめ
- 「狐と狸」は田中貢太郎の怪談。中国の怪談をもとにした話
- 千年を経た狐と狸が、少年の書生に化けて、博学の張華に議論をいどむ
- 墓の前の鳥居の神(華表神)は「禍が俺たちにもかかってくる」と止めた
- 猟犬にも平気な二人。「千年の妖なら、千年の神木の火で」
- 伐られた華表木からは血が流れ、その火で狐と狸は正体をあらわした
- 田中貢太郎の狼の怪、義猫の塚、『遠野物語』の狐もどうぞ
参考文献
- 田中貢太郎. 狐と狸(底本:『中国の怪談(一)』河出文庫). 青空文庫. https://www.aozora.gr.jp/cards/000154/card1620.html (閲覧日:2026年10月12日)
この記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の診断・治療に代わるものではありません。 気になる症状や不安がある場合は、医療機関にご相談ください。