
プレ男こっくりさんって、本当に勝手に動くんでしょ?狐の霊が来てるって聞いたことある…。

メル美明治時代にも大流行して、ちゃんと調べた学者さんがいたんだって。
今回の都市伝説は、「こっくりさんは狐や狸の霊が動かしている」説です。明治20年(1887年)5月に井上円了が書いた『妖怪玄談』(青空文庫)と、イギリスの科学者マイケル・ファラデーが1853年に書いた「テーブル・ターニング」の実験報告を、原文で読みます。
結論から
- 円了の答え:こっくりさんが動き、問いに答えるのは、予期意向(こうなるだろうと思う心)と、不覚筋動(自分では気づかない筋肉の動き)による。「疑いをいれず」
- ファラデーの答え:テーブルを動かしているのは、参加者自身の、ほとんど無意識の筋肉の動き。電気や磁気のあとは、少しも見つからなかった
明治の「狐狗狸」大流行
- 円了は、各地の人から寄せられた手紙を数百通も集めていました。そのなかで、明治20年ごろ、都会でも田舎でも、身分の上下なく話題になっていたのが「狐狗狸(こっくり)」だった、と書いています
- 円了によると、流行が始まったのは2、3年前。いたるところで試され、吉凶から細かいことまで何でもこれで占えると信じられて、弊害も出ていました。大阪では一時大流行したため、警察が禁じたと聞いた、とも書いています
- 東京では、書生たちが休日の夜に下宿に集まって遊び、町では歌や三味線にあわせて、こっくりさんと一緒に踊る人もいたそうです
明治のこっくりさんのやり方
- 美濃(いまの岐阜県)から寄せられた報告では、長さ1尺4寸5分(約44cm)の生竹を3本、まん中でひもで結んで三つ叉にし、その上に飯櫃(おひつ)の蓋をのせます
- 3人が三方から向かいあって座り、片手か両手で蓋を軽くおさえ、1人が「狐狗狸様、狐狗狸様、御移り下され」とくり返し唱える。すると蓋が傾いたり回ったりして、問いに答えるというものでした
- 竹の長さや結び方、蓋の裏に「狐狗狸」の3字を書く、上に風呂敷をかける——など、やり方は土地ごとに少しずつちがっていました
- 名前の由来について、円了は、竹の上の蓋が「コックリと傾く」ことから「コックリ」と呼ばれ、それに狐・狗・狸の字をあてるようになった、と説明しています

メル美竹3本とおひつの蓋!いまのイメージとはだいぶちがうね。「狐狗狸」の字はあとからあてた当て字なんだ。
もとは西洋の「テーブル・ターニング」
- 円了が流行の広がり方を調べると、明治18年(1885年)の秋から翌年の春にかけて、相模・伊豆・駿河・遠江・尾張・美濃で流行し、その後、京阪、山陽、九州、関東、信州へ、明治20年には奥州にも入っていました。始まりは伊豆だった、と円了は見ています
- 円了が聞いたところでは、数年前、アメリカの帆船が伊豆の下田の近くで破損し、長く滞在したアメリカ人が、この遊びを土地の人に伝えたといいます
- 西洋には、テーブルのまわりに数人が座って手を軽くのせると、テーブルが回りだし、問いに答える「テーブル・ターニング(テーブル・トーキング)」という遊びがありました。円了は、下田のアメリカ人は手もとにテーブルがないので、竹と蓋で代用したのだろうと推測し、「コックリはすなわちテーブル・ターニングと同一なりと信ず」と書いています
円了の答え:「予期意向」と「不覚筋動」
円了は、こっくりさんが動く原因を3つに分けて説明しました。
- 装置が動きやすい:細い竹3本の上に重い蓋をのせた組み立ては、もともとゆれやすく、回りやすい。少しの力で大きく動く
- 手は止まっていられない:何分も手を宙に浮かせていれば、疲れて必ずゆれる。何人もいれば全員が同時に止まっていることはできない。1人のわずかな動きが蓋に伝わり、ほかの人の力も加わって、だんだん大きくなる
- いちばん大事なのは心のはたらき:参加者はみな、動くはずだ、答えるはずだと知っている。その思い(予期意向)が、知らず知らず手の筋肉の動き(不覚筋動)になってあらわれる
- 円了があげた例はこうです。年齢を聞くと当たるのは、聞く人がもともと知っているから。はっきり知らなくても、想像や推察が手に出る。だから、過去のことはたいてい当たるが、未来のことは当たらないことが多いという報告も、理屈どおりだ
- 英語を知っている書生が英語で問えば、こっくりさんも英語で答え、ドイツ語を知っている人ならドイツ語で答える。これも、答えが自分の側から出ている証拠だ、と円了は書いています
- そして、「狐狗狸」という字、儀式、「狐狸が憑く」という世間のうわさそのものが、予期意向をうながしている、とも指摘しました

プレ男英語で聞いたら英語で答える狐…。たしかに、答えてるのは自分たちのほうだね。
1853年、ファラデーの実験
- 1853年、イギリスの科学者マイケル・ファラデーは、新聞『タイムズ』への手紙(6月30日掲載)と、雑誌『アシニーアム』への報告(7月2日)で、テーブル・ターニングの実験の結果を発表しました
- ファラデーは、テーブルが動く原因として、電気、磁気、引力、未知の力、地球の自転、悪魔や超自然の力までがあげられていると書いています。ファラデーは、以前からあげられていた原因のうち「ほとんど無意識の筋肉の動き」が本当の原因だと考え、それを実験で確かめることにしました
- まず、紙やすり・ガラス・粘土・すず箔・ゴム・木など、電気的な性質のまったくちがう板を束ねて手の下に置きました。それでもテーブルは動きました。そして、電気や磁気の効果は、少しのあとも見つかりませんでした
- 次に、テーブルが先に動くのか、手が先に動くのかを見分ける、てこのしかけの「指示針」を作りました。すると、参加者に針が見えているあいだは、針はほとんど動かない。針をかくしたり、目をそらしたりすると、本人はまっすぐ下に押しているつもりなのに、針はゆれ動き、テーブルを動かしたいと思う方向への力が、本人の気づかないうちにかかっていました
- ファラデーは、参加者たちが動かすつもりも、ふつうの力で動かしているとも思っていないのに、テーブルは動く——そのことは自分にもはっきりしている、と書いています。みな「テーブルが手を引っぱる」と言うけれど、実際には手がテーブルを動かしていたのです

ファラデーの実験では、手の動きが見える指示針を置くと、テーブルは動きませんでした。針が見えないときには、本人が気づかないうちに、動いてほしい方向へ手の力がかかっていました。
まとめ
- 「こっくりさん(狐狗狸)」は、明治18年ごろから全国で大流行。竹3本と飯櫃の蓋を使った
- 名前は、蓋が「コックリと傾く」から。「狐狗狸」は当て字(井上円了)
- 始まりは伊豆の下田、もとは西洋の「テーブル・ターニング」と円了は考えた
- 動く原因は、予期意向(そうなると思う心)と不覚筋動(気づかない筋肉の動き)。英語で聞けば英語で答える
- 1853年、ファラデーも指示針の実験で、テーブルを動かしているのは参加者の無意識の手の力だと示した
- 「狐が憑く」と言われた別の明治の怪事件は口笛の怪声、体のしくみで説明できる「ふしぎ」は金縛りもどうぞ
参考文献
- 井上円了. 妖怪玄談(明治20年5月上旬著者誌). 青空文庫. https://www.aozora.gr.jp/cards/001021/card49375.html (閲覧日:2026年10月22日)
- Michael Faraday. Table-turning(The Times への手紙、1853年6月28日付、6月30日掲載/The Athenæum、1853年7月2日). In: Experimental Researches in Chemistry and Physics, 1859. Wikisource. https://en.wikisource.org/wiki/Experimental_Researches_in_Chemistry_and_Physics/Table-turning (閲覧日:2026年10月22日)
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